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2009.12.09
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カテゴリ: ばくばく冒険小説
上巻から1ヶ月を経て「新世界より」の後半を読んだ。

○ストーリー
学校での早紀たちの班は4人だった。だが4人は「消えた1人」のかすかな記憶を共有していた。次に消されてしまう恐怖を募らせ,真理亜と守は村を出て行ってしまい,早紀の幼なじみは覚ただ1人となってしまう。
そして10年後,人間に奉仕するためにネズミを改良した種族・バケネズミが,大規模な叛乱を起こす。さらにバケネズミたちは,自分たちで育てた秘密兵器を解放する。村を救うために,早紀と覚は,死の町・東京へと向かう。

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牧歌的な場面もあった上巻と比べ,下巻はテンションの高いシーンでほとんどが占められている。物語の冒頭に,主人公・早紀が生き延びることは語られたのだが,次から次へと過酷な出来事が襲い掛かるので,そんな安心感はすっかり忘れてしまってハラハラするばかりだった。

村の攻防戦,東京での逃避行など,物語の展開だけを語ればそれほどボリュームがあるとは思えないだろうが,色や匂いまで伝わってくるほどの内容で,正直かなり”お腹一杯”になった。なにしろディテールの緻密な描写は貴志祐介が得意とするところだ。

ただしそれは不必要に細かく語るということではなく,きちんと村の様々な人々を描く,きちんと崩壊後の東京を描く,という方向であり,おかげで物語にはどっしりとした厚みが生まれている。

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早紀たちの班は,はみ出しモノが集まっていたために,→夏の課外授業で冒険をして,村の過去を知ってしまう。→だからこそ,この中から○○が発生する。

下巻では,無理に○○の記憶を改変したために,→守がより不安定になり真理亜と逃亡してしまう。→そしてこれがバケネズミの叛乱のきっかけの1つとなっている。

物語では,「世界系」と「私系」の混乱が見られることが多い。だがこの物語では,主人公たちが思っている以上に,「私系」が「世界系」とつながっている。上のつながりをたどれば,村の崩壊の原因の一部は,早紀たちが夏の課外授業で取った行動にあると読み取れる。

読者はそれを背景にしているし,主人公たちもおぼろげにそれを認識しているから,終盤近くの死地・東京への旅も必要以上にヒロイックではない。

この作品だけでなく,貴志作品の多くで,主人公たちは過去に看破できなかった事柄が大きくなってしまい,それを是正するために命を賭ける,という行動が多い。それは「世界」のためになっているのかも知れないが,そこで行動する理由は「私」が犯したミスが原因だから,という部分も多い。

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さてコナン・ドイルは,「名探偵は頭脳明晰に設定し,その助手は読者より少しだけ知能レベルを低く設定すべし」という,『ホームズ&ワトソン』パターンを創造した。

この辺り,貴志祐介は悲しくなるくらいドライだ。この作家の作品では,主人公と読者の知的レベルの差は考慮されていない。それ以上に考慮されていないのは,主人公と敵方の洞察能力の差だ。読者が考えるようなことは,主人公があの手この手で行うし,同様にその手のほぼ全ては敵方に読まれてしまう。

じゃあ,どうすればいいのか?と読者は不安になり,貴志祐介に身をゆだねざるを得ない。毎度ながら,全く見事な手腕だ。

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この物語の事象が1つの連鎖として捉えることが出来る,と述べた。だがそれ以上に,物語の構造を1つの文章で捉えることが出来てしまう。それは「もし人間1人1人が世界を強大な力を得るとしたら,それはどんな社会を生む出すか?」



それは分からないが,間違いなく貴志祐介は,上の命題について真剣に考え,それを元に世界と歴史を造り,物語の連鎖を造り,ラストに訪れる衝撃のどんでん返しを準備している。

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この血塗られた物語は,我々から1,000年後の世界に暮らしている主人公・早紀が,我々ではなく,彼女からさらに1,000年後の人々に託すために語った物語だ。多くの絶望が語られているが,希望に満ちたセリフでは終わる。

さて我々は,1,000年前の人々から注視されたとしたら,彼らが夢見た以上の世界を築けているのだろうか?

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Last updated  2009.12.13 00:48:08
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