NOVELS ROOM

part8





さて、試練の開始だ。
そう、心の中で呟き、小型の液晶マップを見る。すると、一カ所だけ赤く点滅していた。合格をもらわないと、次に進めないのはホントのようだ。しかし、地図が細か過ぎて正直どこだか判らない。子供にも判るように、見やすくしろっての。
そんな事を思いながら、表示されている場所を突いてやった。するとどうだろう。僕の周りが光り出して、その光が一瞬強くなったかと思うと、すでに違う場所にいた。一瞬だったので、状況があまり掴めなかったが、つまりをいうと、この小型の液晶マップは簡易転送装置だったということになる。

着いた場所は、一見普通な場所のはずなのだが、見た目が殺風景すぎる。どこかの空き地なんだろうか、そこに生えている木は10%も満たないぐらいの数しかなかった。しかしこんな場所が僕の住んでいる地域にあったのであろうか。まぁ、すべての地域の事を知っているわけじゃないし、そもそも地図にちゃんと表示されたわけだし、この場所は実在しているものだとわかる。

「やぁ、キミがリース君だね。」

前方に、僕と同じような服装の男が現れた。おそらく彼は、ヴァリスの率いる親衛隊の一人なんだろう。
腰には、小型ナイフをつけている。きっとあれが武器なんだろう。
クロアが鎌の姿に変わり、僕はそれを両手で持ち構える。すると、相手の死神は呆れた顔で僕を見つめてきた。何か僕、間違った事したのかな。

「もう戦闘モードかい?無茶はしないことだよ?」
「何言ってるんだ。試練はもう始まっているんだろ!?だったら早く済ませてほしいものだ!!」

多少イラついた言い方で、その死神に言ってやった。しかし、向こうは何も驚きもせず、棒読みで「お~こわ。」とだけ呟いただけだった。
何だか、この態度ムカつく。すぐにぶっ倒してやりたいぐらいだ。

「ヴァリス様から説明は聞いてるはずだよね?」
「戦って勝てばいいんだろ。」
「まぁ、そうだけど・・・。」

「そのままの状態では戦いづらいよ。」といい、僕に掌に収まるほどのカプセルを投げてよこしてきた。突然の事だったから、そのカプセルを落としそうになったが、何とかキャッチした。ちなみに、それと同時にクロアがもとの縫いぐるみの姿に戻って肩に垂れ下がる。
カプセルをあけると、光の玉が出て来て、自然と体の中に入っていった。この死神から言わせれば、今の光の玉は魂のカケラだそうだ。そして、僕の体に能力が宿る。
しかし、違和感を感じない。というより、変化がまるでみられない。だから何もないのかと、相手となる死神を睨んでみた。ヴァリスが驚く感じに、その人も同じように何か恐ろしいものを見たように驚いた。本当に怖いらしい、僕の顔は。
毎度毎度言うけれど、鏡をみないかぎり自分の表情がどうなっているかなんて、やっぱりわからない。

「た、たぶん、回復能力か能力向上なのかもしれないね。」

あぁ、そうか。それなら納得。
そう思いながら、睨み付けるのをやめると、相手は安心したように胸を撫で下ろしていた。全く、僕の顔はどれだけ怖いんだよ。
とにかく、能力がついたみたいだし、さっさと始めて次に進みたい。
先程カプセルを渡されたとき、縫いぐるみの姿に戻って、肩に垂れ下がっていたクロアを抱き、軽く飛ばす。シュンッという音と共に、クロアは大きな鎌に変わり、僕はそれを握る。そして、刃先を相手に向ける。軽い挑発だ。
別に、目の前にいる死神を倒そうとは思わない。合格を貰えばそれでいい。最初はそう思った。だけど・・・

「早く始めようよ。あんたをブッ倒して、次に進まなきゃならないんだから。」

もう、軽い挑発だなんて言えないセリフを、僕はサラッといいのけていた。
もう、このセリフを吐いた僕は、本気モードだ。相手は冗談のように聞こえたらしく、呆れた口調で「わかったよ。」と呟いていた。そして、そのセリフの後すぐに、両腰のホルスターから小型ナイフをとりだし、一気に接近してきた。突然の事だから、避けることは当然無理。

―ガキィイン!!

