日本のオペラ上演は、基本的に、採算も再演も考えていないというところが決定的な問題点ですね。
ロングランを目指すのが本来なのでしょうが、
新国立劇場が年間50回の一定水準の公演をするようになっても、未だに、(例が悪いのですが、化粧品やペットボトルの飲料のように)目先を変えての一回限りの公演が多く、今回の様な意欲的な公演は、いくつかの中小の団体と、若手~中堅の歌手の自主公演に限られます。そろそろ、ロングランとはいかなくとも、中程以下の会場で上演回数を増やすとか、毎年上演する事を前提にした公演をする時期だと思います。(兵庫の佐渡さんのところが台風の目ですね)装置等は、歌舞伎や文楽は書割りですし、コンサート形式で+αーからで良いと思います。中小の劇場でのオペラ公演が少な過ぎますね。

今回の「ル グラン マカーブル」は、ぴかままさんあっての企画だと思ってましたが、やはりゲポポは、これで終わり?と思わせては、また登場しその度に過激さを増して最後は圧倒的でした。勿論「不安」の発作が「行為」の最終局面になるのも良く分かりました。心中が象徴する様に、再生産の行為が何故か死の臭いがするし、死の臭いが再生産を促すのもやはり生命の宿命でしょうね。その意味で、やはりおっしゃる通り、レスビアンカップルでは、一本の線が通らず、観ていて歯痒いというか、単なる頽廃の極致にしか見えませんでした。(続く)
(2009年02月18日 07時53分33秒)

2009年02月17日
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もう十日も経ってしまいました。
まだ完全には現場モードからセンセーモードに戻れてません。
職場が春休みに入ってしまったことも大きいです。
もっとも、我々は休んでいるわけではなくていろいろとやることはあるわけですが。

今回の「ル・グラン・マカーブル」にまつわることを幾つか、思いつくままに書いてみたいと思います。

今回の企画、最初に打診をいただいた時には私はまだベルリンにおり、公演の時点で日本に完全帰国しているかどうかは全く決まっておりませんでした。というより、帰国に向けての具体的な行動を起こすよりも前のことだったのです。「ぴかままさんが出演可能ならば企画を本格的に進めます」とまでおっしゃって下さって、これは何を差しおいてでもお引き受けせねば、という使命感に駆られましたよ。もちろん、この作品を日本で上演しよう!ということは十年来各方面に向けて口に出してきましたから、これの日本初演に出られるというのは私にとって大きな喜びでした。

打診をいただいて、「英語ですか?ドイツ語ですか?それとも日本語訳を作って上演するのでしょうか?」と尋ねたのは、この作品の履歴を知っている私にとっては当然の質問。作曲したリゲティ自身は、上演国の言葉での上演を強く望んでそれを実現するために、自分自身が監修して各国語版の歌詞を作ってきたくらいですから、もしリゲティが生きていたならば当然日本語でやってくれと言うに違いなかったのです。せっかく生前に直接の交流があったのに、日本語訳詞制作について承諾を得るなどの行動に移せなかったことが残念でなりません。

でも、今回の公演はドイツ語で行うということでした。稽古開始までの時間を考えると、他のヨーロッパ系の言語とは全く体系の違う日本語での、耳で聞いてわかる歌詞を作るのはやはり難しい。なぜならば、公演をご覧になった方はおわかりかと思いますが、とにかく歌詞が駄洒落や語呂合わせ、掛詞や造語に満ちていて、箇所によっては言葉の意味を訳しても正直なところ意味がない、という場合も多いからなのです。例えば3場の白黒両大臣の掛け合いなんか、ABC順の頭文字を持つ出来るだけお下劣な罵詈雑言を競っているわけですから、日本語でやるならばアイウエオ順で、意味は全く違ってもいいから同様のコンセプトの言葉にしなければ・・・でもアルファベットとアイウエオでは総数が大きく違いますから最後まではいけないのです。ゲポポの歌詞なんかもMacabreという単語のアナグラムが基本で出来てますのでこれは訳そうにも訳せませんしね。
(ちなみに、公演の翌週Teru氏出演の椿姫を「け」と並んで観た際、休憩時間中に「け」が上記両大臣とほぼ同じ言葉遊びをしようと提案してきて驚きました。「け」はもちろんマカーブルは見ていないのですけれど・・・)


