ricericericecocoa

ricericericecocoa

PR

Profile

ricecocoa

ricecocoa

Freepage List

Apr 17, 2011
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類
 かなり大掛かりな部屋の整理をしている。本棚からは大部分の本がなくなった。

 友達が大阪に出張。ちょっと寂しいな。昼間一緒に覗いた服屋さん。春色が一杯だと、彼女が喜んでいる。計四万円のお買い上げ。今の日本で一気にそこまで買う人はいないだろうなぁって、新しい彼氏とのノロケ話を聞いたり……薄暗さと、夏の眩しさが混ざる街の中でちょっと変な感じ。

 地震は人との別れだ。私は今日本酒をちょっと飲みながら、天井を眺めている。思い出の中には悪いものもあっておかしなものもあって……それでもって、パンクしそうな脳みそをかかえて、私以外にこの部屋に住んでいるであろう人々について考えている。

 だから眠れない。彼らの内何人かは悪さをするから。

 ”お前の家はお化け屋敷みたいだなぁ”って、行きつけの飲み屋の店主が言う。アイヌとロシアの混血でいつも頭にはバンダナ。奥さんの料理は絶品で、私は飲みすぎると、兄さんの自転車に乗って家に帰る。”怖くない。怖くない”ってきっと兄さんは言う。私は”怖い、怖い”ってお酒を飲みながら、泣いてしまうこともある。

 名前を忘れた。神がかり?違う。生霊?違う。
 あ!!金縛りだ。

 小さな時は、母がしょっちゅう金縛りに会い、闇の中にうごめく何かが見えるようなので、怖かった。その他に魔がさすような出来事も存在するのだという。

 電話で母と話すと話しやすい。顔をみりゃ、喧嘩したくなるのに、腹が立つこともあるのに……。



 母が金縛りに襲われていた当初、人がたくさん周りで死んでいたのだという。まあ、病院なのだからしょうがないのか……人が死ぬ前にはどういうわけか、わかるのだという。私はただ想像する。

 それに、子供の頃、私がよく泣いていた場所には、何かがいたような気が今でもしてしまう。薄暗い明かり。その下で目を閉じると、星が幾つも幾つも見える。私は現実に目を向けるよりも、想像することで生きているような子供だった。学校の窓の外を眺めると、私が作り出したものだけれど、天使が見える。先生の話はきかず、しょっちゅう何かとお話をしている。眠る前には、たくさんの夢を見る。

 大人になると、母は金縛りにあわなくなり、私があうようになった。一人暮らしを始めて、寂しかったのもある。私は誰かと生きていきたかったけれど、私は体や心に傷を持っている人々を選んだ。とはいえ、選んだのは生きている人々ではなかった。”苦しいのは貴方だけじゃない”と言われるので、明らかに私より苦しい人々を受け入れることにした。そうしたら、集まってきた。集まってきた。目を閉じると、いや、閉じなくても、見てしまう気がする。私は深入りをしたのだと思う。それは悲しい言葉達。人々の怒りの声。夜の中にすさぶ風の中に聞こえるすすり泣き。

 そもそも、私がそういう世界に入ったのには、きっかけがある。この日記をずっと読んでくれた人々は私が長い事、いじめられっこだったことを知っている。私がいじめられていた時、いじめが社会で大きく取り扱われるようになる。自殺があいついだ。痛々しい遺書が新聞に載った。人々はやがてそのことを忘れていく。私は忘れない。忘れないって思った。忘れないから、私の体を私の声を使ってほしい。それが私が小説家になりたい、と、思った原点のはずだった。

 だから、私を試すようにして、私は貪った。ちょうど、大学にはそういう資料が溢れていた。先生達は世界の裏側のことを、無残にも殺された人々のことを教えるのに必死だった。私たちはルワンダを、その虐殺を、イスラエルを、ベトナムを、沖縄を、ヒロシマを……貪るようにしてみた。幾つもの死体を映像の中で見た。無残

 まばたきを忘れるぐらい見る。何度も何度も映像を見る。幾つも見る。死体に目が慣れていく。それも綺麗なのではなくて、幾つも幾つも積み重なって、血も体もばらばらで、表情もわからないのが、ぐちゃぐちゃ。画面の中で、小さな女の子がジハードを誓う。

 今、ここにいない人がいる。地震の影響で本国に帰ってしまった先生の一人。戦争のことや虐殺のことは、その先生が一番知っているけれど、一番そのことについて話さない。ただ、彼は部屋にこもって書く。黙々と書き続ける。”悲しみについて”と彼は言う。彼は書き続けている。私達はその言葉を聞くことが出来ない。

 私の友達はその先生が嫌いだと言う。今その理由がわかる。生きている人は生きることに忙しいから、死者と対話することができない。

 私は彼女と一緒にいると、楽しいような気がする。彼女が好きだから、一緒にやることは楽しいのだ。たぶん、きっと。春色の洋服も、勿体無いぐらいのイタリアンも、腕を組んで歩く六本木も。彼女が”代表取締役”の名刺を出すと、皆驚く。”若いのにねぇ”それで、私は可笑しくて、他の人が知らない社長の彼女の女の子の部分も、優しさを押さえつける部分も知っているから、私達は目配せして笑う。鏡の前で服をとっかえひっかえ、かつらをかぶって遊んだり……踊ったり。

 彼女は生きることに一生懸命だ。服を買って、ご飯を食べて、いろんな人々に会って、頭の中で新しい事業のことを考えたりする。頭の中だけじゃなくて、実際に話したりする。それから実行に……。だって、いるんだから。実行にうつすのに力を貸してくれる実力者が。

 彼女は私を巻き込むのが好きだ。私をジェットコースターに乗せるのが好きだ。



 彼女はパワフルで、私は父親譲りの酒飲み。眠い。今日の限界。金縛りさん、今日はまともに眠らせておくれ。酒は頼んでくれれば、ちょっとは残してやるから、君も少し忘れた方がいい。私の夢の中で泣いても、私によしかかって私を苦しめるよりも、のみんしゃい。邪魔はしないから。










お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Apr 17, 2011 11:47:46 PM
コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

cocoのロングステー… cocosaikoさん
ちょっこそ聞いて けんじ777。さん
エデンの南 SEAL OF CAINさん
コイケランド koike1970さん
KoのJournal 康521さん

Comments

cozycoach @ スペイン語 全然、頭に入んないよ、どうしよう Twitt…
康521 @ Re:出発(05/24) お久しぶりデス! アラッ、帰郷ですか?…
くーる31 @ 相互リンク 突然のコメント、失礼いたします。 私は…
cozycoach @ おめでとうございます 今年もよろしく。お互いに切り抜けましょ…
ricecocoa @ Re:仕事依存症(12/22) cozycoachさん どうやら、一人で時間を…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: