ペット喜怒哀楽

模倣犯

模倣犯(1) 模倣犯(2) 模倣犯(3) 模倣犯(4) 模倣犯(5)

書名 : 模倣犯
著者 : 宮部みゆき
出版社: 新潮文庫 一 2005.12.15二刷 584ページ \810
             二 2005.12.25二刷 413ページ \619
             三 2005.12.25二刷 476ページ \700
             四 2006.01.01初版 533ページ \780
             五 2006.01.01初版 529ページ \780
感想 : う~ん、ねたばれしそうだから、あまり内容に関しては書けない...
ともかく、面白いです。私、年末にTVで映画を先に見てしまって、だから読んでいる間中、キャストが浮かんでしまって、自分なりの人物像が作れなかったってのはつまらなかったけれど、そして、内容も結末もTVの方で知っていても、やはり、違う部分もあるし、そして、とってもページターナーでした。日本の推理小説でここまでページターナーってこの著者以外には少ない... それも、途中で犯人はばれているのに、それでも読んでしまう。

気になった表現: 
一 「犯罪者に限らず、ある種の事件を起こし易いタイプの人間をして事件の方向へ向かわしめるのは、劇場でも我執でもない。英雄願望だ。   自分は英雄だ、ほかの連中とは違う、俺は英雄なのだ、きっとそうなのだ、その俺様に向かって注意をするとは何事だ、盾つくのは生意気だ。 地べたをはいまわるくだらない人間達よ、この俺という英雄の前に跪け。それが彼等の本音なのだ。彼等ほど、「英雄:」という言葉に魅せられ易く、他人の上に君臨し人々から賞賛されたいという欲望の強い人種はいない」
三 家族の中の「不機嫌」はちょうど流感のようなもので、高い確率で素早く伝染してゆくものだ」
四 「趣味で小説やマンガを書いたり自主映画を撮ったりする人々も、よほど度をはずれた地震かでもない限り、最初からできあがった作品を広く社会に公開する勇気を持ち合わせてはいないだろう。最初は自分や仲間内だけの手の平野内側にそっとかくして、ささやかな自己満足にひたり、その自己満足をエネルギー源にして次の作品へとつなげるのだ。ある程度の経験を重ね、地震がついてきて初めて、自分のつくっているものが他者の目にはどうみえるかということが気になり始める」
(そうかぁ。ブログ...)
「人間の引き起こす災いの根っこにあるのは、ただひとつ、支配と被支配の関係だけだ」(う~ん...女性もそう考えるかなぁ...私、たぶんそうは考えていない)
「人は誰でも、自分の幻想という小さな王国のなかでは、ちっぽけな王冠をかぶり玉座に座っている。そういう部分があること自体は、けっして邪悪でもなければ罪深くもない。むしろ、軋轢の多い現実世界を生き抜いてゆくためには、なくてはならないことなのだ」(我が父よ、逸脱してるからなぁ)
「妻は彼の国民だ。同時に彼は妻の国民だ。互いに互いの圧政に我慢ができなくなればいつ移民してしまうか判らない危うい関係ではあるけれど」
「我々は、幻想のなかにしか存在しない国土を奪い合ったり分け合ったり共同で開拓したりしながら、互いに互いの国民であることでようやく暮らしていかれるのである。人間が弱い者だというのは、つまりはそういうことだと思う。 しかし時に、話し合ったり合戦したり手打ちをしたり意気投合したり愛し合ったり語らったりする手続きを抜きに、王国を拡大したり、移民しようとする国民を引き留めようとしたり、強引に国民を増やそうとする王が現れる。そういう王は実際に法に触れて犯罪者になる場合もあるし、ならない場合もある。だか、どちらの場合でも、破壊的な人間であることに違いはない。  破壊的な人間は、けっして誰かの国民にはならない。ただ王であるばかりだ。だから孤独である。孤独であるが故に、けっして自分を裏切らず絶対の服従をしてくれる永世国民ほしさに、ある者は物理的に、ある者は精神的に、他者を殺してはばからない。(我が父に結びつける私は非常な娘かも?)
「罪悪感を背負い、この余の邪悪に怯えて暮らすよりは、積極的にそれと闘う立場を選んでみれば、人生が開けるかもしれない」
五のは、2006.4.13日記に掲載しました。

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