小型ナイフで切り付けようとしたところを、鎌でうまくガードした。しかし、相手の力はさすが親衛隊の一人だと言わせてくれるほど強い。グググと押されてる。やっぱり、能力向上しただけでは、相手を簡単に倒せないということか。
何とか相手を押しのけ、今度はこっちが斬り掛かる。しかし、呆気なく避けられてしまう。無理もない、戦闘スキルなんてこれっぽっちも持っていないんだから。

「本当に死神になりたいなら、本気でむかってこないとね。」

背後から声がした。ベタな展開でいうと、振り向きざまに斬られるわけだが、僕は違った。突然体が勝手に動き、逆に相手の背後を取っていた。何が何だかさっぱりだが、ここで能力が発揮されたと僕は思う。とにかく、これは有利だと思い、鎌をおもいっきり振り下ろした。

―キィイン!!

まただ。またあの小型のナイフで受け止められた。しかし、今度は僕が押している。
そして、小型ナイフを鎌で弾き飛ばした。これでフィニッシュだ。もう一度、相手に向かって鎌を振り下ろした。
しかし、その勢いはギリギリのところで止まった。僕が自分で止めたわけじゃない。クロアが僕の動きを止めたのだ。

「クロア!何で止めるんだ!!」
「こうちゃん、落ち着いて!!別に殺さなくたっていいじゃない!!こうちゃんの勝ちだよ!!」

クロアにそう言われ、僕は冷静になってギリギリの位置にあった鎌をどかし、その鎌は縫いぐるみの姿に戻る。
確かに殺さなくても、合格を貰えばそれでいいはずだ。この鎌がクロアじゃなかったら、間違いなく相手の死神を殺していたところだ。なのに、僕は一体どうしてしまったのだろうか。
考えるのはやめておこう。頭が痛くなりそうだ。
しかし、これが僕の精神を狂わせる前兆だったなんて、知るよしもなかった。

「その喋る縫いぐるみの言うとおり、君の勝ちだ。合格だよ。」

その死神はそう言ってから、僕に小型液晶マップを渡してくれないかと言ってきた。
小型液晶マップを渡すと、何かを操作仕出した。別に難しいことをしているわけではないが、動き的にマークを書いているようなそうでないような・・・よくわかんないや。

「はい、これで次の場所に行けるようになった。次のやつも手ごわいから頑張ってくれたまえ。」

はっはっはっ!
そういいながら、僕の頭を撫でてきた。負けたくせに、馴れ馴れし過ぎてうざい。そんな気持ちを読み取ったのか、クロアが再び鎌に変身し手に納まる。
そして僕はこう言う。

「あんまり馴れ馴れしくすると、あんたの事殺すよ?」

そういうと、死神は僕の顔を見るなり、多少怯えて頭を撫でるのをやめた。自分の表情がどうなっているか、未だにわからないけど、これはクセになりそうだ。
クロアがもとの縫いぐるみに戻り、頭に垂れ下がる。そして、「それじゃ、僕は行くから。」と言葉を残して、小型の液晶マップに記されている次の場所を突き、その場を後にした。

次の場所も、その次の場所も、力を上げ合格していった。そのたび、戦うのが楽しくて仕方なくなっていた。だって、僕は確実に親衛隊よりも強くなっているんだもの。
そして、僕は最高の能力を身につけることになる。
最後の親衛隊の一人は、ヴァリスの右腕となるぐらいの実力らしい。そんなの知ったことではない。彼から渡された魂のカケラを体の中に取り込むと、何だか不思議な気分になった。その魂のカケラが、僕に語りかけているような・・・そんな感じがしたのだ。能力が強まった感じも、伝わってきた。
僕に宿ったこの能力、これがあれば最強になれる。そう思って、すぐに戦闘を始めようとせかした。
そして、戦いが始まる。だかその数秒後に、僕が相手を押していた。向こうも必死に僕に攻撃してくるけど、それらはすべて止まって見えた。つまりをいえば、僕は100%技を避けていたって事だ。

何だ・・・こんなものか・・・つまらないな・・・。

僕は瞬時に移動し、背後にまわる。鎌を勢いよく振り下ろし、背中を斬り裂いた。そこから吹き出る血が、僕の顔にかかる。そして、すぐに鎌を持ち直し・・・

―グシュ!!

深々と刺してやった。
今回ばかりは、クロアは僕の事を止めることが出来なかったようだ。そして、そのままの状態を保ち、何かを念じる。不思議と力が体にに流れ込んでくるのがわかる。

「ぉ、お前・・・何を・・・?」
「フフフ・・・すぐにわかるよ。」

僕に宿った能力、それは、相手の力を吸い取ることが出来るものだった。ただ、普通は鎌を刺したりなんかしないはずなのだが、僕の状況を見るかぎり、すでに精神が狂い始めているというのがわかる。
だんだん力が体に流れ込み、その度に相手は苦しそうにうめき声をあげる。僕は、そんな相手の状態を見ながらクスクス笑う。だって仕方ないよ、楽しいんだもの、嬉しいんだもの。
そして、ほとんどの力を吸い取り、相手の背中に刺さった鎌を勢いよく抜き取り、蹴り飛ばしてやった。飛ばされた相手は、身動きが取れないほどまで弱っていたが、僕はさらに近付き踏み付ける。

「ねぇ、僕は合格なんだよね?」

力強く踏み付けながら、僕は相手に問う。弱り果てた相手は、うまく話すことも出来なくなっていた。
しかし、そんなとき何かのベルがなる。携帯電話のような通信機の音だ。その音は、今僕が踏み付けているヤツから聞こえる。懐を探し出し、通信機のスイッチを押す。

『おい、緊急ボタン押したみたいだが、どうかしたのか!?』

通信機からヴァリスの声がした。
・・・緊急ボタン?コイツいつの間にそんな事を・・・。

「ヴ・・・ヴァリス・・・さ・・ま・・・。」

『おい!声が遠いぞ!?ホントにどうしたんだ!?』

「こ・・・この・・・しょ・・・う・・ねんは・・・危険・・・です・・・。」
「余計な事いってんじゃねーよ!!!」

―ズシュッ!!!

「ぐわぁあ!!」

虫の息であろうヤツから足をどけ、とどめと言わんばかりの勢いで斬り付けた。
再び、大量の血が僕にかかる。

『おい!!何が何だって!?』

ヴァリスが必死な声を出して呼び掛けている。そんな声のする通信機に向かって僕はこう叫んだ。

「ヴァリス!!今からテメェをブッ倒しに行くからな!!覚悟しとけよ!!」

そう叫んだ後、通信機を地面に向かって叩き付けた。通信機はものの見事に破壊され、部品が辺りに散った。
そして、ピクリとも動かないヤツを眺める。血がヤツの周りに広がっていた。動かないというならば、コイツは絶命していると考えてもいいな。
そう考えていると、ヤツから光の粒子が出始め、それが天に向かって昇っていった。それと同時に、ヤツの体は半透明になりだし、光の粒子がすべてヤツから出ていくと、そこには体も、周りに広がった血も、ヤツの武器も、何もかも消えてしまった。

「ふ~ん…死神も死ぬんだね。」

そう言葉を残し、僕は小型液晶マップに印された場所を突き、ヴァリスのいる場所に向かう。
小型液晶マップは簡易転送装置のようなものなので、すぐにその場所につく。その場所とは、僕が飛び降りた場所――つまりをいえば、小学校だということだ。
目の前には、すでにヴァリスが真剣な眼差しで僕を見つめている。

「おい、さっき何があった?俺の部下に何をした!?」
「何が?・・・あぁ、さっきのヤツの事か・・・殺したよ。」

最後のセリフだけ強調して言ってやった。
既に僕の精神は100%狂っていると考えてもいいぐらいだ。「殺す」という単語を、何でもないようにサラっと言いのけているのだから。たぶん、表情も今までより怖くなっているはずだ。その証拠に、ヴァリスが非常に怯えている。

「『何故?』って顔してるみたいだね。だって、弱かったし、僕が強くなるためには仕方なかったのさ~♪」

いいながら僕は、顔に付着した血をぺろりとなめる。
そう、僕は強くなるんだ。ヴァリスよりも強くなって、最強の死神になるんだ。

「お前・・・どうかしてる・・・最初の頃のお前はどこに行ったんだ!!」
「どうかしてる?どうだっていいじゃない・・・とにかく始めようよ・・・サイコウノコロシアイヲサ・・・!!」

