☆りんぼぉ☆卵奮闘記☆

老年看護学実習


・個別性の尊重
高齢者には歩んできた生活様式、生活習慣、文化的背景があるため生活歴(ライフヒストリー)を知ることは必要であった。生活歴・価値観に応じて一緒に考えて看護を実施する必要があった。そのため、高齢者の価値観や生活習慣を勝手に改善して援助者の考えを押しつけるのではなく、高齢者の個々の考えを尊重する必要がある。また、患者が今まで実施していて間違っていることを正しいと思っており、どのように性格に説明していくか考え実施していく必要がある。高齢者の個別性の看護を行うためには、高齢者の身体的・精神的・心理的状態を把握し、高齢者の思いを尊重できるように関わり、高齢者が納得する援助を行う必要があった。


・自尊心の尊重
高齢者は自分の生活を自分で決定したいという意志を持ち、決定していく能力を持っているためそのことに誇りを持っている。そのため、高齢者が自分で物事の決定ができるように援助していく姿勢を持たなくてはならない。高齢者は記銘力が低下しており指導や説明をするときは繰り返し説明する必要がある。しかし、自尊心を尊重するために患者によっては指導を繰り返し行いすぎることは好ましくない。


・予防的対処の優先
 健康を守り、QOLを維持するため常に予防的な対処が優先されなくてはならない。一つの発病や障害は、2次障害を引き起こしやすく、合併症が生じることによって、基礎的疾患がさらに増悪するという悪循環をたどる。2次的障害が起こってからでは元の状態に戻すことは難しい。そのため、予防的な対処を実践していく必要がある。
 高齢者は、身体的機能の低下などがみられるため、転倒のリスクが高くなる。また、転倒が起こることにより、寝たきり状態になることも考えられるので、転倒を予防する必要がある。予防のため、歩くときはしっかり足をあげるように説明したり、環境調整を行うこと、移動時は患肢側に立ち見守るなどの予防的対処が必要であると考え、実施した。このような予防法を行うことで高齢者の転倒は見られなかった。また、寝たきり状態になることで褥瘡も起こることが考えられる。褥瘡を予防するために圧迫を取り除き体位変換を促す、散歩を促す、皮膚の清潔を保つため清拭、寝衣交換、石鹸を十分に流すなどの援助を考え、実施した。また、車椅子座位でも、体圧を分散し、坐骨結節部・肘関節の褥瘡を予防するため、テーブルを置きもたれてもらったり、それができない人の場合、15~20分くらいの短時間の散歩を行うようにした。このような予防法を行うことで褥瘡は軽減し、悪化も見られなかった。

・残存機能の活用による日常生活の自立
 最後まで、自らの能力を精一杯使って生活していくことが、人間としての本来の姿である。失った機能を回復するのではなく、現在ある機能を維持していくことが必要になると考えた。右麻痺のある高齢者に対して、左手でスプーンを持ってもらい、食事をしてもらった。人工呼吸器を装着している高齢者は、自分での口腔ケアを実施してもらったり、電動ベッドの昇降スイッチを押し、ベッドの上げ下げを行ってもらった。そうすることで自分でできるという自信を持ち、少しずつではあるが、何に対しても意欲が出てきて、セルフケアの拡大が少しずつできてきた。また、自立を促すことが自尊心を高めることにもつながっていくことを学んだ。

・看護用具の活用による生活環境の調整
 高齢者が失った機能を自力のみによって補うことが困難であれば、その機能を補ったり、代替する用具類を活用して、日常生活の自立性を高めていく必要があると考える。骨折後、筋力が低下しており歩行が困難なため歩行器を使用していた。介助によりポータブルトイレの使用ができる人は、自立を促すためにオムツを使用するのではなく、ポータブルトイレの使用を促した。そのことによって、褥瘡の発生も予防でき、日常生活の自立も促すことができた。

・生きることの喜びを見いだし、社会交流・参加を促す
 高齢者は社会的役割の喪失、それに伴う社会との関わりの減少、友人・知人の死による孤立感が生まれやすい。実際、孤独感から職員と関わりを持ちたいという想いからナースコールを頻回に鳴らす患者を見た。患者の話しを傾聴し、頻回に訪室した。またコミュニケーションの途中でその場を離れるときには、離れる理由や次にいつ来れるかを説明した。また散歩などの気分転換を促し、時間の共有を図ることで、思いの表出があったため、環境を少しでも変えることは大切であることを学んだ。

 身体機能低下などから行動の制限により生きがいを失いやすい。実際、無気力な患者がいた。気分転換を促したり、できることは本人に行ってもらった。また他患者とコミュニケーションを図れるよう関わった。そうすることで患者は、活動的になり自分の気持ちの表出ができるようになった。

・家族の支援
 成人期は仕事を抱えているため、仕事場での自己管理が必要となる。また家族への指導も必要ではあるが、患者の理解力があるため患者本人への指導が特に重要となる。しかし高齢者は記銘力の低下・適応能力の低下により、新しい習慣を受け入れて継続していくことが難しいため、特に患者だけでなく家族への指導も重要となる。実際、日常生活の注意点を家族にも説明した。また家族が残存機能の活用を理解していないときには、家族が患者にどう接すればいいのかを説明した。

 高齢者は慢性に経過してしまうことが多く、今後も症状が継続していくため、家族の精神的負担が大きくなり家族へのフォローが必要となる。実際、家族から「よくならない。」などの言葉が聞かれたため、家族に患者の些細であるが良い変化や家族に対して感謝の言葉を述べていたことを説明した。家族の前では感謝の言葉がみられない患者であったため、家族は患者の想いに驚き、喜んでいるようだった。また家族の面会があると患者の表情の変化がみられることを伝えたり、家族へねぎらいの言葉をかけた。これらから患者と家族の人間関係を深めることも必要だと学んだ。
 高齢者の介護を行うのは、患者同様に高齢者であることが多い。そのため入院中だけでも介護者が休めるよう促すことも必要であると学んだ。要介護状態であっても、1度申請すれば更新は必要ないと考えていた家族がいたため、社会資源の情報を提供する必要があることを感じた。

・継続看護
 高齢者は加齢に伴い身体の機能が低下しており、多疾患を抱え多くの薬を併用している人が多い。また肝機能低下による解毒作用の低下、腎機能低下による毒性の排泄が妨げられたり、体内水分量の減少による薬物の血中濃度の増加がみられやすいため、薬物療法の指導が必要となる。実際、高齢者には視力の低下などが見られ、飲み忘れや飲み間違いを防ぐため、職員による配薬が多く、薬の自己管理を行っている患者は少なかった。自己管理している患者には、残薬確認をしたり、どの薬をいつ服用するのか、効果は現れているのかなど確認する必要があった。

 高齢者は加齢による身体機能の低下がみられるために慢性疾患に移行しやすい。そのため在宅や施設に移行しても継続した看護が必要となる。施設で療養していた慢性期の患者が、急性増悪により入院してきたときには、施設で処方していた薬の確認をしていた。在宅に移行するときには他病院・施設・訪問看護ステーションと電話や紹介状により連絡をとっていた。様々な職種・施設との連携が大切になることを学んだ。

【看護技術】
・コミュニケーション
 気管支切開患者は発語ができないため、口唇の動きで訴えを理解した。なるべくは患者の口唇の動きや身振りを見て理解するように努力したが、本当に分からないときには筆談でのコミュニケーションを実施した。

 老人性難聴は内耳(蝸牛)・聴覚伝導路(蝸牛神経)・側頭葉の聴覚中枢における生理的老化現象により起こる。特に高音域からの低下がみられるため、高い声で話しかけると患者の反応がなかったことから低い声で話しかける必要があった。難聴のある患者は同室者とのコミュニケーションが難しいため、患者同士の話の受け渡しを行った。同室者とコミュニケーションが図れることで孤独感の緩和にもつながった。

