初詣、ここ数年は神社ではなく、お寺に出かけています。
これがそのお寺。かなりへんぴな場所にある、知る人ぞ知る名刹でございます。
いちおう国宝なのですよ。創建は鎌倉時代。
貴族が極楽浄土をイメージして設計したらしいのですよ。

本堂には、九体の阿弥陀如来が鎮座しています。
中央の一番大きな仏様の前に正座して、手を合わせ、静かに祈ります。
昨年1年を無事に過ごせたことに感謝し、
今年1年も無病息災でありますように、世の人に心の平安が訪れますように、と。
今回の帰省では、悲しい知らせを2つも聞いてしまいました。
同級生の弟さんが冬山で遭難し亡くなったこと、
また別の同級生のお母さんが病気を苦に自ら命を絶たれたこと。
仏さんたちの静かな顔が心にしみました。
生きていると、どうしようもない悲しいことに向き合わなければならないこともある・・・。
年を重ねるとそういうことが本当に増えてきます・・・。
同じ土地でいっしょに子供時代を過ごした友人に訪れた悲しみに心が痛んだ2010年のお正月でした。
そして、もうひとつ私を感傷的にさせたのがこれ。

吉田修一の『悪人』。
ほぼ2日間で一気に読みました。
ラストが近づくにつれ、心をぎゅーっとつかまれ、
ねじりあげられるような苦しさにおそわれ、最後は涙が止まりませんでした。
最初は主人公の祐一にまったく共感できませんでした。
でも悲しい生い立ちをもつ、この青年にどんどん、どんどん感情移入してしまい、
最後は、「もうお願いだから彼を悪人にしないで。助けてあげて!!!」と。
悪人。
祐一はほんとうに悪人だったのか? いろいろな解釈があると思いますが、
私は最後、祐一が見せた行動は「愛」であったと信じたいと思います。
本当の愛情とは、相手の幸せを心から願うこと。
自分のことはどうでもいい、相手が幸せであるならば、という。
母に捨てられた過去からか、いつも心に寂しさを抱えていた祐一。
でも最後、彼はほんとうの愛情を知ったのです。
と、私は信じています。
最後読み終わって泣いたあと、
静かな悲しみが心を満たしていきました。
こういう小説を読むと、人の心には「ひだ」というものがあるのだということに気付きます。
心のひだには、人が生きるということの悲しみ、寂しさが澱のようにたまっていて、
こういう小説を読むと、ある何かがそこに触れ、あふれるように次から次へと、
ドバドバと、悲しくなってさみしくなって、涙がどわーっと出てくるのです。
なんだろな、これはいったい。
人間の脳は不思議だな。
読書は心のさまざまな情景を見せてくれます。
まさに心の旅であります。
『悪人』は映画化されるそうです。
主人公の祐一には妻夫木聡、いっしょに逃げる光代には深津絵里。
うん、まあ、いいかも!
センチメンタルな「自己中日記」なので、コメント欄を閉じておきます!!(笑)
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