もちろん、英語上演という選択肢もあったと思います。私としてはこの機会に英語歌詞でもやっておきたいという気持ちもありました。日本の聴衆ならばドイツ語よりも英語のほうが聞いてわかる人も少しは多いかも、とも思いましたが、我々歌手の側がはたして、聴衆が聞いてわかる英語で歌えるのか、という問題もあり・・・日本の声楽家育成の過程においては、英語はほとんど重要視されていないのです・・・。
結果的には、私にとっては「覚え直さなくていい」という点で楽ではありました。

もっとも、日本人一般が耳で聞いて誰でも分かる単語の部分を英語版に差し替える、という方法は幾つか採用しました。このうちゲポポの「password」という単語については、コンサートバージョンでもこれまでずっとドイツ語の「Tarnwort」ではなくこちらでやってきましたし、そもそも「Tarnwort」なんていう言葉、ドイツ人は通常使いません。メスカリーナも「Fernrohr」は「telescope」に、「oben ohne」は「topless」に言い換えてましたね。
B組では「1,2,3,5!」とか「コケコッコー!」とかの日本語も交えてました。

そう、今回、A組とB組では、全体のコンセプトは同じでありながらも、細かいところはそれぞれかなり違う演技をしていたんですよ。これは演出家が我々歌い手にかなり自由に動かせてくれたということが大きいです。特にゲポポについては、私とはるちゃんとで動線すら違ったので、「家来」役として一緒に動くダンサーのみなさんはそれぞれ違う動きを作って覚えなくちゃならなくて大変だったと思います。ご迷惑をお掛けしました。
このゲポポの部分は、私は演出家から基本コンセプトのキーワードを幾つかいただいただけで、ほぼフリーハンドでやらせていただけました。この部分の初回の立ち稽古のときに、私が即興で走り回ってその段階でのOKを頂いちゃったので、横で見ていたはるちゃんは焦ったかも知れません。私も「ちょっとやり過ぎたかな」と思って、はるちゃんには「あなたはあなたのゲポポを作れば良いんだから私のにはとらわれないで!」と弁解。もちろん、これをベースにその後他役との絡み、装置との関係などの調整が加わって公演時の動きが出来上がったわけですが。
コーミッシェオーパーでやったときはそれほど激しい動きは無かったものの、チビの私には寸法が難しい動きも結構あったし、衣裳の面でも動きに制約が多かったので微妙に不完全燃焼が残ってまして・・・。
結果的に、基本線は同じながらもそれぞれかなり違う動きになったわけです。あたかも、演じている鳥の種類が違う感じ。私はカラス、はるちゃんは黒色烏骨鶏って感じかしらね。

ついでに言うと、ゲポポの初期段階でバタッと大の字に倒れてしまう動作、あれは2場のアストラダモルスの「死んだふり」のリフレインとしてやってみました。はるちゃんのほうはここは倒れたあと丸太の如くゴロゴロ転がされたりしてましたからリフレインとしてのコンセプトは噛ませていない、ということになりますかね。


ひとつ、今回の演出コンセプトのなかで、私にはどうしても納得のいかない点が残りました。
アマンダとアマンドのカップルについてのとらえ方、なんです。
演出家は今回、「性に没頭する非生産的なカップル」の象徴という意味合いで同性愛のカップルとして表現したわけですが・・・この役の、初演バージョンにおける役名(結構露骨なんでここには書きませんが、♂生殖細胞と♀局部の名称をもじったものです)からもわかるように、もともと男女のカップルとして描かれたものなんです。この作品全体におけるリゲティのメッセージを、私は以下のようにとらえています・・・「世の中がどう変わろうとも、人間(人類)は世代を繋いで生きていく。どんなお題目や政治信条よりも、人類の"生き物"としての生命力のほうが強いのだ。だからこそ"今"を精一杯楽しんで生き、未来へと繋げていこうじゃないか」・・・これを前提におくと、生産しない同性愛カップルではなくやはり生産するカップル、つまり男女のカップルじゃないと理屈が通らないわけです。
もちろん、これまでにもいろんなとらえ方に基づいた演出が存在してきたわけで、生前のリゲティが、政治的メッセージ性を前面に出した演出に対し怒り狂った、などというエピソードが伝わっていますが、一旦作家の手を離れた作品がどう解釈されどう演出されるかはすでに表現する側の自由だ、とも思います。だから私も今回のこの点についての解釈を否定するというわけではなくて、でも私個人はそういう風にはとらえていないんだよなぁ・・・ということで。

最後に、いろいろな我が儘を文句も言わずに聞いてくださった裏方さんたちに、心から感謝を捧げたいと思います。小屋入りしてから公演までの時間が非常に短かったのにもかかわらず、ここをああしてくれこうしてくれという様々な注文を、信じられないほどの手際の良さとスピードと確実さで実現してくれた魔術師たち。裏方さんたちにこれだけ全幅の信頼をおいて舞台にのれる環境というのは、世界中どこを探しても日本以外には無い、と言っていいんじゃないかしら。



・・・再演、出来ると良いなぁ。





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最終更新日  2009年02月18日 01時59分15秒
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勿論、再演を希望します!!!  
金柑 さん

勿論、再演を希望します!!!(2)  
金柑 さん
すみません。
ぴかままさんの迫力に巻き込まれて長くなりました。

遺伝子でさえも完全な複製は作れず、「読み間違(misread)」がありますし、それが突然変を産み進化の基になっています。しかしそれは、意図的な「読み替え」では有りませんしあくまで生命を再生産するという前提があります。オペラであれなんであれ、演奏するには解釈をせざるを得ない訳ですし、総譜も乱暴にいえばスケッチに過ぎません。もともとの五線譜には小節線は無かった筈ですし、多くの民族音楽も五線譜に載せると途端に色褪せます。(例えば、日本の民謡。木曽節など)そういう意味では、演奏や演出は自由な部分が大きい訳ですしそうでなければ、今は、電子楽器で総譜を再現出来ます。しかし、作品の通奏低音のような部分を変えてもらっては初めて見る方は戸惑います。オペラ上演が日常である国と非日常である日本とでは全く事情が異なると思います。

リゲティと交流があったのならば、是非覚えている限りのリゲティとの会話や行動の記録を残して下さい。どんな細かい事でも細大漏らさず。(出来たら知り合いの演奏家や舞台関係者からも採集して欲しい.出来るかぎり、年月日や」場所などのデータ付きで)特に直接オペラと関係がないと思われることが重要です。
それと、カップルのスXXXXとクXXXXの名前はどのように
変遷したのでしょうか?ご存知でしたら教えて下さい。
その他何でも今のうちに書いておいて頂きたいと思います。30年もたったら今当たり前の事が解らなくなります。

今後ぴかままさんの大活躍に期待しております。

(2009年02月18日 07時57分39秒)

金柑さん♪  
ぴかまま@ケータイ さん
熱烈なコメントありがとうございます。
今はケータイからであまりじっくりレスを書けないので、帰宅後にまた改めて。
(2009年02月18日 12時23分41秒)

嗚呼見たいっ!  
シイラ♪  さん
興味深すぎて寝れないわあたしっ!!!
(2009年02月18日 13時18分56秒)

むっちゃ出遅れた!\(◎o◎)/  
☆KlK☆  さん
しかも公演終わって10日後ってスレに書き込むのもどうかと思ったんだけど、とにかくお疲れーっ!

事前にピカちゃんがストーリー説明しといてくれたから、あたしはすんっごくわかりやすかったよ!しかも酒飲みの登場からスタートなんてアタシにはたまんなかったし!
(*^o^)v

おはっちも食いついてる事だし、再演あるといいねぇ~!
(^□^)ノ"♪
(2009年02月18日 16時20分14秒)

祈 再演!!!  
えーちゃん さん
金柑さん、、、、の熱烈書込に圧倒されてしまった・・・(笑)
そうなんですよねぇ~現代音楽好きには絶対見逃しちゃいけない舞台だったのに・・・(T_T)

ぴかままさんが生前のリゲティとも親交があったとは・・・。
音楽面では作曲者の意図を的確に表現する必要はあるけれど、演出プランは作曲者の手から楽譜が離れた時点でどう解釈されようが仕方ない部分がありますもんね・・・。
でもリゲティ本人を直接知っているぴかままさんには彼のプランも汲み取ったものにして欲しかったわけですね?

