人生朝露

人生朝露

大鵬と荘子。

荘子です。
荘子です。

大鵬幸喜(1940~2013)
第四十八代横綱大鵬こと納谷幸喜さんが亡くなったそうです。
現役時代の大鵬関の取組を拝見したことは、もちろんありませんが、柏戸と大鵬は、伝説の域ですね。

参照:昭和の大相撲 柏戸 vs 大鵬
https://www.youtube.com/watch?v=0IS-PfGyUo0

---(以下引用)------------------------------
余録:はるか北方の暗い海に鯤という巨魚がいる…

毎日新聞 2013年01月21日 00時06分

 はるか北方の暗い海に鯤(こん)という巨魚がいる。それがいったん変身すれば、翼長何千里とも知れぬ鵬(ほう)という鳥となる。海の荒れる季節、鵬は風に乗って南の海に向かって飛び立つ。9万里の高さに上り、6カ月の間休むことなく飛び続ける▲「荘子(そうし)」が記す巨鳥にちなむ「大鵬」は、漢籍好きの先々代二所ノ関親方秘蔵の四股名であった。先に使われるのではと気が気でなかったが、期待の愛弟子が十両に昇進して、満を持して言い渡す。だが当の納谷幸喜さんは戸惑った。「ズドーンというあれですか?」▲その3年前、北海道の営林署の力仕事をしていた納谷少年がある日、上司に「きょうはいい」と言われた。するとおじに相撲の巡業を見に行こうと連れて行かれ、あげくに「ここに残れ」と言われて着のみ着のまま巡業の一行に加わった。始まりはそんな時代だった▲その名の通り大鵬はたちまち昇進をとげ、第48代横綱の天空に達する。柏戸という好敵手を得て飛び続けた12年間はほかでもない日本が高度成長の坂道をかけのぼり、目もくらむような社会の変貌(へんぼう)を経験した時代である。その坂道で人々が仰ぐ空に大鵬は舞い続けた▲「巨人・大鵬・卵焼き」は当時の熱気を後世に伝える“不滅の流行語”だろう。ただし当人は天性を評価されるのを嫌った。「僕は天才ではなく、苦労してはい上がる努力型です」。優勝賜杯を受ける時いつも考えていたのは「これで来場所はまた大変だな」だった▲鵬は南方の天の池を目指すという。貧苦や傷病の重力に抗して飛び続け、人々と時代の元気を分かち合った翼は今、池のほとりで静かにはばたきを終えた。
------------------------------(引用終わり)----

参照:余録:はるか北方の暗い海に鯤という巨魚がいる…
http://mainichi.jp/opinion/news/20130121k0000m070081000c.html

双葉山定次(1912~1968)。
双葉山は、荘子の「木鶏」の故事を身近にした方ですが、大鵬は、荘子の鵬を世に広めた方のですね。当時の親方が付けられたようです。今では鵬の字を使う関取は白鵬を筆頭にいますが、大鵬が最初のようです。

参照:双葉山と木鶏。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5136/

先週は我が郷土の鵬翔高校が高校サッカーで全国制覇いたしましたし、奇しくも先週からアクションで王欣太が荘子の孫を描いた連載を始めまして、これまた「鵬」です。

『達人伝~9万里を風に乗り~』 鵬。
タイトルは『達人伝~9万里を風に乗り~』です。『蒼天航路』の主人公・曹操は、荘子と同郷ですし、曹一族の詩を読むと分かりますが、彼らは『荘子』の影響が強いんで、描くとしたらゴンタさんしかいないかも知れません。『蒼天航路』の亀の元ネタも荘子だし、もともとあの人が荘子を好きなんじゃないかと思います。

