いつもの たぬき

いつもの たぬき

特殊 養護学校連合体育大会6年


とうちゃん かあちゃん大興奮です。りきは 渡された原稿を まるで 教科書を音読するかのように淡々と読み上げます。「00小学校8人の入場です。00小学校2人の入場です。・・」「おい!まだ、次の学校出てきてないぞ!」りきは 原稿から 顔を上げることなくどんどん 読み上げていきます。「せや、りきのスピードについて来れんのがいかんのや(笑)」

 お昼前は 最大のイベント 1200m走。4年生以上の小学生が全員走ります。男子の部 約60人 スタートしました。りきも ちょいと右手をプラプラふりながら走り出しました。こんなに大勢の中で走るのは慣れていません。前を見ているのか下を見ているのかわかりません。「りき~!」私達の声には
何の反応もなく 通り過ぎました。りき 少し 外側に出ました。トップ集団に迫ります。12番目、いや
10番。ターゲットを見つけたのか、「りき~!」目の前は7番だった。顔は「音楽室の怖い顔」のような
難しい顔だった。それでも、「お~お~!」りき、4か5番。まだ、ぜんぜん余裕の走り。先頭の3人は
00小で 毎日基礎体力作りで走ることを日課にしている。りきたちは 練習してまだ 間もない。それでも、「りき~!」りきを入れて 先頭集団は4人になった。大きく右手をプルプルさせて りきが
りきが りきが 行きます。3番です。スピードが上がってきています。保育園の時の仲間も 他の皆さんも りきの追い上げに大興奮。「いけ!りき!世界が君を待っている!」「りき~!」自分達の声も大きくなってきました。捕らえました。りきは 完全に1位の背中をロックオンしました。2番は関係ありません。顔を上げてきました。りき・・・・・。ところが りき立ち止まりました。「もう、走れない」と泣き出していた4年生のT君の 背中をなでています。「そんなん いいから走れ!」と 叫びたくなりましたが 1周遅れの 同じ教室のT君が気になったのでしょう。担任の先生がすぐ駆け寄り 「T君は大丈夫、先生が見てあげるから りき君は 走りなさい。」りきは 再び走り出しました。後残り1周ちょい。
どうなんだろう、10番?何番だろう?「りき!スパート!」ついに、かみさんが立って走り出した。
りきは、100m走のように走ります。そう言いつつも りきは 距離感はわかりません。あと1周で
走らなくてよい ということだけだと思います。りき がむしゃらに走ります。ざわざわ してきました。りきくん6番手。あと、約100m。「りき~!」わたしらは ゴールへと走ります。先頭の子の親達も走ります。「りき~!早く来なさい!」九州のアクセントが大音量でりきへ届けられました!
りき ひとり また一人 あと あ~!    りきくん4位。よくやった。よくやった。
 そうやな、いろんなことがあって りきのクラスはみんな転校しちゃって、4年のT君だけが 残ってくれたんだもんな。唯一のクラスメイトだもんな。お前は きっと1位だったと思う。けど、父は そんな おまえを 誇りに思う。

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