私としても新しい作品を観る時はCD買って音楽を自分の体に流して(「ルプパ」の時は音源が手に入らず本番もの凄い集中力で聴いていた)舞台を観るんですが、今回のグラマカもCDを徹底的に聴いていたのにぃ~(>_<)
コーミッシェオーパーでもヴィーナス、ゲポポを歌われているぴかままさんの歌声聴きたかったぁ~!!!
再演の時こそ絶対に行きますっ=3(鼻息) (2009年02月18日 18時37分05秒)

改めて金柑さん♪  
pikachumama  さん
実際、日本でオペラを上演する際にロングランを妨げているもののひとつが、ホールの借り賃の高さなんですよ。おっしゃるようにシングルキャストで2日おきとかで公演を打とうと思うと、公演のない日、たとえそれがどんなに簡素なものであったとしてもセットをそこにおいておくためだけにホールの借り賃を払うことになってしまうか、もしくは毎回搬出してどこか倉庫を借りて入れておかなければならないということになります。赤字必至でやっている民間団体にとってこれは死活問題なんです。それで、複数公演を行う場合はどうしても連日ということになり、連日にするためにとチケット販売のために、小さな役までもダブルキャストを組むという流れが生じます。欧米のオペラハウスや新国などのように自前の箱での公演ならば、こういう問題は少ないのですが・・・。

ダブルキャストは他にも、特にこういう作品の場合など、万が一だれかがインフルエンザだの事故だので出演不可能になった場合のための保険という意味合いもあります。アンダースタディを使うという方式もありますけれどね。

>リゲティとの会話や行動の記録
日本にはリゲティに直接薫陶を受けた作曲家もけっこういるんですよ。私は直接お会いしたことこそあれ長らく親しくして頂いていたワケではありませんから、きっとお弟子さんがそういうことはやってくれるものと期待しています(^_^;)。

(次に続きます)
(2009年02月18日 21時57分03秒)

金柑さん♪(続き)  
pikachumama  さん
私は1997年以来"Mysteries of the Macabre"(ゲポポのパートをコンサートピースとしてまとめたもの)をレパートリーとして演奏しているのですが、最初のコンサートのプログラムには「ドイツ初演」と書かれています。これはあとになってから「ソプラノとピアノというバージョンの世界初演でもあった」と聞いたのですが出版社に確認したわけではないので確証はありません。たいていはソプラノと室内オーケストラというバージョンで演奏されることが多く、YouTubeなどに出回っている映像もそちらですね。
以来あちこちで演奏してきましたが、リゲティが京都賞を受賞した際に本人臨席のもとで演奏し、大変喜んでくださったのが良い思い出になっています。コーミッシェオーパーの時は既に病重く、お知らせはしたものの観て頂くことは出来ませんでした・・・。

そうそう、それよりも前、96年には東京で「アヴァンチュール」と「新アヴァンチュール」をやっているのですが、その録音を送られて聞いたリゲティ氏、「これまでに聞いた中で最も完璧に近い演奏」とおっしゃってくださったそうですよ(^o^)v。
(2009年02月18日 21時57分26秒)

シイラ♪ちゃん  
pikachumama  さん
ね?!あーた好みの作品でしょ?!ウヒヒ
(2009年02月18日 22時15分33秒)

KIKちゃん♪  
pikachumama  さん
体調不良を押して見に来てくれてありがと~~~~!
酒が世界の破滅を食い止めただなんて、KIKちゃんに大義名分を進呈するようなオペラでしょ~(爆)?!
(2009年02月18日 22時17分28秒)

えーちゃんさん♪  
pikachumama  さん
せっかくチケット買ってくださったのにお仕事の都合で残念でしたね。今回は完売という状態でしたから連絡さえ事前にいただければチケットも代金も無駄にせずに済んだのですが・・・。
終了と同時に再演を望む声が内部からも挙がっていましたので、意外と早い時期に実現するかも知れませんよ。
その節はぜひ♪

(2009年02月18日 23時03分51秒)

是非是非  
akko さん
かなり前もって日程が決まっていれば、再演にあわせて、里帰りの予定を組んでしまいますよ。

(2009年02月20日 05時25分51秒)

akkoさん♪  
pikachumama  さん
うれしいお言葉♪
もし再演が実現するようならここで即お知らせします~♪
(2009年02月21日 01時09分32秒)

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