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臥雲県-ただ一つの森の中-
第十三説 前半
午前9時。いつもは午前7時には起きているのどかが目を覚ました。猫無達よりだいぶ先に就寝したはずののどかでも、昨日の騒動はさすがに疲れたらしい。ふと、横を見る。
「(猫無君っ・・・。な、なんで隣で寝てるの!?)」
のどかは飛び起きた。
「(ど、どうしよう・・・。)」
ふと、のどかは猫無の寝顔を覗き込んでしまった。
「(かわいい。・・・えっ!?)」
急に身体がいうことが聞かなくなる。
「(えっ・・・ちょ、ちょっと!どうして!?)」
寝ている猫無の顔にのどかの顔が近づいていく。
「(ちょ、ちょっと!!ダメ!!たしかにキスしたいけど・・・)」
そんな考えがのどかの頭をよぎる。その瞬間、身体の動きが早くなったような気がした。
「(ダメ!ダメなの!!お願いだから動いて!!)」
もう気付いた時には猫無の顔がほんの数センチのところに。そこで身体の動きが止まる。
「(・・・ばれなきゃいいかな?)」
あまりに猫無の顔が近すぎて、自分のちゃんとした考えをもてなくなっていた。
「(・・・えっ!?なに!?なんでのどかの顔がこんなに近いの!??)」
猫無が目を覚ます。しかし、あまりに突然の出来事に動けずにいた。
「(ど、どうしよう・・・)」
とりあえず薄目でのどかの顔を見る。こんなに近くでのどかの顔を見たのは初めてだった。ものすごく心臓がバクバクしている。それはのどかもいっしょだった。
「(猫無君・・・私のファーストキス受け取ってください。)」
自分の意思で途中で止まっていた身体を動かす。
「(えっ!?なに!?マジで!!?寝ぼけてんのかな!?でも、ラッキー♪)」
どんどん唇と唇が近づいていく。2人とも心臓が破裂しそうだった。
「(猫無君・・・)」
「(のどか・・・)」
マジでキスする5秒前。
「いっけー!!!!!」
「「(!!?)」」
部屋の隅で声がした。その声でのどかは正気に戻り、猫無の顔から離れる。急にものすごく恥ずかしくなってきた。とりあえず、布団にくるまる。おそらく顔は真っ赤であろう。身体中が熱い。
「(どうしてあんなことをしてしちゃったの?勝手にキスしようなんて、女として、いえ、人として最低。)」
そう思うと涙があふれてきた。
「(ったく・・・だれだよ邪魔したのは・・・。)」
もちろん薄目であたりを見渡す。部屋の隅で顔の前で手を合わせて、あきらかに猫無に向かって頭を下げている水草先生がいた。
「ごっめ~ん!許して!」
小声で猫無に話しかけてくる水草先生。猫無が起きていることに気付いているらしい。
「「「くすくす・・・」」」
周りから笑い声も聞こえた。他の人たちも起きていたことを知っていたらしい。しかし、猫無は寝たふりを続ける。水草先生は猫無に謝ったあとすぐさま、のどかのところへ向かった。
「のどか。ごめんね。」
「ぐすっ・・・。」
「えっ!?猫無君とキスできなかったのがそんなに悲しかったの!?」
布団の中でのどかの涙が止まる。
「ち、違うよ~。勝手に・・・キスしようとしたから・・・。」
「で?」
「人として・・・最低だって・・・」
「いいじゃない。チャンスだったんだし。」
のどかは言葉をなくし、布団からキョトンとした顔を出した。
「チャンスは自ら掴み取らなきゃ!!」
水草先生はのどかに向かってガッツポーズをする。
「さぁ!もういっちょ!いってみよう!!」
のどかの手を引っ張る水草先生。だがそれを嫌がるのどか。
「ダメです!」
「なんでさ?」
「私はちゃんと猫無君に自分の力で振り向いてもらうんですから、そんなことしちゃダメなんです。」
「・・・そ、そう。」
少し驚いたような顔でのどかの手を離す。
「なんか私がすごく悪者みたいじゃない。」
「悪者じゃないですか。」
のどかが微笑んだ。それに少しむっとする。
「なんだと~?この~このこのこの~!!」
「あっ・・・いや・・・そ、そこはいや~!」
水草先生はのどかをくすぐる。微笑ましい光景。その間にラキ、幽海、雪は支度を始めた。猫無は未だ寝たフリを続ける。
「いや・・・」
もうくすぐられすぎて、息ができなくなっているのどか。それでもやめようとしない水草先生。のどかはめずらしく必死で抵抗している。ラキ達はもう仕度が済んでいた。
「そろそろいくかぁ~」
だるそ~にしているラキ。
「え゛!!?ちょっとまって!!今、仕度するから!!!」
水草先生はのどかから離れ、急いで身支度を始める。
「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
のどかは死にそうになっていた。ものすごく荒い息遣い。そのなかで身支度をしはじめる。
「さぁいくかぁ~」
さっきからいくかぁ~としか口にしていないラキ。よっぽどだるいんだろう。
「ねぇ、くういいの?」
猫無がまだ寝たふりをしていた。未だ出るタイミングを見計らっている。
「ほっとけ。てか、あいつバカだろ。」
「あ、うん。」
ラキが1214号室のドアを開け、出て行く。ラキの後に続き、続々部屋からでていった。ベッドの上で猫無が跳ね上がる。
「ちょっとまってよ!!」
特になにもない猫無は、身支度などせずに、いったん閉じたドアを開ける。
「マジでおいてくとか、もう皆、絶交・・・だ?」
ドアを開けたその先で皆、立ち尽くしていた。
「なっ・・・なにしてんだ?」
ラキが誰かに話しかけている。ラキ、雪の身長が高いせいで誰がいるのか見えない。
「ねぇ~」
とりあえず誰に向けてというわけじゃないが、声をかけてみた。しかし、よっぽど驚いているのか、誰も返事はしない。
「ねぇ!!」
強く声をかけた。その返事はまったく予想していないところから返ってきた。
「おっ!猫無!久々。」
聞き覚えのある声。
「誰だよ?」
「んだよ。忘れちまったのか?ひでぇな。」
どうしても思い出せない。
「むらさん!!」
幽海が突然叫んだ。
「(むらさん?村雨だ!)村雨か!!?」
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