今までにないほどのおぞましい顔をしたんだと思う。ヴァリスの表情がそれを証明している。
とにかくその言葉を境に、鎌に変身したままのクロアを構え、そのままヴァリスに突っ込んでいった。当然の事ながら、避けられてしまう。さすが、大魔王の息子だ。
しかし、そんな肩書、この僕が葬り去ってやる。
避けられたところを、さらに斬り掛かる。だが、これも避けられてしまう。僕が諦めると思って、何度も避けているのだろうか?そんな事しても、僕は絶対に諦めない。攻撃があたるまで、何度だって斬り掛かってやる。しかし、何度斬り掛かっても、ヴァリスにはあたらない。だったらこれはどうだ。
僕は切り掛かるふりをして、赤い斬激を放った。その斬激を見抜いたのか、ヴァリスが避ける。馬鹿め、それはフェイクだ。避けた先には僕が待ち構えている。
ちなみに、斬激を放った後、ヴァリスが避けるであろう場所を位置している。その場所に回ったら、結構なほどドンピシャにはまってくれる。

―ズシュッ

鎌を振り下ろし、一気に斬り裂いてやろうとしたが、ヴァリスもそんなに馬鹿ではない。しかし、ヴァリスの肩を傷付けてやることが出来た。これならうまくは戦えないだろう。
しかし、ヴァリスは肩の傷を気にもとめていないかのように、僕に向かってきた。予想外の動きに、僕は戸惑う。だが、ここで戸惑ったら僕が負ける。すぐに戸惑いを捨て、次の行動に出る。
ヴァリスが小型の鎌2本で斬り掛かるところを寸前で避け、何発かランダムに斬激を放つ。これは動きを鈍らせるためだ。すぐに動きが鈍くなるとは思っていない。だけど、徐々に鈍らせていけば、僕の勝ちだ。
何発か斬激を放っていると、ヴァリスがだんだん疲れを見せてきた。これはいいチャンスだ。斬激の威力をあげていき、さらにヴァリスの動きを鈍らせる。

もう少し、もう少しだ。ヴァリスに斬激が掠る感じになるまで。

そう思いながら、ヴァリスに向かって斬激を放っていると、バランスを崩し斬激を直に受け、吹っ飛んでいた。
あまりにも予想外だ。掠るだけだと思ったのに、直撃って・・・でも、これは2度目のチャンス到来だ。後ろに回り込み、ヴァリスの背中にそっと手をあてる。その時、ヴァリスの体がビクッと震える。

「ヴァリス・・・背後をとったの、これで2度目だね。」

そういった僕に、ヴァリスは視線だけをこちらに向けた。

「な、何をするつもりだ・・・?」

ヴァリスは非常に怯えた声を出した。だってそのはず。動いたら、僕にやられるんじゃないかって思ってるんだもん。だから、この状態から動こうとしない。

「ヴァリスの部下と同じ事をするのさ。」

そう言って、片手に力を集中させる。
すると、力がだんだん体の中に流れ込んでいく。そのたびに、嬉しさが高まってくる。何せ、死神一最強の力が手に入るのだから。
そして、ほとんどの力を吸い取ると、ヴァスはゆっくりと倒れていった。

「か・・・体が・・・動かない・・・。」
「当然さ。僕がお前の力を吸い取ったからね。」
「な、何だって・・・?」
「安心しなよ。お前の部下みたいに殺したりはしないからさ。そのかわり、僕の部下になってもらうよ♪」

「で、僕は試練に合格したんだよね?これから死神なんだよね?」と、おぞましい表情のままヴァリスにたずねた。
そんな僕を見て、ヴァリスは怯えながら小さく頷いた。

やった・・・ついに・・・

「ついに・・・死神になれたんだ!!最強の死神に!!ヒャハハハハハハハハハ!!」






「そして、今の僕がいる・・・って、そこのアンテナ!ちゃんと聞いてたのか!?」

ようやくリースの過去話が終わり、寝転んだ状態からゆっくりと欠伸をしながら起き上がった。一緒に寝転んでいた平次郎も、大欠伸でのびをしている。
つーか、アンテナって・・・このアホ毛のように出てる髪の事をいってるのか?

「この髪はトレードマークだ。」
「で、聞いてたのか!?聞いてなかったっていったら、そのアンテナみたいなアホ毛むしり取るからな!!」

それはやめていただきたい。別にむしり取ったら死ぬ何て事はないが、俺の大事なトレードマークを取られるのはごめんだ。
とりあえず、リースが人間だったって事はわかった。死神の中で一番強い理由もわかった。だけど、質問したいことがまだ一つ残ってる。

「なぁ、俺以外に試練を受けたやつって、お前の事なのか?」

まずこれが一番聞きたかった。リースだって、試練を受けたからここにいるわけなんだし。

「は?」

いかにも、「何をぶっこいてやがるんだ、このアンテナは。」とでも言いたそうな顔で俺を見てきた。たぶん、俺が間違ったことを言ったのだろう。しかし、間違いは誰にだってあるはずなのに、その態度はないだろ。

「君、それでも、二十歳前の人間かい?」
「黙れクソガキ。」
「僕は君より年上だ。」

おっと、そうだったな。俺が生まれる前の話って言ったもんな。
・・・ということは、リースの本体は20年以上も眠っているということになる。つまり年齢的に、

「そうか!お前、三十路超えてるのか!!」
「黙れアンテナ!!僕はまだ28だ!!」

あと2年で30じゃないか。
とりあえずそれはいいとして、リースの過去話の、どの辺りで俺が生まれたのかは判らないが、正確には19年眠っているということだな。
って、本題はそこじゃない。俺が知りたいのは、俺の前に魂の試練を受けた人が誰なのか、という事だ。リースでないとなると、一体誰なのだろうか・・・

「とにかく!!話は終わりだ!!いくぞアンテナ!!」

リースがいきり立ちながらパチンと指を鳴らし、俺に向かって鎌を構えて突っ込んできた。斬り掛かったところを寸前でよけ、拳銃を出し一発ずつ放つが避けられてしまう。周りをよく見れば、さっきリースが指を鳴らしたので、時間が動き出していることがわかる。そんな余裕を奪うかのように、リースは目の前まで迫り斬り掛かるが、また斬られる前に避ける。避けた勢いを借りて、平次郎が変身しながらリースに飛び掛かるが、柄の部分で突き飛ばされる。
次いで、赤い斬激を飛ばしてきた。どうやらホントに、休む暇を全く与えないようだ。何発ものの斬激が飛んでくる。それを確実に避け、もう1つ拳銃を出し乱射。しかし、これもすべて避けられてしまう。

「なかなかやるね。予想通りの強さで、僕嬉しいよ。」
「いきり立ったくせに、結構冷静なセリフだな。」

それよりも、話が逸れた状態で戦闘が始まったから、さっさと話してほしいわけだが、言っても聞かなそうだよな。でも、ここは駄目元で聞くのも手だよな。
とにかくさっきの質問を、もう一度聞いてみることにしだのだが、

「時間を進めたんだ。話してる余裕はないよ。」

だそうだ。気になるが、ここはリースに勝ってから・・・

「おい、ちょっと待てよ。戦うはいいが、俺が勝ったらどうなるんだ?」

そんなセリフを聞いたリースは、「おっと、そうだ忘れてた。」といって、再び指をパチンと鳴らした。俺のデジタル時計は3時3分33秒で止まっていた。「3」ぞろいだな。
しかし、そんな事も忘れて、いきり立って襲ってくるとは、なんて自分勝手なやつだ。だが、そんな事は断じて口に出して言わない。

最後の試練内容は、リースから鍵を奪うことらしい。何の鍵かと聞けば、本体の体に戻るための鍵だそうだ。普通の魂だったら、すぐに体に戻れるのだが、俺のようなやつは、普通に戻ろうとしても、扉に鍵がかかっているため、体の中に入ることは出来ないらしい。

「どうだい、簡単に説明したつもりだから、解ったはずだけど?」
「あぁ、解ったよ。」
「じゃ、続きを始めよう~♪」

パチンと指を鳴らし、すぐに突っ込んで来た。ついでにさっきの事を答えてほしかったのだが、自分勝手なリースには不可能な事だ。何度も斬り掛かってくる。その表情はとても・・・とまではいかないが、恐ろしい笑顔を作っていた。
だが、そんな表情だけでは、俺はうろたえない。リースは、別に表情だけで脅そうとして、あんな感じになっている訳じゃないと思う。ただ、戦いたいという本望に比例して、あのようなおぞましい笑顔になっているのだと思う。あのままじゃ、いずれ自分自身を制御できなくなるかもな。そうなる前に俺が止めて、一緒に自分の体に帰らせる。
リースの攻撃を避けながら、そう思考を巡らせていた。