 高齢者が過ごしてきた時代背景があることから、高齢者は他人に何かしてもらうことや何か頼むことを迷惑行為と捉える人が多い。そのため、学生ということで自分の勉強になるというを説明し、援助を受け入れてもらった。また介助での移送患者でバルーン挿入時には水分摂取できていたが、バルーン抜去後は看護師に迷惑をかけるからと水分摂取をほとんどしなくなった。そのため車いすに移乗してすぐにトイレに移送できるようにしてから水分摂取を促したり、適宜水分摂取の必要性を説明していくと、水分摂取を積極的に受け入れられた。これらのことから時代背景を捉えた関わりが必要となると学んだ。

・環境整備
 高齢者は慢性疾患により長期間入院しているため、ベッドサイドを自分が一番過ごしやすい環境にしていることが多い。実際、一度転倒していても、転倒することへの意識が低く、段差や障害物があるところでは転倒するかもしれないという意識はあるが、ベッドサイドでの歩行なら大丈夫・ベッド周りは安全だと思っている患者がいた。ベッド周りでも転倒の危険があることを説明し、環境を整えた。

 老年期は環境への適応が難しいため、ベッド周りを家に近い状態に保つ必要がある。実際、家では部屋中に写真を貼っている患者がいたため写真を持ってくることを家族に促した。

高齢者は遠視になり近くのものが見えにくかったり、視野の狭窄や筋力の低下により転倒しやすくなる。実際、端座位から前屈をしてベッド下の靴を探していたため、転倒防止に靴を見える位置に置くように心がけた。またスリッパでなく靴をしっかりと履くことで転倒予防を促した。

・排泄
 尿意は膀胱壁の刺激から骨盤神経、下腹神経から膀胱中枢に通じて大脳皮質に伝えられる。しかし高齢者は加齢による刺激の伝達神経機能の低下や尿道括約筋の低下により尿失禁が起こりやすくなるため、自立歩行によりトイレで排泄する人でも、尿パットをあてている人が多く見られた。オムツをあてることは、患者の羞恥心の低下につながると考えていたが、尿失禁をすることや看護師に後始末をしてしまうことの方が自尊心を傷つけてしまうことを学べた。

 高齢者は渇中枢の低下などにより便秘傾向となる。そのため浣腸・摘便の援助が多かった。排便による皮膚のびらん観察や水分摂取を促した。

・食事介助
 高齢者は味覚の低下がみられる人が多く味の濃い食べ物を好む。また、身体的障害や疾病、薬の副作用、ストレスによって食欲の低下がおこりやすい。そのため、家族に患者の食べたいものを持ってきてもらうことを促した。

 高齢者は、渇中枢の低下により水分摂取量が減少し、体内水分量の減少や腎機能の再吸収の低下により脱水が起こりやすい。そのため、患者に活動後の水分摂取を促す必要があった。しかし、渇中枢低下や味覚の低下から水やお茶は飲みにくいため果汁やジュースなど味に変化を取り入れて摂取してもらった。

高齢者は、咀嚼力の低下、唾液分泌量の低下、口腔・咽頭・食道など嚥下にかかわる筋神経系の機能低下、注意力・集中力の低下などから嚥下機能が低下する。嚥下がしやすい体位は30度または90度とされる。しかし、患者によっては嚥下しやすい体位が違っており、その患者に応じた体位で食事をしてもらうこと、患者が食べやすいスプーンの工夫を考え実施した。また、口の中で食塊を作り嚥下しやすいように食事に変更するように間に水分を取ってもらったり、口に運ぶ1回量を調節する必要があった。

・移送・移乗・歩行介助
高齢者は、運動機能・調節機能・感覚機能の低下に加え、認知障害などの老化現象が見られる。これらは高齢者の長い生活スタイルと密接であり、個人差が大きく現れる。しかし術後のリハビリ歩行中に、他患者の術後の様子が気になって病室を見たりと他患者と自分を比較しリハビリに集中できていなかった。個人差があることを理解してもらうことが大事と学んだ。

