つれづれなるままに―日本一学歴の高い掃除夫だった不具のブログ―

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『続次郎物語』あるいは第二部



そのような観点から作品を眺めていると、なるほど、第二部は第一部で投げかけられた問題に対する一応の解決編になっていて、現在の(未完の)五部構成ではなく、ここで完結していた方が作品としてはまとまりがついたかもしれないな、と思わせる。

実母が死んだあと、本田の家に後妻がやってきた。次郎にあまり優しくない祖母だけでは…というはからいだったが、思惑に反して、次郎のたしにはならなかった。家庭内の問題もあって次郎は中学受験に失敗する。だがその過程での経験が、思春期の彼の成長を促すのだった。

孤高の蘭の花、岩割りの松、権田原先生の諭しなどを通して、次郎は人間関係の因果に目を向けるようになる。そして、自分にとって「ガン」だと思っていた実の祖母の振る舞いこそが、その後自分に影響を与えた人たちとの「出逢い」のもとになっていることを発見して、不思議な感に打たれる。

また、朝倉先生に出会ったのも不良にからまれたからだし、不良にからまれたのは昔の乳母とその娘を見かけたからであり、乳母を見かけて懐かしさを覚えたのは死んだ母が自分を乳母に預けたからである…

「愛される」ことに飢えていた次郎が、しばしば愛されていないという思いから激情的になり、周囲からは奇行と思われかねない行動をとったのが第一部だとすれば、第二部で次郎はその尾っぽをまだ引きずりながらも、自分にとって苦手だった人をも積極的に愛していこうという姿勢を見せることによって「夜の奇蹟」を生み出し、それが「朝の奇蹟」へとつながってゆく…

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