この空の下で １６
夜、彩子は、嬉しくてドレッサーの鏡のなかの自分の顔を見つめていた。
日記には、『永遠なんて信じていなかったけれど、この想いは永遠に私の胸の中に。』と、書いた。
数日後、翔から電話があった。
「来週の日曜日で、どうかな？寮のテニス仲間も一緒に。そっちも誰か誘う？」
「テニススクールのお友達を誘おうかな？」
「待ち合わせは、駅に、１時でいいかな？」
「はい。楽しみにしています。」
「楽しみにしてるよ。天気ならいいね。じゃ、また明日。おやすみ。」
「おやすみなさい。」
受話器を置いた後も、耳の中に翔の声が残っていた。
体の中に熱いものを感じる。
また、前のような日々が始まった。
一樹は、それから何も言ってこなくなったし、翔と、職場でも気楽に話ができるようになった。
『こんなに楽しい気持ちで毎日が過ごせるなんて。やっぱり好きなんだ。』
彩子は、翔の姿を見るまでもなく一瞬にして恋に落ちた。
今までの彩子では、考えられないことだった。
そして、男性をこれほど深く好きになったことがなかった。
いつか、そういう人に巡り会えるまで、脇道にそれないようにと思ってきた。
ようやくそういう人に会えた喜びで、胸がいっぱいだった。
『運命の人。』
約束の日、テニススクールの仲間の弥生を誘って、テニスコートのある最寄りの駅に、１時少し前に着いた。
翔と、寮のテニス仲間たちはもう着いて、待っていた。
すがすがしい、秋の風の中。
向かい合う素直な心
約束の日、テニススクールの仲間の弥生を誘って、テニスコートのある最寄りの駅に、約束の時間の１時少し前に着いた。
でも、翔と、寮のテニス仲間たちはもう着いて、待っていた。
「すみません。お待たせして。」
「大丈夫。こっちも今来たばかりだから。きっと同じ電車だよ。こちらは寮の先輩の林田さんと田口さんと村上さん。」
「初めまして。森川です。こちらは、スクールで一緒の松井弥生さんです。宜しくお願いします。」
翔は、彩子と弥生を相手に、ボール出しをしてくれた。
フォア、バック、フォア。
「二人ともなかなかいい玉が返ってきているよ。スクールに行っているだけあるね。」
翔の弾むような声に、彩子の心も弾んだ。
隣のコートには、同じ部署の安田さんがご主人とプレイしていた。
「こんにちは。」彩子は、挨拶をした。
「こんにちは。いい天気ね。気持ちがいいわ、今日は。」と安田さんが声を返してきた。
安田さんは、彩子よりも一つ年上で、半年ほど前に結婚したばかりだった。
優しそうな御主人。
『いいな、私もああなりたいな。休日はテニス。』
暫くして、翔は、林田や田口と試合を始めた。
彩子と弥生は、コートサイドで見ていた。
さっきまでの翔の表情とうってかわって、真剣な表情になっていた。
寮にもテニスコートがあると聞いていたので、相当練習をしているような感じだった。
「ちくしょう。」
「ラッキー。」
「オンラインだぞ。」
少し疲れてきたのか、凡ミスが出だした。
「少し休みませんか？」
翔が言った。
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