『達人伝~9万里を風に乗り~』 冒頭。
『北冥有魚、其名為鯤。鯤之大、不知其幾千里也。化而為鳥、其名為鵬。鵬之背、不知其幾千里也。怒而飛、其翼若垂天之雲。是鳥也、海運則將徙於南冥。南冥者、天池也。齊諧者、志怪者也。諧之言曰「鵬之徙於南冥也、水?三千里、摶扶搖而上者九萬里、去以六月息者也。」野馬也、塵埃也、生物之以息相吹也。天之蒼蒼、其正色邪。其遠而無所至極邪、其視下也亦若是、則已矣。且夫水之積也不厚、則其負大舟也無力。覆杯水於?堂之上、則芥為之舟、置杯焉則膠、水淺而舟大也。風之積也不厚、則其負大翼也無力。故九萬里則風斯在下矣、而後乃今培風。背負青天而莫之夭閼者、而後乃今將圖南。』(『荘子』逍遥遊 第一)
→北冥に魚がいる。その名を鯤という。鯤の巨大さたるや幾千里あるかわからないほどだ。化して鳥となり、その名を鵬という。翼を広げた鵬の巨大さたるや、これまた幾千里あるかわからないほどだ。ひとたび鵬が飛び立つとなれば、その翼は天空に雲がたれこめるのと見紛うばかり。大海に嵐が湧き起こるのを見るにおよび、巨鳥はおもむろに南冥へと飛び行く。南冥とは天の池のことだ。怪しげな事象を記述する「齊諧」によれば、『鵬が南冥へと移るとき、三千里の水面を打ち、風の助けを得て、半年もの間休むことなく、九万里の空へと上昇する。』とある。見るがいい、陽炎が立ちのぼり、塵埃が吹き流れ、生物が互いに息づいている地上の様を。空が青々としているのは、本当の「空の色」なのだろうか?限りなく遠いところにあるから青く見えるのではないだろうか?鵬の高みから見下ろせば、この大地は青一色なのだろう。水かさが減りすぎると、大きな船を支えることができないように、土間に杯の水を零しても、せいぜい埃を浮かばせるくらいのものだ。杯を乗せたところで地面に足がついてしまう。風もその厚みがなければ大鵬の翼を支えることはできない。大鵬は己を支える風を求めて、遥かなる上空に舞い上がり、しかる後に進むべき道を定める。背負うのは蒼天のみ。さえぎるものの何一つない大空で、大鵬は今まさに南を目指そうとしている。

参照:庄子 "逍遥游" (Part One)
https://www.youtube.com/watch?v=_11UO51C4V4

天地 - 07 大鵬
https://www.youtube.com/watch?v=MS2EhPJjSAA

参照:大鵬図南と"From a Distance"。
http://plaza.rakuten.co.jp/poetarin/5084/

『荘子』の時代でも、すでに鵬は「伝説の巨鳥」として描かれています。もちろん、『荘子』は千数百年にわたって日本人に親しまれていますので、鵬という鳥は決してマイナーな存在ではありません。

日本の武将の中で「鵬」を使った人というと、例えばこの人。
伊達政宗(1567~1636)。

「偶成」  伊達政宗
邪法迷邦唱不終  邦を惑わす邪法を唱える者は尽きず 
欲征蠻國未成功  蛮国を平らげようとすれど成功を見ない
圖南鵬翼何時奮  図南する鵬の翼は、いつはばたくのか
久待扶搖萬里風  万里の彼方より久しくその風を待っている

・・・ただし、あくまでもこの話は、鯤という魚が化して鵬という鳥となる部分が大切なので、イメージするならこちらの方がオススメです。ノーチラス号が空を飛び、宇宙をも目指すイメージ。

参照:ナディア 万能戦艦Nノーチラス号をエヴァQ The Anthemに置換えてみた
http://www.youtube.com/watch?v=fezXmCtoaZM

「ふしぎの海のナディア」のテーマは、荘子ともよく似ています。ま、エヴァQの「AAAヴンダー」の方がフォルムも魚と鳥の間で好ましいです。もちろん、庵野カントクが荘子を読んでいるかどうかは不明です。あくまでユングと一致する点しか知りません。(どうでもいいですが、「時速・・・なんと1万2000キロです!」というセリフは「サンダーバード」の第1話「SOS原子旅客機」のセリフのパクリです。)

ちょっと反省しています。
いずれ推敲します。

今日はこの辺で。

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