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Ryu-chan6708

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2006.09.30
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カテゴリ: 歴史


私:

不足の三は精神力で補うのだという。
 山本氏は、これに対して、マッカーサーは本土上陸作戦で 天皇の存在は四百万の兵力に匹敵 するという計算をしていたという。
 日米の軍人の発想の違いを指摘しているね。

A氏 :近代戦は数字に基づく作戦だからね。

:戦争中、軍需工場に飛行機の注文が来る。

 月初に、生産計画を立てる。

 しかし、資材の不足、勤労学生の参入などによる作業の質の低下などで、計画通り行かない。
月末になると数字で事実が出る。
 目標より足りない。
 軍の調達官は怒り、会社側を叱る。

A氏 :軍には調達官が張り付いていたらしいね。

:怒られたら、言い訳してはいけない。
言い訳すると言い訳がましいとますます叱られる。

A氏 この前の山本さんの体験 と同じで言葉を失うのだね。

私: だから、一番いいのは、「 すみません。精神力が足りませんでした。来月は頑張ります 。」ということだ。

 すると、調達官は「 次はしっかりやれ 」で終わる。
 この繰返しだったという。

A氏 :せっかく、組んだ飛行機をまたばらして、飛行場まで運び、また組立てるんだそうだね。

私: 途中の道路を で運ぶ。

A氏 のほうが速く運べるのではないの?

:だめなんだ。 速すぎると振動で飛行機の部品に傷がつく。
 ゆっくり運ぶことが必要なんだ。
 そのため北海道か東北の牛が最適だったそうだ。

A氏 :驚異的な 零戦 の技術の背景にそういう原始的なアンバランスがあったんだね。

:ところで君は OR (オーアール)という言葉を知っているかい?

A氏 :よく知らないけれど Operations Research の略ではないの?
経営数学 という意味で若い頃、聞いたことがあるね。
 今でも大学の経営工学科や情報学科あたりではそういう学科があるんじゃないの?

:もとの意味は 作戦計画 だね。最初、第二次大戦でイギリスで生まれたんだが、そのときはOperational Researchだったという。
 後にアメリカで盛んになりOperations Researchとなる。
沖縄戦での特攻隊の防衛方法 にも学者が参加して、いろいろな回避方法を考えているね。
第二次大戦の英米の特徴は軍事作戦に学者が参加したことだ。

 戦争が科学になったと言われた。

 もう、イラク戦争なんかその極端な例だね。

 それまで、戦争になると職業軍人のカンの世界になり、学者は象牙の塔にこもっていただけだったがね。

A氏 :その学者が参加した作戦計画がORか。

:たしかリーダーだった ブラケット という人がこの成果を豊富な事例でまとめて戦後本にしているが、今、図書館で調べたがないようだね。
 今でも記憶しているいろいろな例があるね。

A氏 :例えば?

:ドイツの潜水艦の Uボート 作戦だね。
 その頃、制空権はイギリスが握っていて、海上を走っているUボートを発見するのだが、追いかけて爆雷を落とすが、戦果が出ない。
 当時、職業軍人のカンにより 30メートル で爆雷を破裂させるようにセットするマニュアルだった。
 ORである教授がいろいろなデータを科学的に分析したら、 7.5メートル が適切であるという結論になった。
最初、職業軍人側の反対があった。

プライドを傷つけられたようなものだからね。
 初期の学者参加にはこのようなトラブルが多かったようだね。
 しかし、被害が拡大するので仕方なくやってみた。

A氏 :戦果は?

:戦果は驚異的なものとなった。
Uボートの撃沈率は8割近くなった。
 ドイツ軍はイギリスが新しい爆雷を発明したと思ったというが、実は爆雷は同じでセット位置(ソフト)が変わっただけだね。

A氏: なるほど、今までの軍人プロでは成果が出なかった面があったんだね。

:面白いことに、ドイツとの戦争終了後、 ドイツの飛行機の棚卸 しをしたんだね。
 ドイツが生産した飛行機から連合軍が撃墜したり、爆撃で破壊したりした飛行機を差し引くと戦後残った飛行機数になるはずだね。
 ところが、倍の数字で合わなかったという。

生産数と残った数は正確だから、撃墜数や破壊数が不正確だったんだね。
 だから、戦後、朝鮮戦争あたりからは、データ把握が正確になるね。

A氏 :太平洋戦争ではどうだったんだね?

硫黄島 の戦いでも物量投入計画に学者が参加する。
 しかし、このときは、予想外の日本の抵抗で計画通りいかなかったらしいね。

A氏 :日本軍には ロケット弾 があったという話を聞いたことがあるね。

:これらのOR学者は戦争終了とともに失業するが、ビジネスの方面で活路を見出すね。

ビジネス界ではそれまではビジネスマンのカンであったのを数式もデルに変えて最適な解答を求めるというわけだ。

A氏 :なるほど、それで 経営数学 と言われ、今ではITが使われているわけだ。
経営が科学化し、数式化し、ITがそれに便乗してきたわけか。
 戦争はこういう面でも影響があるんだね。

私: しかし、 あまりに数式化に走ったために、本末転倒の現象も出たようだね。
 その皮肉な例があるよ。

A氏 :どんな例?

私: 日米の トラック島 の戦いの例なんだが、アメリカの艦船が味方の飛行機を日本機と間違えて撃ち落すという事故が多発した。
 そこでOR学者が投入された。
 彼は数日間で成果をあげて帰ってきた。

A氏 :さぞかしすばらしい 数学モデル を考案したのかね。

:彼は誤射の原因は パイロットが味方である信号を出すスイッチを離陸するとき入れ忘れすることにあることを 発見した。
対策は簡単だった。
 戦闘機が離陸するとき、丁度、パイロットの目の高さに大きな幕を掲げた。
 その幕には、「 味方識別信号スイッチをいれよ 」と大きく書いてあった。

A氏 :なるほど、コストが安く、効果の大きいやり方だね。

経営の原点 もそこにあるね。 マニュアル主義から出てこない 真の知恵 だね。

 今、その知恵を経営の現場で失いつつあるようだね。
 今のITの行き過ぎに対する警告でもあるね。






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Last updated  2006.09.30 09:40:13
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