HP de るってんしゃん

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2006.12.10
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カテゴリ: 伊坂幸太郎
近々文庫化、来年映画公開と最近話題の多い 『アヒルと鴨のコインロッカー』(東京創元社) 。伊坂幸太郎がデビュー後に初めて獲得した文学賞、吉川英治文学新人賞を2004年に受賞した記念すべき作品である。

初めて読んだ時よりも、2回目に読んだ時の方がより感動した。なんでだろ。結末も叙述トリックも知っているのに。なんていうのかな、他人が書いた本なのに自分の日記をめくっている感覚?約1年前に1度読んで知った椎名や河崎やドルジたちの物語の記憶が、いつの間にかに、まるで本物の思い出のようになって自分の中に染み付いていたみたい。本を読み返していくと“あの時のことを思い出した”ような気がした。

さて、あらすじは出版社の東京創元社のHPから拝借すると・・・


清冽なミステリ。


へ~、「清冽なミステリ」だって。せ、清冽て何だろ・・・えーと、広辞苑によりますと『水が清くつめたいこと。例「―な泉」』だそうです。え?どういうことだろ。清く澄み切った感覚・・・ってことかな?え、いいのかな?うん、分かるような、気はするよ。でも広辞苑、この説明で大丈夫なのかな。外人が日本語を勉強する時に使うのには、なんだか向いていないような気がするよ・・・?

さて、 『アヒルと鴨のコインロッカー』 の有名な目玉と言えば、2つの時系列を並走させることによる叙述トリック。でも再読してみてもう一つびっくりしたことが。それは、 物語の日数 。あらためて考えると、あんなに分厚い本であれだけの出来事があったのに、たったこれだけしか時間経ってないの・・・!?と、椎名と一緒に拍子抜け。ということで、内容整理のために時系列表を作っちゃいました!

アヒ鴨ロッカー表

「現在」も「二年前」も、たった1週間の話だったんですね~。伊坂作品の中でも分厚さは1、2を争うぐらいなのに。これに比べりゃ 『坊っちゃん』 『ロミオとジュリエット』 の5日間には負け・・・いや、充実度では十分匹敵してますよ。うん、日本文学の中ではトップ狙えるんじゃないですか?

さて、この作品の重要キーワードは 「空」 である。とは言え、これに限らず伊坂作品にはよく「空」が出てきている。有名なところでは 『死神の精度』 の雨空と青空を思い出すのではないだろうか。しかしそれに比べて 『アヒルと鴨のコインロッカー』 の「空」は、そんなに目立つ使われ方はしていない。皆さんの中にも「え、アヒルと鴨に空なんか出てきたっけ?」と思っている方が少なからずいるのではないだろうか。
では確認してみよう。

二年前7日目: 日の沈んだ空・暖かみがない・真っ暗闇(p.248)
        → 「自分が空に飛んでいってしまう不安」(p.286)
        → 雨雲が空を埋め尽くしている(p.310)

現在3日目: 曇がかった夜空・月(p.4) → 曇り(p.6) 真っ暗(p.127)
現在4日目: 乳白色の空(p,160) → 乳白色をした空(p.198)
現在5日目; 「そのさらに上にある空を見上げたかった」(p.262)
現在7日目: 雲がまるでなくて、爽快なくらいの真っ青な空(p.308)
       → 「空に溶け込むかのような、伸びのある音」(p.330)

『アヒルと鴨のコインロッカー』 の「空」は、読者に無理な意識を一切させない。スーッと自分の中へと入っていく。それが、とても気持ち良い。その“あの時の空”は思い出となり、いつの間にか読者の心の中で消化される。それが、この作品の人気を集める“読後感の爽やかさ”の秘密の一つかもしれない。







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Last updated  2006.12.10 23:07:30
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