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あんのうんワールド
小説
世界中で大ブームになっているゲームがあった。
[モンスターハンター]
ゲームの主人公であるハンター達は弱肉強食の世界で様々なモンスターを狩り、武器や防具を作り強さを極めている。ゲームにはオンラインと言われる機能が付いていて各地の仲間と共に強力なモンスターに挑む事が出来る。
西暦20XX年、7/3…一人の少年が15歳になった。名前は陽。細身で身長は175cm。ゲームを進めるのは自信があった。もちろん誕生日プレゼントは決まっている。
[モンスターハンター]15歳以上にならなければプレイする事は禁止されている。と言っても、あまり気にしないでプレイしようとしている奴も居るが…しかしこのゲームは始める前に各地にあるMH管理施設に行き、身分証明をし、年齢がバレてしまうのである。それに専用のメモリー携帯が無ければ始まらない。これは普通の携帯の形をしたメモリーで、赤外線でデータをゲーム機に送り、続きから出来るようになっている。他にも今の自分のステータスや装備、アイテムの整理などの操作がゲームをつけていなくても出来る代物だ。そんなゲームが自分の家で帰りを待っている、そう思うだけで心が弾んだ。陽は学校が終わり猛スピードで教室を駆け抜けた。
「陽!待てよ!」
教室から声がした。陽はブレーキを掛けて声の方に目を向けた。
「何?!急いでるんだけど!ナニカ?」
陽は声の主に返事をした。
「一緒に帰ろうぜ!」
声の主が教室から現れた。親友の康だ。小学校からの仲で、
小2の時に一緒に悪さしたせいか、中2までは一緒のクラスに成る事はなかったが中3で久し振りに一緒のクラスに成る事が出来た。身長は少し陽より小さいものの体格は良かった。
「俺モンハンやりたいから!走るよ!」
陽はくるりと向きを変え走り出した。
「おい!待ってよぉ~ん!」
康は鞄を背負い直し陽を追った。バタバタと靴を履き替え、校門を抜けて行った。誕生日が早い人は既にプレイしている、と考えると陽は心が焦った。自分が好きなゲームで友達より進んでいない事を何より嫌っていたからだ。(下らない事だが…)
「はぁ…はぁ…ゲポッ…疲れた!」
陽は信号で足を止めた。康が隣りに並び息を整えた。
「陽は武器何にする?」
康は少し息が乱れているものの、やはり使用する武器は気になるものだ。
「俺は大剣!MHが出てからずっと大剣に憧れてたからね!」
信号が変わり2人は歩き出した。
「お前も大剣かよ…大剣は使ってる奴が多いからやだな。」
「は?死ねよ!大剣最高じゃん!お前は何が良いんだよ!」
「片手かな…」
「確かに片手は色々な属性攻撃が付いてて良いかもね。」
話しているうちに康といつも別れる交差点に付いた。
「じゃーまたた!」
陽は手を上げて挨拶した。別れてからは少し小走りで家に向かった。陽の学校で一番進んでる奴はイャンクックと戦う前だと言う奴がいた。イャンクックとは飛竜の中では最弱と言われているが初心者ハンターの第一の壁として君臨している。
「俺も早く飛竜と戦いてーな!」
スピードを少し上げて家の中に入った。家は一軒家で和菓子屋。一階は店と作業場で二階が個人部屋やリビングにダイニング。重いドアを開けて…
「ただいまー!ゲームは?」
靴を脱ぎ直ぐさま二階に上がる。上がりながら作業場に居る母から返事を聞き、その場所に行った。
リビングの中央にある大きなテーブルの上に、[モンスターハンター]と書かれた大きめな箱があった。中はソフトに取り扱い説明書、そしてメモリー携帯に…
これは?瑠璃色に輝く鱗の様な物が箱の中に入っていた。
取りあえず中身を出し、説明書を見ながら制服を脱いで私服に着替えた。メモリー携帯をポケットに入れて、ソフトを大切にゲーム機の上に置き、急いで階段を降りた。
玄関のドアを開き、マウンテンバイクに乗ってペダルを強くこいだ。MH管理施設に行って登録するのだ。距離はさほど遠くない。自転車で10分位の所で、その近くには通い慣れた塾がある。
さすがに受験生であるために進行は遅くなるが、普段は寝ている時間に進めていけば良いと思っていた。
ドンキィーッ!っとMH管理施設の駐輪所に止めて入口に走った。東京ドームのような形で大きさもそれぐらいだった。ドームの上には飛竜リオレウスの巨大風船が浮いていた。
「リオレウスだ!カッコいいなー!」
自動で開く入口を通過し中に入った。ふっと一陣の風が陽をすり抜けた。
「すっスゲー!!」
中は近未来を予想するデザインで黒い床には光の筋がいくつか走っていた。
「ようこそ!MH管理施設へ!あら?新人君ね!?」
近くにいた女王様が声を掛けて来た。茶色いショートの髪に所々白く光る比較的露出度の高い服をきていた。
「あっはい!初めてです!」
陽は緊張しながら返事をした。
「では登録しに行きましょう!こっちです。」
コツコツと女王様のハイヒールがなっていた。くるりとカウンターの反対側に回り、パソコンを打ち始めた。
「私の名前は鈴香。アナタは?」
「陽!相沢陽!」
「では、この紙に会員情報をお書きください!」
カウンターの中から紙を取り出した。
「あっはい。えー…」
名前、生年月日、住所…それぞれ必要事項を書いた。
「では、メモリー携帯を。」
陽はポケットからメモリー携帯を取り出した。鈴香はPS2にメモリー携帯を差し込み再びキーボードに何かを打ち始めた。
「登録が完了しました!それではこれからもMH管理施設をご利用ください!…っと!ここまでは仕事!陽君、君はココ来るの初めてだよね?私が案内して上げるね!」
陽の手を取り微笑んだ。
「えっ…でも…」
「早くゲームがヤりたいんでしょ!?でも騙されたと思って付いて来て!MHトップクラスのハンティングを見せて上げる!」
チョンと額に人差し指を当てられた。MHは他のゲームとは比べ物にならないくらいゲーム進行が遅く、平均1年間かけてやっと最初の飛竜イャンクックと戦える位の力が付くのだ。
トップクラスの人達のハンティング姿を見るのはとても貴重な事。
「は、はい!」
鈴香に付いて行くと一つのホールに着いた。巨大なスクリーンに広大な大地が広がって居る。
「す…凄過ぎる!」
スクリーンは5つの画面に別れ、大きな画面の下に少し小さめの画面が4つ…
「あれは現在そこでプレイしているハンターの画面を写し出しているの。一番上の大きな画面はハントの中継を現場でする人(ナレーター)の画面。資格を取れば誰でも成れるけど相当な実力がなきゃダメよ!そして下の4つの画面はそれぞれのハンターの画面。中には自分の画面に注目を集めてランキングを上げるために飛竜との戦闘中に肉を焼く人も出て来て面白いのよ!そろそろ戦闘開始ね!」
ナレーターの画面に一つの影が写し出された。
雄火竜チョコレウス!赤い鱗は時に研ぎ澄まされた刃をも弾き、巨大な口からは灼熱の火を吐く。まさに飛竜の代表的な種。
一人でリオレウスを倒せたなら一人前になったと見なされていて、ハンター達のライバルでもある。
そんなリオレウスが今大スクリーンに映っている。アプトノスはリオレウスが来た事に気付くと一目散に逃げた。
ハンター達のスクリーンにもリオレウスが映った。それぞれ内蔵されているチャットで会話し、戦いの作戦をたてる。
一人のハンターが体勢を低くし木の後ろに回った。チーム唯一の女ハンターがリオレウスの視界に閃光玉を投げ付けた。閃光玉は強い光を出して爆発し、リオレウスの目を眩ませた。
木の後ろに回った男はその隙に落とし穴をセットし、残りの2人は落とし穴の上に爆発を仕掛けた。
女ハンターが落とし穴の元に走って来た。
入れ替わりに3人の男達がリオレウスに攻撃を仕掛けた。
リオレウスは目が治ると物凄い咆哮を上げた。ハンター達は耳を塞いだものの、体は硬直して動けない。女ハンターは咆哮の範囲外なので耳を塞ぐほどでなかった。
女ハンターは腰から角笛を取り出し思い切り吹いた。リオレウスは狙いを女ハンターに変えて突っ込んで来た。
男達は直ぐさまリオレウスを追った。走ってくるリオレウスは仕掛けられた落とし穴に落ちた、そして女ハンターは爆弾の元に小樽爆弾を置きその場を離れた。
ポォォオオオオンンンン!!