「避けてばかりいるんじゃねぇよ!!つまんねぇだろうが!!」

口調も段々変わって来た。やばいかもな。
攻撃の仕方も、結構単純になっている。だが、勢いだけは全くと言っていいほど、落ちている気配がまるでない。まるで、戦いだけを望む戦闘兵器のようだ。
だが、ホントに避けてばかりじゃ全くキリがない。リースが持っているだろう魂の扉の鍵を奪うには、どう仕向けたらいいものだろうか。普通なら、この一方的な攻撃の仕方には、必ず隙が見えるはずなのだが、リースの場合、攻撃自体が早過ぎて、隙なんて見えやしない。まぁ、自分でいうのもなんだが、その早過ぎる攻撃を避けている俺は凄いと思う。
そんな事を考えていたら、いつの間にか柵に背中が当たった。普通にピンチだ。リースが思い切り鎌を振り下ろすが、日本刀を2本だし、それを受け止めた。だが、一発だけでは飽きたらず、何度も何度もたたき付けるようにして斬り掛かってくる。ガンッ、ガンッ、とたたき付けるため、日本刀を持っている両腕が痺れてくる。避けようとするのだが、すぐにまた攻撃が来るので、よける余裕もない。

―バキィィン!!

何度もたたき付けられたため、日本刀が折れてしまった。斬られないように咄嗟に避ける。しかし、リースの攻撃はまだ終わった訳じゃなかった。おぞましい笑顔のまま、巨大な斬激を放って来たのだ。何とか避けようと、ランスを使って体をひねる。しかし、それだけでは完全に避けることは出来なかった。斬激が左腕に当たってしまったのだ。

「がああぁあぁあ!!!」

あまりの痛さに、叫び声を上げてしまった。腕が突然折れたような痛みだったからだ。実際、左腕は骨折はしていないものの、痛くて動かせないため、使い物にはならない。

「ほぉら、言わんこっちゃない・・・避けてばかりいるからそうなるんだ。」
「そう・・・だな。」

腕を押さえ、痛みを堪えながら俺はそれだけ呟いた。でも、他にも言わなきゃならないのに、腕の痛みのせいで、それが遮られてしまう。何とか快復させようと、腕を押さえた状態で自己快復を行うが、逆に痛みが悪化したような感じに襲われる。

「快復しようとしてるみたいだけど、無理だよ。そんなちゃちな快復じゃ、治らないから。」

あぁ・・・それで痛みが悪化したような感じになるのか。納得・・・じゃねぇ。
このままじゃ、俺が一方的に不利じゃないか。しかし、リースを傷付けたくはない。一緒に帰るんだ。自分の体に。
とにかく、痛みをなるべく忘れるようにして、戦わなければならない。普通の人間なら、絶対に無理だろう。だが、今の俺なら痛みを忘れることぐらいできるはず。
右手でランスの柄を握りしめ、そのままリースに向かって突っ込んだ。右腕の勢いだけで、突き刺すようにするが、鎌でガードされる。それも当然だ。左腕が使えない以上、右だけで押さえ込むのは難しすぎる。しかし俺は、両手でランスを使っているかのように、リースを押し退けようと、力を加えていった。
そして・・・

―キィイン!!

ランスで鎌を跳ね飛ばした。そして、刃先をリースの首に近付けた。「動いたら刺さって死ぬ」というやつだ。今いる場所から、7m離れたところで、鎌の落ちる音がした。目をそちらに向けると、鎌が黒い熊の縫いぐるみに変わった。そして、ムクッと起き上がり、こちらを心配そうに見つめていた。
目線をリースに戻し、俺はこう言った。

「リース、お前の負けだ。鍵を渡してもらう。」
「・・・・・・。」

リースは俯いて暫く黙っていたが、突然何かを呟き出した。

「・・・ける・・・負ける・・・この僕が負ける・・・?」
「・・・?」
「最強のこの僕が負けるだって・・・?ありえない・・・ありえないんだ!この僕が負けるなど、絶対にありえないんだぁあああぁあ!!」

リースがそう叫ぶと、赤黒い光りがリースの体から放たれ、その光りに吹っ飛ばされた。
しかし、一体リースに何があったというのだろうか。まさか・・・

「あれは力の暴走だな。」

突然聞き慣れた声がした。隣を見ると、ヴァリスがいたので、少し驚く。
とりあえず、やっぱりあれは暴走だったんだな。赤黒い光りがおさまると、リースは俯いてクスクス笑っていた。そして顔をあげると、今までにないほどの、おぞましい笑顔がこちらを見つめていた。

「・・・フフフ・・・消してやる・・・消してやるよ・・・何もかも全て・・・消してやるよ・・・!!!」


―現在時刻 3時8分 タイムリミットまで 後52分―


続・・・

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