一件目の気になった美容室……入り口に蛙がおいてある店。感じのよさそうな店主が一人。でも、予約で埋まっているの。しょうがないから、もう少し歩くわ……。何で私は眠れないのだろう。今現在もまだ眠れておらず、どこか気だるい。明日もう一回病院に行って、処方箋を出してもらうべきかしら?別に眠れなくてもいいけどさぁ……。
美容室で均等な坊主にしてもらい、鏡の中の人物と目があう。私自身なのに、まだ悲しみから抜け切っていない。あらゆる痛手を経験しているけれど、どうして失恋じみたものは、物憂いのだろう。全くファイトが沸いてこないし……。それに日常生活。化粧にも興味がなくなった。服装にも興味がなくなった。疲れているのもあるけれど……たまをどこかでは田舎だと思っているから気合が入らないのもある。
そんなことではないはずなのに。生きていくことって、生活ってさぁ……
ああ、地面から全てゆれてしまえばいい、と、不安定な気持のままに、思ってしまうことがある。どうしてなのだろう?
あの人のいない世界にも馴染めてないし、夜っぽい感じがしない場所にも馴染めない。
あさきゆめみしの”浮舟”があったらなぁって……思ってたら、古本屋さんにあった。嘘でしょう。こんな偶然。それから、吉田秋生の”吉祥天女”が目に入ったから、”ああ、面白い。対照的な女性だわ”って……
時代が変われば女性も変る。女の業というものもあるようだけれど、したたかに生きることも一つの手なのかしら?世界が私が想像していたものとは、違うわと実感することが多い。下町といえど銀座の近くと、たまじゃ大分な違いがあるし、仕事の仕方が違う。
髪をはじめてほとんど失って思う事。しばらくはこれでお終いって。一時休業の人間関係も友人のみに限ってしまう。携帯電話の中にはどれだけ普段使わない人のデータが入っているのだろう?
まだ好きだと言ってしまった時の後悔。しまった感。”そんなことより本人に言えよ”と元モデルのある方。”傷つくのはいいし”なんて風に流していければ楽なのか、苦しいのか、後悔するのか……
自身で発明したストール巻きの遊びは、何故か美容師さんより私の方が上手い。この巻き方のバージョンもフランス留学の成果か、と……移民の友人達が懐かしい。本当のフランス人よりも、そういう人々と友達になることが何故か多かったから。体全体で騒ぐこと。自分のスタイルを追求すること。どこか恋とは違って…・・・恋に答えて男の要求に応えることと自我、今じゃどちらが強いのだろう?悲しいけれど、一つ一つの思い出を笑ってしまう。
それから美容師さんの香水とタバコ……懐かしいタバコのにおいがした。昔一緒に働いていた若い女の子が言ってたな。”ちょっと悪い男が好き”って。”苦労するからやめときなよ”って言いたいような気分だけれど、経験しなければわからないこと。だから別にいいやって。
それでも気持が残っているならば……と、私を心配するも言う元モデルのその方は、もしかしたら、私とは凄く凄く感覚が違うのかもしれない。ふぅーと”男と女”だんて言葉が彼の口から出てくると、欲望を人間としてのモラルよりも優先していいのか?と、眩暈がする。
私は違う人間のような気がする。でも、もう乙女チックだけでもいられず、自分が傷つくばかりも出来ない。それから、したたかも違う気がして……部屋の中を行ったりきたり。全てが違う。
人生って義務や責任をこなすばかりでもないし……そこがドーンと抜けている私は何かな?自分の周りにいる人々は本当に存在するのか、昔から疑ってきた。最近、温かさとか体温とかを感じるようになった。
仕事の技術云々もそうだけれど、仕事が変る度に、人間関係、特に男性関係が落ち着かない気がする。特にあの人と別れてから。寂しげに飛ぶかもめのよう。誰かに早くたどり着かないかとあせる。あの人もこの人も、と、別にどうでもいいような気がしてしまうことがある。
せっかく坊主にしたのだからと、デートの誘いを一つ断った。異性としては見ないで下さい。その人の久しぶりの言葉。雑誌にのっているんだよ……。ああ、頑張ったのか……。けれど、つじつまが合わない。
父親……異性だけれど、恋人にはならない存在にあと少しで会えると、不安ばかり。本当のことなのかしら?って。
父さんが父さんらしいことをこないだ初めていい、”大人なんだから”って……それから”帰ったら連絡よこせ”と”線が細いなぁ”に、ちょうど病院の所を通り過ぎてた。
他の人の”守ってもらいな”も違う気がした。自分を作り変えたいのに一筋縄にいかない。化粧ポーチを捨てたのに、化粧をしたいような気もして・・・・・・ひたすら眠れなくてストールの肌触りを楽しみ、それからバラの香水に酔っている。
24時間起きて、三時間寝て……その後ずっとおきてる。それからもしかしたら、また朝があけて、私は疲れてしまうのだろうか?早く準備を終えて向うに帰りたい。
”吉祥天女”を読みながら、”ああ、そうよね”とちょっと同感。女性は力では男性に叶わないからと……わからない。本当は。スナックの兄の前で、子供のような私が、無邪気な私がみんな好きだと言う。けれど、そればかりで、そのままでは、私はいられない、と、思う。
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