 高齢者は1日臥床するだけで筋力が5%減少する。実際、術後のリハビリ歩行をするときに患者は歩行方法を理解できていたが、筋力の低下により実際に実施できないことがあった。患者と相談し実施可能な目標を立てて、1つ1つ段階を踏んで関わり、あせらず訓練を継続することの大切さを学んだ。
 加齢による水晶体の弾力低下に伴う視力・暗順応の低下や水晶体の混濁のため光が乱反射しまぶしさが増す。歩行訓練を行う場合には、今までの歩行習慣として下を向いて歩く患者もいる。この患者に対しては、なぜ下を向いて歩いてはいけないのかを患者が分かりやすい言葉で説明し、また、何か目標の物を患者と話し合って決め、視線を上にして歩行訓練を実施すると良かった。しかし、高齢者は遠視などの視力低下が起こりやすいため、目標のものは患者が見やすいものにすればよかった。

 高齢者の中には、筋力が低下してトイレまで歩行することができなくなったり、尿道括約筋の収縮力の低下、尿意を伝える神経系の機能の低下により尿失禁しやすいなどの理由からポータブルトイレを使用している患者が多い。そのため、ベットからポータブルトイレに移動するとき、焦って移ろうとすることが多いので、しっかりとベット柵を握り、転倒しないよう声かけをすることで安全に移乗ができると実感した。

2.受け持ち患者の看護を通しての学び
 視野狭窄による、不安が強かったため、患者との折り紙や散歩などの気分転換活動中にコミュニケーションを実施することで患者の想いの表出も見られ不安の軽減につながることが理解できた。また昔話の傾聴を行うことも、不安の軽減につながることが分かった。入院したことで、夫の介護ができなくなったため不安がある患者には、普段の言動や表情にはみせなくても、夫の面会時に夫のことをすごく心配していると感じたので、家族について話を聞いたり、不安に思っていることを話せるように関わっていくことが大切であったことを学んだ。また患者によっては、孤独感から不安が生じている人もいるため、誰かが側からいなくなると泣いてしまうこともある。そのような患者にはできるだけ側にいるようにすることや家族がなぜこれないかを説明することが必要であると学んだ。

 また家族への援助として、洗濯物だけを取りに来る家族でも、家族によっては時間を見つけて来られているかもしれないのでこのことを認め、ねぎらうことが必要であることが学べた。また家族との長年の関係を考えた上で関わることが必要であると分かった。

 痴呆があり、睡眠パターン混乱のある患者には、高齢期は午睡時間が多いことを考え、昼間の覚醒を促すだけでなく、午睡の時間を本人と決定して起こすように援助することが必要であることが分かった。また昼間お手玉・紙粘土など毎日違うことを行ったが、毎日違うことをいろいろな時間に行うのではなく、曜日・時間を決めて行うことで、時間・曜日の感覚を得ることができたのではないかということを学んだ。また痴呆から家族が事故にあったと思いこんだため不安が強く、入浴などの拒否をし、何もしない患者がいた。そのため家族に協力を依頼し、必要時には電話を使用した。高齢者では特に、一度思いこむと違うと言われても納得しにくいので、一緒に確認することで納得してもらうことが大事だと分かった。また歩行は介助歩行であるが、痴呆があることまた自分はできるという思いがあり、できないということを受け入れていない患者がいた。自分で柵をはずして、ポータブルトイレに移ろうとする行動が見られたため、抑制帯をしていた。しかし学生が関わるときは抑制帯をはずし、柵を1本抜き柵のないところに学生が座るようにすると、開かれた環境を提供することができた。痴呆のため、家族が毎日面会に来るが、「来てくれない寂しい」と訴えていた。そのため「今日は息子さんが来てくれてよかったですね」「このお花お嫁さんが持ってきてくれましたよ」などと家族の面会があったことを一日に何度も声かけをした。そのことで「寂しい」と言う回数が減少した。このことから痴呆のある患者への精神面での関わり方を学ぶことができた。また痴呆症状の悪化を防ぐために、「朝ごはんをたべていない」「物をとられた」などの失見当識や記憶力の低下により人・時間・場所を間違えて、ちぐはぐな言動をとることがあっても、言動に対して反論、説得、叱責しない。またあわてずにゆとりを持って温かく接し、環境をできるだけ変えないように調整することが、不安や焦燥感などの心理的ストレスを軽減し、見当識障害が悪化しないということを学んだ。

