独り言 反 女権主義

独り言 反 女権主義

語られざる男性差別その3



少し古いが、現在の日本の問題点を見る際に参考になるのが、『Who Will raise the children?』(James A. Levine著、J.B. Lippincott Company刊)。米国で女性の高学歴化と社会進出が進んだ1976年に出版された。120人の男性にインタビューし、彼らが直面した差別の実態を紹介する。


 特に育児に関しては、男性への差別はひどかったようだ。離婚時に子供の養育権を得た母親が子供への虐待を繰り返した事例では、父親側は引き取るため万全の体制を整えたのに養育権が認められなかった。また、独身女性は簡単に養子を取れるのに、独身男性が養子を希望すると大変な困難を伴う。男性には事実上、育児をする権利が認められていなかったということだ。当時、人権団体には、こうした男性からの相談が多数寄せられたという。

 雇用における男性差別の事例もあった。ニューヨーク大学のロースクールを卒業した男性が、パートタイムの仕事を希望して数社で面接を受けたが、採用されなかった。本書でこの男性は「雇用主は、男性がパートタイムで働きたがるということに不快感を持つようだ」 と話している。この例は、前述の大阪府の男性が起こした訴訟を思い出させる。

男性も「ノー」を言う勇気を
 今、日本で起きているのは、米国の1970年代によく似た変化だ。社会構造の変化や政府の後押しで女性の地位が急上昇しようとしている。一方、男性差別についてはいまだに公の場では議論にすらなっていない。

 この時期に、男性への差別を是正しない限り、本当の意味で男女平等にはならない。特に、一部の女性はもはや弱者ではない。それにもかかわらず、職場や私生活で女性を“女の子”扱いする文化はまだ残っている。例えば「女性に長時間残業させるのはよくない」と考える管理職が、女性を早く帰す代わりに、男性を余計に働かせる。男女同一賃金なら、これは男性差別になるはずだ。

 この文化を変えるために、個人でできることがある。例えば男女一緒に食事をした時の支払いや、仕事の配分を見直すことだ。収入差が大きい場合や男性がどうしても払いたい場合を別とすれば、女性も自分の分は払うべきだ。男女で賃金が同じなら、女性も男性と同じ責任を負うのが当然である。「男なんだから、奢るべき」と言ったり、同僚よりラクをして平気だという女性には、早く心を入れ替えてほしい。

 そして男性には、はっきり割り勘を主張してほしい。男性だからといって、女性に奢らなければいけないということはない。また、同一賃金なのに男性ばかり残業を要求されるようなら、勇気を持って「おかしい」と指摘してほしい。男性差別が本当に嫌なら、こうした小さな行動から始めるしかない。被差別者が声を上げることで歴史は変わってきたのだし、そういう男性を支持する女性も少なからずいるはずである。

 次回は、ワークライフバランスを取り上げる。子供を持つ女性だけでなく、男性や未婚女性も働きやすい環境について提案したい。


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