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2006.05.01
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犀川創平と西之園萌絵コンビが活躍する,犀川&萌絵の”S&Mシリーズ”の10作目を読んだ。シリーズを締めくくるにふさわしいボリュームと内容だった。

○ストーリー
萌絵と友人2人は,長崎のテーマパークに遊びに行く。3人が行く前から,テーマパークでは「ドラゴンの呪い」による殺人の噂が流れていた。そして3人は,到着早々に連続殺人事件に巻き込まれ,空を飛ぶドラゴンを見る。一方で謎の電話を受けた犀川は,車で長崎へと向かう。犀川と萌絵が,バーチャルリアリティシステムの中で出会ったのは,すべての事件を画策したあの天才だった。そしてシステムから生還した1人とは?すべてが作り物の世界で,知性がぶつかり合う。

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この後も萌絵たちが登場する作品は発表されているので,これっきりではないんだけど,とりあえず本流のシリーズとしては,犀川助教授と萌絵お嬢様の作品は終了だ。これも分厚いが,森博嗣の文章なので,すらすらーっと読めてしまう。

もう発表されて何年も経つし,あといろいろ友人から薦められて読むので,この10作目で何が起きるかは,1作目を読む前から知っていた,残念ながら。まあ,こーゆーのは巡り会わせなのでしょうがない。逆に,シリーズの途中の作品で,評価の低いものがあっても,「10作目ではあれが待っている」ってのが励みになって読み進んでいた。

さて,では10作分の期待を背負った形で詠まれることとなったこの作品への評価は・・・大丈夫!なんといっても1人のキャラクターが光っていて,その人が会話をするだけで,読んでいる方が緊張するくらい,作品がぴしっと”しまる”。

そう,これは読者,そして犀川と萌絵が,あの人に再会することによって,10作を通じた成長を振り返る作品なのだ。(たぶん)

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この人が出てくることで,萌絵どころか犀川までも,いつもと違い,どこか緊張し,うろたえたような行動を取るから面白い。そしてこの人によって犀川や萌絵の人格を分析が行われる。作中で,登場人物が相手のキャラクター設定を解説する,って,なかなかできないことだと思う。森博嗣,スゴイ自信だ。

犀川を中心にすれば,あの人,自分,萌絵の関係は,〔より進化した頼れる存在〕〔自分〕〔頼ってくる存在〕だろうか?萌絵は作品内でも解説されているとおり,あの人,自分,犀川を,〔悪意のある知性〕〔純なる自己〕〔善意のある知性〕と解釈しているように思える。

3人が,3人とも会った瞬間,あるいは会う前から,互いにこの3人こそが,自分に匹敵する知性の持ち主だと見抜いている,という設定が,なんだかスゴくマンガチックではあるけど,このシリーズの根幹なんだろう。

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この作品で,思索テーマに選ばれるのは,「現実と虚構」だ。第1作目と同じようにVRマシン(バーチャル・リアリティ)が登場し,特異な空間の中で,特異な体験が行われる。

3Dで再現された空間の中で,自分の視点が,他のオブジェクトの中に潜り込んでしまった瞬間の,あの不思議な感覚,それを事件のキーポイントにしているところが面白い。これは,3DCADの設定ミスとかで生じるんだけど,ホントになんか現実ではできないミョーな体験なので,文章化されているのが貴重だ。

そうしたテーマで描かれる作品の中で,ミステリーの部分はあまりにも扱いが低い。10作品中,事件の解決が,ここまであっさりとなされていたのは初めてじゃないだろうか?前半はそこそこ出ていたキャラクターたちが,結末部分では,ほとんど書き割り的な扱いだ。それこそ,彼らはこの作品では,単なる「装飾」なんだと思う。いわば,キャラクターオブジェクトの表面テクスチャなんだろう。

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互いに姿が見えないバーチャル空間の中で,やはり,というカンジで,手を離してしまい,互いを見失ってしまった犀川と萌絵,2人の将来に不安を抱かせつつも,このシリーズは完結した。

それにしても,本来4作目だった「すべてがFになる」を1作目に発表させた編集者の着眼点って,ものスゴイ。犀川ぐらいスゴイぞ。






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Last updated  2006.05.01 09:45:21
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