 指導においては、視野狭窄があり、危険の察知能力が低下することで、転倒する可能性が高い患者に指導を行う必要があった。しかし「ベッドの周りなら大丈夫」「いつもこけないから大丈夫」と言っていた。このような患者は、これまでの生活で自分の歩行に対する考え方があるため、どのように歩行すればいいかということを指導するだけでなく、患者の今までの生活・考えを考慮しながら指導を行っていく必要があることが分かった。

 高齢であることから疾患だけでなく、機能低下が起きていることを考え、急変することも考えていく必要があった。またせん妄がおきたときに環境の変化などによるものだと決めつけずに急変の兆候ではないかと考え、頻回に訪室することが必要であることを学んだ。

 慢性関節リウマチからの関節痛がある患者への、疼痛緩和への援助では、関節痛をなくすことはできないので、足浴や手浴、ホットパックなどを実施し、いかにリラックスしてもらえるかが大切であることが分かった。

 パーキンソン病により発語に関わる口唇・舌・咽頭・喉頭の運動障害から構音障害が起こっている患者とのコミュニケーションでは、発した言葉のうち聞き取れたところだけでも繰り返し言うことが、信頼関係を築いていくために必要であることが分かった。

3.看護過程展開の上での学び
【アセスメント】
 高齢者は、末梢性感覚神経の老化によって多くの感覚機能(視覚・聴覚・臭覚・味覚・触覚など)が低下するため成人に比べて反応が鈍いこと、ホメオスターシスが壊れやすく変動が大きいこと、加齢による生理機能や心身の機能の予備力が低下しているため、自覚症状がはっきりとわからない場合が多い。そのため、患者の訴えだけでなく、客観的データ(バイタルサイン、表情、言動、検査データ)を十分に観察することが大切であると感じた。

 高齢者は、今までの自分の思いや時代背景からなるべく人の手を借りないようにしてきている。そのような患者が入院することで、他人に迷惑をかけているという思いが生じ、トイレ移動やその他の日常生活の中で遠慮してしまうことが多いと感じた。こうした患者の思いを考慮するために、患者の性格や生きてきた時代背景などを情報収集しアセスメントにつなげていくことが大切であると感じた。

 患者の全体像を把握し個別性を考慮した看護介入を実施するために、患者の生活歴・家族歴・価値観・性格・生き甲斐・趣味などを把握していくことが大切だと学んだ。

 加齢による物忘れや痴呆などから、患者の正確な情報を把握するために患者だけでなく家族にも確認していくことが大切であると感じた。
在宅に帰ることも考え、介護認定を受けているかやどのくらいの社会資源の知識を持っているか、家族との関係についての情報も必要になってくると考えた。

 清拭や足浴など様々な援助をしながら患者とコミュニケーションをとっていくことで、重要な情報を収集することができた。
援助やバイタルサイン測定時などに、昨日と違い(患者の身体的なことや雰囲気など)などの小さな変化に気づき、情報収集をした。
アセスメントをする時は、疾病に関することや薬物療法による副作用などを考えていたが、加齢による身体的機能の低下、社会的役割の喪失に伴う社会参加の減少、友人など身近な人の死から自分の死への恐怖、これらに伴う孤独感などをふまえたアセスメントに目を向けることができていなかったので、目を向ける必要があった。

