SUERTE

飛べない鳥の祈り

２月下旬の天津では珍しいことだったらしい

直後に老師から電話が入った

日本から国際電話が来てた、誰か亡くなったらしいとのこと

誰かを確かめるために電話を掛ける

彼氏の実家に電話をする

彼の父親が答える

”彼は・・・・彼は・・・亡くなってしまったんです・・”

予想もできなかった事を聞き、涙が溢れ出す

気持ちの整理ができるまで

雪の積もった街中で一人座り込む

コノママシンデシマオウカ・・・

少し落ち着いて悩んだ結果

葬式に出るために帰国を決意する

一人で北京の空港を走る

飛行機の中で一人窓の外を眺め

ぼーっとしていた

成田から川崎に向かう途中

電車の中で泣いていた

老婦人が優しそうな目で

見つめていた

彼の名前が大きく書かれた

白い板を見上げていた

部活の仲間に、しっかりしろ、と言われた

焼香の時に彼の顔を見れた

後で時間をもらい、手紙をケースに入れて

こっそりキスをした

彼の口元が、”あっ”というように少し動いた気がした

火葬場で彼が出てくるのを待っていた

彼の写真がおいてある

扉の前で彼を待っていた

初めて会ったのは１９９４年の春だった。

恋してしまったのは夏に入る少し前

よく電話してくれる彼とのおしゃべりがすきだったのだろうか

付き合って、といわれたのはその年の私の誕生日の翌日

一週間あとのクリスマスにはじめてのキスをした

お正月は別々だったけど

とても幸せな冬だった

最終電車まで一緒にいて、

凍えて帰るときは寒かったけど

明日又彼に会えると思うと嬉しかった

２００５年２月、中国に短期留学をする

その一週間後、彼の訃報を知った

それから彼を超える恋をしたことがないけれど

今のパパは似てなくも無いかもしれない

わたさん、今でも忘れられないけど

私は結婚して子供ができました

わたさんより　９日早く産まれた　男の子です

あなたは今、どうしてますか

いつか又会うことはできますか

もう少し落ち着いたら

ひよこをつれてお墓参りにいきます。

どうかいつものように

やさしい時間をください

すべて忘れてしまえるように

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