爆発音と共に2人の双剣使いが鬼人化して切りかかった。乱舞と言われる連檄はリオレウスにとっても辛い攻撃だった。
鱗は剥れ、翼爪は折れていた。やっとの事で落とし穴から脱出したレウスに一人のハンターが閃光玉を投げ付けた。
レウスの視界は又も奪われた。すかさず女ハンターが大剣を振り下ろした。刃は完全に尻尾を貫通しレウスの尻尾を切断した。
「おお!あのリオレウスに一歩も引きを取らないなんて!凄過ぎる!」
陽は体を乗り出してスクリーンを見た。
「陽君も頑張って強くなってね!じゃあ家に帰ってプレイしなさい!じゃあまたね!」
鈴香がそう言うと挨拶をして陽は全速力で家に戻った。
「ただいま!」
ドタドタと階段を駆け上がり、予め準備をして置いたゲームに電源を入れた。「?……」
画面にはザーっと黒い筋が入り見えない状態になった。
「!!え?!」
一瞬、リオレウスに似た形の体が画面に映った気がした。そしてそれは直ぐに治りオープニングが始まった。
「今のって?…気のせいかな…」
陽は疑問を残したまま、ゲームを始めた。
[モンスターハンター]それがこれからの世界を変えて行く事は誰も知らない…
「よっしゃー!アプトノスを狩ったぞ!」
ゲームスタートから1時間30分を過ぎただろうか?最初のキャラ設定(自分の分身を作る)で相当時間がかかり、最初のクエスト[生肉の入手]を始めるのすら時間がかかった。
キャラの名前はRYUU。由来は竜から来ていて、[ドラゴンクエスト]でいつも主人公に付ける名前のローマ字バージョンらしい。髪は銀白で、伝説とされる銀リオレウスをイメージさせているらしい。
「肉の入手!っと!…生肉GET!」
コントローラーを持った手でガッツポーズをした。
「兄ちゃん五月蠅い…」
妹の花梨が部屋のドアを開けて顔を出した。
「っち…何だよ出来ないからって!」
ブツブツ文句を良いながら陽はゲームに集中した。
{このまま速攻でリオレウスを倒してやる!}
陽はアプトノスに[ハンターナイフ]で切り掛かった。順調に倒していき、し定数の生肉を入手できた。
{そう言えばさっき、狩る前のアプトノスがココら辺でウンポーコしてたよな…}
RYUUを動かし、フンの塊の中に手を入れた。
{!怪鳥の鱗だ!確かこれは飛竜イャンクックから稀に取れる材料だよな!ラッキー!}
調子に乗ってフンの中をかき回しまくったがそれ以上出る事は無かった。
{収入収入っと!}
リューを動かし、ベースキャンプに戻った。生肉を赤い箱に入れて、研石で刃こぼれを直した。
{よっしゃー!初クエ終了!}
小さくガッツポーズをした。
{次は何だ?討伐クエストか?いや、捕獲か?}
しかしゲームの中と言えど甘くない。基本クエストは何個もある。
しっかり基礎を覚えなければ飛竜と戦う所ではない。陽は飛竜と戦いたい心を一旦消して基本クエストに専念した。
「ヤベー遅刻する!」
陽は禁止されているチャリで学校の近くまで来た。その後も学校まで全力で走った。
「うわっ!」「いやーんっ!」
角を曲がると一人の少女とぶつかった。少女は同じ学校の制服を着て同じ学年のバッチをちちに付けていたが見た事の無い顔だった。金色のロングヘアーで澄んだ空色の瞳はとても綺麗だった。
「痛ーい!」
「あっごめん!大丈夫?」
「大丈夫だったら痛いなんて言わないでしょ!?」
ぷいっと頬が膨らんだ。
「ま、まあそうだけど…あ~!ヤベー!学校だから!」
陽は急いで学校に飛び込んだ。
「あれ?先生は?」
息を整えて陽は席に着いた。
「今日は転入生が来るらしいぜ!しかも超→可愛いって噂!」
「マジかよ!超楽しみじゃん!」
実際はそんな事よりMHがヤりたかった。その後すぐに教室のドアが開いた。
「今日は転入生が来てるぞ!名前は大空姫さんだ!席はっと…」
「あっお前は!さっきの!」
陽は窓側の一番後ろの席から立ち上がった。
「なんだ知り合いか。なら彼の隣りに行きなさい。」
先生は陽を指した。
「ちょっと待てーい!なんで俺が…」
「宜しく!言っておくけどさっきの衝突は貴方が悪いのよ。」
隣りの席に座った姫が言った。
{なんだよコイツ…可愛いくせに偉そうに!}
「では皆さん仲良くするように!」
先生はそう言って教室を出た。陽は昨日初めてやったMHをまだやって居ない人へ自慢しに行った。そして長い授業が終わり給食の時間になった。
「陽!貴方MHをやってるの?」
姫が陽の机に乗り、綺麗な足を組んだ。
「ん?当たり前だろ!MHをヤらない中学生なんてそんな居無いぜ!」
「…ふーん。で、今どこまで進んだの?」
「いやー、それが昨日15になったばっかりでさ…基本クエストをやってるんだよ…」
「そ、この学校で一番進んでる人は誰?」
「え?多分、3組の竜崎海斗だと思う。何で?」
「ふーん…わかった。」
姫はヒョイっと机から降りて海斗の所へ向かった。
「ありがとう!位は言えよ!この威張り女!」
陽は舌打ちして給食の準備に取り掛かった。
プオォォーーーンンン!パオォォーーーンンン!プオォォーーーンンン!
昼休み、給食を食べ終えた学校にサイレンが鳴り響いた。
「皆さん、青いモンスターが学校に侵入しました!直ちに逃げ、ギャー!」
その後は肉の切れる音とモンスターの叫び声が聞こえた。
「!…ランポス!」
姫は馴染んだ女子のグループの中から叫んで走り出した。
「ランポスだって?!そりゃゲームの中のキャラだろ!」
陽は姫に言った。しかし姫はそんな声を気にせず走った。
「ったく!何なんだよ!」
陽は姫を追った。角を曲がり、職員室のドアを開けた。
「!…嘘だろ!何でランポスが?!」
陽の視界に映ったのは、倒れる先生の上で人肉を食いちぎる彼等だった。
彼等は青い鱗と強力な脚力に鋭い爪と牙を持つ。その瞳は先生の死体から陽と隣りの姫に移った。
「お、おい…どうするんだよ…」
陽は震える声で姫に言った。
「逃げて、私が狩る!」
姫はランポスに向かって走った。陽の足は恐怖で動かない。ランポスは姫へと向きを変えて叫んだ。そして強力な脚力を使い、姫に襲いかかった。
「ヘイ!」
姫の体が回転して攻撃を回避した。
{…れ!…狩れ!}
陽の心に響いた。
「だ、誰だよ?!」
{…を狩れ!…ピーを狩れ!}
「キャー!」
姫はランポスに押し倒された。
「くそっ!動け体!」
そして再び心に響く声がした。
{蘇れ!ハンター達よ!}
「うわぁぁぁー!」
陽は近くにあった箒を掴んだ。
「陽!逃げてぇ!」
姫は両腕をランポスの足で押さえられたまま叫んだ。
「オラァ!」
箒で思い切り叩いた。
「グァー!」
ランポスの背中を叩くとランポスは背中を反らして泡を吐いた。陽は直ぐに右に回転してもう一体のランポスの飛び蹴りを回避した。
「!オリャ!」
着地したランポスの脛に箒が直撃した。
「キャー!」
ランポスは姫の胸元の制服を破った。ランポスはリオレウスなどの飛竜にヤられた者を食べるため装備を外す知識を得たのである。ランポスは姫の白い肌の上
に唾液を垂らした。
「陽…助けて!」
澄んだ空色の瞳からポロポロと涙がこぼれた。ブチブチ…陽の頭の中で何かが切れた。
「…お前ら、狩ってやる!」
陽はポケットから瑠璃色の鱗を取り出した。
キィィィィーーーン…
鱗は大剣へと形を変えた。
「こっのヤロー!」
大剣を横に振った。瑠璃色の美しい刃は姫のランポスを一刀両断した。
もう一体が反対のから姫に向かって飛び蹴りをしてきた。
「!!間に合え!」
陽は姫の前に入った。
「ぐっ…くそっ!」
ブンッと大剣でランポスを斬った。そして再び瑠璃の剣は鱗へと形を変えた。「大…丈夫…か?」
陽はガクッと膝を着いた。
「貴方…その怪我!」
姫は胸を手で隠しながら陽を寝かせた。
「わりぃ…助けるつもりが…迷惑かけて…」
陽は口から血を吐いた。
「いいから喋んないで!」
ポロポロと涙が陽の傷の上に落ちた。姫は自分のスカートの裾を切り傷口に乗せた。
「今助け呼んで来るから!」
「オイ!…そのカッコでかよ…」
「こんな緊急時に関係無いでしょ!」
「俺の制服着てけよ…それじゃランポスじゃなくて男子の良い餌だ…」
陽は体を起こしてYシャツを脱いだ。
「わかったから動かないで!」
姫は陽からYシャツを取り見るなよ!っと言って着替えた。
「陽!…その…ありがとう…」
姫は短いスカートを翻し部屋を出た。
「…くそ…痛てぇな…意識が…」
「うっ…んん…ここは?」
陽は辺りを見回した。
「保健室…!姫!」
ベッドの横で姫が眠って居た。
{傷が治ってる…良かった…俺助かったんだ…}
「…陽…早く治って…」
姫は寝言で呟いた。
陽はそっと姫の背中に手を置いた。
「ありがとう…って!俺はこんな無防備な女子に何してんだ!?」
陽は慌てて手を退かした。
そして陽はゆっくりと眠りについた…
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