 高齢者は、家庭状況や金銭的な理由から十分に社会資源を活用できないこともある。そのため、患者がどの関係法規により入院費を支払っているかなど経済面の情報をとり、経済的に負担がかからない方法をアセスメントしていく必要があった。

【診断】
 患者の健康問題を立案していく中で、疾病や治療、加齢による身体機能の低下などから身体面の診断が多かった。だが、高齢者にとっては家族や地域との関わりが大切になってくるため、家族を含めた診断をする必要があったと感じた。

【看護計画】
 痴呆の患者に対して、教科書では、接する時に高齢者の言動に対し反論、説得する態度は取らないこと、あわてずにゆとりを持って温かく接すること、環境をできるだけ変えないように環境調整をすることなどがあった。しかし、実際に患者と関わり環境が変わると不安を訴える人が多いと感じた。不安や焦燥感などの心理的ストレスにより、見当識障害が強くなるため、環境調整の大切さを学んだ。不安を訴える場合にはゆとりを持って接することで患者も安心しやすいと感じた。また、痴呆があるからといって患者の訴えを軽視してないがしろにしないこと、さらに、その訴えが事実なのか、それとも痴呆から生じる症状なのかを判断し、適切に対応をしていくことの必要性を学んだ。

 回復期にある高齢者の目標として患者の残存機能を生かし、今後安定した生活を送ることができるように、セルフケアを少しでも拡大できるような目標を立案した。

 高齢者は、現病歴・既往歴などの様々な疾患を抱えて、慢性的な経過をたどることが多い。受け持ち患者の中には、慢性期の中の急性増悪期のため手術を受けた患者がいた。術後には、加齢による身体的機能の低下、手術による身体浸襲のため合併症が起こりやすく、術前から訓練を行い合併症を予防することの大切さを感じた。また、精神面では手術による不安・環境の変化・加齢に伴い適応力が低いなどの理由から、せん妄などの症状が生じると考えられるので、術前からICUの看護師や医師と関わる(顔見知りになっておく)機会を作り、慣れておくことが必要であると感じた。

【実施】
 個別性を考慮した援助を行う場合には、こちらから一方的に援助するのではなく、患者が今何を必要としているのか、何を望んでいるのかを把握し、共に考える時間をもてるような環境を作ることの大切さを学ぶことができた。

 高齢者は慢性期の疾患を抱えているため、長期入院をすることが多く、社会・家族とのふれあいが少なくなったり、生き甲斐や日常生活への意欲の低下により単調な生活を送ることが多い。そのため、活動力が低下し寝たきりになったり、痴呆症状が現れてくることがある。他患者や家族とふれあう機会を多く持ったり、生活の刺激が感じられるように気分転換(散歩・興味を持っていること)もとり入れていく必要がある。

 高齢者は記銘力が低下しやすいため、一度説明したことを忘れやすいので、相手にとって使い慣れた言い方をしたり、パンフレットやボード、ポスターなどを用いて分かりやすい文字の大きさで表し、いつでも再確認できるように工夫した。

【評価】
 患者の中には、日・時間によって援助を拒否したり、受け入れたりと気分が変化しやすい患者がいた。そのような患者に対して、援助実施前に患者に実施して良いか確認することで、患者が望む時間帯に援助の実施ができた。

 患者に確認することで自己決定を促し、患者の尊厳を守ることができた。
高齢者は疾病に対する不安、死に対する不安など様々な心理を抱くことがあり、患者は直接言葉で不安を表出しなくても患者は不安を表していることがある。そのため、普段との違い(言動、表情、バイタルサイン値など)を把握し、こちらから患者の小さな変化に気付くことが大切である。

 高齢者は加齢による適応能力や回復力の低下により慢性的に疾患を抱えやすい。そのため、何週間という短い期間では援助などの効果は現れにくいということを学んだ。

 高齢者は記銘力の低下、適応能力の低下などにより一度理解したことでも忘れることがある。そのため繰り返し説明し、毎日説明・確認を継続して行うことで高齢者に理解を深めてもらうように関わることの大切さを学んだ。


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