7:LA編・逃亡のハジマリ

その7:LA編、逃亡のハジマリ


人間の欲望の行き着く先を軽く見た俺に、もう怖い物などはない。

なんだか大人になった気分だった・・・ 


とにかくアダルトショップを出た怖いもん無しの俺は
さっそうとレンタカーに乗り、
行列の出来ていたホットドック屋(PINKS)で腹ごしらえをしてから、
Rという名のアウトレットモール に向かった。

初の高速道路(フリーウェイ)!!
その名の通り、どこまで行っても無料なのだ。

ルート101をひたすら北上!

しかも5車線!左2車線が追い抜き車線だった。
すかさず追い抜き車線に入り、かっとばす!!
おんぼろレンタカーの為、アクセルはべた踏み。
それでもたぶん150~160キロ位しか出てないんだけど・・・

なんせ、スピードメーターも標識も看板も全部表示がマイルなのだ。
1マイルが何kmか判らなければ、何もわからない訳で・・・・・

しかも、しかもだ!奴らは交通マナーがめちゃめちゃ悪い!!

ウインカーなんか点けやしないで、平気で割り込んできやがる!!
しかし、こっちがウインカーつけないで割り込もうものなら、
もの凄い罵声が飛んでくるのだ。

なんて奴らだ。

またりんごが飛んでくるのは勘弁だから、俺はウインカーをちゃんと点けた。
やはり、やられて嫌な事は人にすべきではない。

感覚が麻痺する。
運転がゲーセンのレースゲーム感覚になる。

見慣れぬ景色、ウインカーも点けずに割り込んで来る車、
周りの車のスピードは平気で150~200Km位・・・

しかも標識は全部英語。。

スピードが速すぎて字を読み終える前に標識はあっと言う間に後ろへ・・・

そんな状態だったが、ラジオから流れる曲に合わせて車の中で大合唱!!!
危険な状態と背中合わせの中、アドレナリンは出っ放し!!

ぐんぐんと目的地へと進む!楽しい~うっひょ~



・・・が、しかし周りの景色はいつしかだんだんと町から何もない荒野へ・・・

都会から離れたせいか車の数も減少しだして・・・・
楽しくてしょうがなかった運転も、
集中していたせいか二時間もたてば疲れてきたのである。
少なくとも200~300kmは進んだはずだ。

おかしい・・・そろそろ着くはずなのだが・・・

と、スピードをやや落とし標識を確認しながら進むのだが・・・

あった!!!

Rという名の出口 を発見!!
そこから高速を降りる・・・・

ん?!

降りたのは俺だけ。
常識的に考えてそんな大きなアウトレットモールに行くのが俺だけ??
何かおかしい・・・と感じながらも車はひた走る。
前にも後にも車はまったくない。周りはひたすら荒野。
どこまでも荒野。。 

絶対におかしい。

そして高速の出口は問答無用の一本道、
しかも途中から砂利になり・・・いつしか突き当たりが見えてきて、
進む事3キロ程であろうか・・・
そこで道は終わった。

とりあえず車を降り、周りを観察。

突き当たりは自然公園の様だった。
囲いらしき感じの木が見えて、中にはたくさんの木が生い茂っているのだが・・・
大きさは・・・ざっと、数キロはあるだろう。
砂利と土だらけで、とにかく向こうの果てまで見えないのだ。
しかも明らかに無人の様なのだ。
人間の臭いのする物(車とかゴミとか空き缶とか・・・)がまったく何もないのである。

人などだ~れもいない。 アウトレットモールの影も形もない。
見渡すかぎり、高速道路と公園内部以外は、地平線の彼方まで、岩山と砂と枯れた木・・・・
つまり荒野しか見えないのだ。


ある意味すごいが、ある意味怖い事である。


どうりで、誰も高速で降りなかった訳だ。なんにもないもんな~

トイレに無性に行きたかった俺は公園の中で用事を済まそうとしたのだが、
ある事に気がつく。

もしここで誰かに襲われたり撃たれたりしたら、誰も気がつかないだろ~な~って。
銃声だって響きたい放題!
大砲でドカ~ンと撃たれても誰の耳にも届かない。
目撃者も余裕でゼロ!

天気は気がつけばどんよりと曇りだし・・
気分が落ちていく自分に気がつく。

ひゅ~・・・・と風が吹く。


アメリカで無事に過ごすには、ひとけの無い所は避けるべし。 


やばくない?



今の俺の行動そのものが、一般常識を完全に逸脱しているのではないか?
変な人が来る前に用をすませてとっとと退散だ!!!

そして公園内に入ろうと入り口まで来たその時、

目の前の立て看板に気がつく。

かなりぼろくなってはいるが、かろうじて字は読める。。。。
大きな字でこうタイトルが書いてあったのだ・・・




































注意!!ガラガラ蛇!!毒蜘蛛!!



うそだろ?


漫画の様に冷や汗がたれた。
更に読んでみると・・・・

「彼らは悪者ではありません!!
危害を加えれば当然攻撃してきます。
しかし、それは彼らにとって我々が敵であり、侵入者だからです。
他にもこの公園には様々な生き物がたくさんいますが、
彼らにしてみれば我々が敵であるという事を忘れない様にしましょう。」


おいおい、と非常に冷静に突っ込む。
またもや脇汁たっぷり。

冗談じゃない。

これって柵のないサファリパーク?
それを大自然というのだろうが、今の俺はそんなもん望んじゃいない。

用も足さずにダッシュで車に乗り込み、
来た方へ一目散に戻った!!


そうだった・・・アメリカには、未開発の土地がまだまだ山程あったんだった・・・
俺はそれを忘れていた。そして、もうそれを一生忘れないであろう。

しかし、本当の不幸はこれから始まる・・・




つづく


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: