日常の記録

日常の記録

11時51分



「ちょっと落ち着いたみたい・・」「あれからお茶をずいぶんと飲んだ」
そして、「飲んでおくかな」と、私の持って行った胃腸薬を飲んだ。

再びタクシーを呼ぼうかと言ったが、大丈夫、自転車で帰れるという。
そこで、家でゆっくりした方がいいだろうと、帰ることにした。

玄関を出て、「それじゃ、お休みなさい~~」といつもどおりの挨拶を交わし、私が先に立って自転車を漕ぎだした。

ガシャーン!
ほんのちょっと進み、道路を渡ったところで、後ろで自転車の倒れる音がした。




振り返ると、彼が倒れていた。
一瞬「酔って転ぶほどは飲んでないのに」と考えた。

「どうした?頭打った?」と聞くと、「ああ」と答えた・・・・ような気がする。
倒れたままだったのか、一度起きあがってそう答えたのかは覚えていない。

駆け寄ると呼吸がおかしく、目が半開きになっていた。

そこは、結構交通量の激しい道だったので、轢かれては困ると、手を振り回して往来する車に合図を送った。
すると一台が停まって、若者が数人降りてきて、車の整理をしてくれた。
「救急車を呼んだほうがいい!」1人が言った。
すぐに携帯で119に架けた。
あとで、発信記録を見ると、11時51分だった。

「救急です。場所は○○小学校の正門の近くです!」

以前美佳莉が熱性けいれんで救急車を呼んだことがあるので、場所をしっかり伝えることだけは忘れなかった。
そして、さっき「おやすみ」と別れたばかりの友達に電話した。
「出てきて!」
玄関を出て光景を目にした彼女は、仰天して夫の名を叫びながら駆け寄ってきた。
「子ども達が家で寝てる。救急車は呼んだ。頼む」
叫んで鍵を渡した。

夫は意識がなかったと思う。
さっき随分と吐いたようだったので、吐いた物が喉に詰まって呼吸が出来ないのかと思い、顔を横に向けて、「吐いて!吐いて!」と何度も呼びかけた。救急車が来るまで、ずっとそうやって彼の頭を抱えて叫んでいた。
そのうち、高血圧の人が意識不明でかくような、いびきをかき始めた。

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