筆者は最近『Wall Street Journal』紙に、ノーベル経済学賞を受賞したプリンストン大学のダニエル・カーネマン教授が一般向けに書いた新著『Thinking, Fast and Slow』を紹介するコラムを書いた。プロスペクト理論[人間の心理的傾向を考慮した意志決定論]で有名な同教授による、素晴らしい本だ。
カーネマン教授は、上記のような問題を50年間にわたって人々に出してきた。同教授のシンプルな諸実験は、われわれの思考についての考え方に深い影響を与えてきた。哲学者や経済学者、社会学者たちはこれまで、人類を合理的な存在と考えてきたが、同教授とその同僚は、われわれは自分で信じたいほど合理的な存在ではないということを明らかにしてきたのだ。不確かな状況に直面したとき、人間は情報を丹念に評価したり、関連のある統計データを調べたりしない。代わりに、「知的ショートカット」(mental short cuts)に判断をゆだねるのだが、そのせいで、しばしば馬鹿げた判断を下すことになる。このショートカットは、検討を速く行うというわけではなく、検討をまったくやめてしまうというものだ。