知的漫遊紀行

知的漫遊紀行

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

Ryu-chan6708

Ryu-chan6708

Calendar

Favorite Blog

まだ登録されていません

Freepage List

2006.08.24
XML
カテゴリ: 読書感想

8月11日の日記で「暗闘 」についてふれたが、図書館で予約待ちになった。
暗闘
 そこで、その間に、「暗闘」にも引用されているというこの本を事前知識として読んだよ。
 著者は、優秀な日本研究家であり、よく調査して書いているね。訳もよい。
原書は1954年発行。訳は1958年だね。
 日米戦争は1941年(昭和16年)12月8日に始まるが、1年を経過した頃から、戦争はおかしくな ってきたことを日本の文人派の幹部は感じ出す。
 そして、 戦争を終わらす動きが昭和18年始め頃から非公式だが始まる。
 そのうちに戦局は悪化し 昭和19年7月に東条内閣が退陣し、小磯内閣となる。
 この本は、それから8月15日までの日本の最高の政治決定機関が降伏を決定するまでの経過を詳細に追いかけているね。

A氏: 御前会議 というのがあるね。

:これは天皇が出席して方針を決定する会議だね。

A氏 日米開戦 も御前会議で決定したのではないの?

私: そうだね。
 ただし、御前会議の前に閣議とか重臣会議があり、これで全員賛成の内容を御前会議で決定するんだ。
 だから、 決定したことを形式的に天皇が追認する会議だね
天皇は決定事項に反対できないシステムだね。
 日米開戦は、すでにその前の重臣の会議で全員一致で決定していたのだね。

A氏 :旧憲法は「 天皇は神聖にしておかすべからず 」とあるが、実は絶対的な決定者ではないのだね。


昨日の「対論・昭和天皇」 で述べたように、この日本のイデオロギーがないことに関して丸山真男の「日本の思想」からの引用で「 国体を特定の『学説』や『定義』で論理化することは、ただちにそれをイデオロギー的に限定し、相対化する意味をもつので、慎重に避けた。
それは否定面においては明確峻烈な権力体として作用するが、積極面は茫洋とした厚い雲層に幾重にもつつまれ、容易にその核心をあらわさない
」とあるね。
これが降伏するときに、ポツダム宣言の文面が国体の変革を意味するかで御前会議でもめる原因となっているね。

A氏 :アメリカもこの変わったシステムを理解していたのかね。



A氏: ソ連に終戦の仲介を頼むらしいね。

:今から考えると、おかしな話だがね。
 だまされていたんだね。
 その他、いろいろなルートで終戦の打診が行われるが、結局、最高幹部のほうではねられる。
終戦派と軍部を中心とする反対派の議論が延々と続く
 こうして7月26日に無条件降伏を要求する ポツダム宣言 の発表となる。
 これを受けるかどうか、また、もめる。
 まさに秒読みの段階となるね。

A氏 :そして、モタモタしている間に 原爆投下 ソ連の参戦 となるね。

8月9日の深夜、緊急の御前会議が開かれる
 本来、 最高会議や閣議でまだ意見が対立しているのに、御前会議をするというのは前例がなかったが 、終戦派にとってはこのような手段を取り、天皇に決定してもらうより仕方がなかったのだね。
 ここではじめて、天皇の最高決定権が登場するわけだ。
ご聖断 だね。
 この本ではポツダム宣言の受諾の天皇の詳細な発言が出ているね。

A氏 山本七平 さんがどこかで書いていたね。
 陸軍がアメリカの九十九里浜上陸に備え、浜に陣地を構築して万全の体制を整えているというので、天皇は侍従を九十九里浜に行かせる。
 そしたら茫々たる浜辺であり、陣地など皆無であったというね。

:天皇はそれについて、この御前会議でふれているね。
 山本七平さんは、この本から引用したのかもしれない。

A氏 8月9日に決定したとなれば、何故、終戦が8月15日まで延びたの?

私: 実は、この後、連合軍の回答でまたもめるんだね。
 英語で回答がきたのでその解釈でもめる。
天皇制という国体まで破壊されるのではないかという不安だ
 国体というあいまいな「 茫洋とした厚い雲層に幾重にもつつまれた 」ものにやられてしまう。
 国体を維持できないなら、最後まで戦うと軍部側は言い出す。
 結局、 2回目の異例の御前会議が8月14日の昼近くに行われる
 重臣の意見を聞いた上で、天皇は8月9日に言ったことと変わりがないと明言する。
 そして、軍人や国民には直接、詔勅で説明すると言う。
 そして、その深夜、終戦の勅語を録音盤に吹き込むのだね。

A氏: 軍部は今まで、天皇陛下の指示だとして印籠を掲げていたのが、逆に天皇の聖断で 裏をかかれたことになるね。
 それにしても、このようなシステムで天皇の戦争責任はどうなるかね。

責任をいうときに、それについて権限があるのか必ずセットで考えるべきだね
 どうも責任、責任だけだね。
 どういう権限についての責任なのかが問題なんだのにね。

権限のないことに責任を持てというのは最初から無意味な議論だね

A氏 :天皇の権限とセットで天皇の責任を考えるべきだね。

:この本の発行の後、ソ連が崩壊し、いろいろな機密文書が公開されるね。
 日本はソ連参戦のぎりぎりまで、ソ連に終戦の仲介を依頼しているが、ソ連側の情報が明らかになったようだ。
「暗闘」はその解析も含んでいるようだね。
 期待したい。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006.08.24 06:21:36
コメント(0) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: