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武蔵野航海記
徳富蘇峰
徳富蘇峰(そほう 1863~1957)は熊本の豪農の長男に生まれたジャーナリストで、有名な小説家である徳富蘆花は弟にあたります。
彼は民権論者してスタートしましたが次第に国家主義者に変っていった人物として有名です。
大正時代には貴族院議員に任命され戦後は公職追放にあっています。
若い時に自宅に大江義塾という民権塾を開きました。
1886年に書いた「将来の日本」が大評判となり上京して「国民の友」という雑誌や「国民新聞」を発刊しました。
国家を維持する要素としては、1)生産をするという要素と 2)軍備を持って国を守るという要素の二つがあります。
生産の要素を優先すると平民的な社会になり、軍備を優先すれば戦士が優位に立つ貴族的世界になります。
明治維新は軍備を優先する社会から生産を優先する社会への転換点であるというのです。
そして西洋文明の導入によって近代化すべきものは官僚や貴族などの「上等」ではなく、生産を担っている「下層社会」であるべきだという「平民主義」を主張しました。
この彼が国家主義的な傾向を持ち出したのは日清戦争後です。
講和条約でチャイナは日本に遼東半島を割譲することになっていました。
それをロシアがドイツ・フランスを誘って日本に諦めさせたのです。
この三国と戦う力がなかった日本は譲歩したのですが、この「三国干渉」は日本人に大きな衝撃を与えました。
蘇峰も強い衝撃を受けました。日清戦争の時点で彼は「脱亜入欧」主義者でしたが、国際間の力の政治の現実に目覚めました。
それを彼は「力の福音の洗礼を受けた」と表現しています。
そして彼は「日本国民は帝国的自覚の時期に達した」と宣言して国家の利益を優先する国家主義者になってゆきました。
この時点では日本の力が足りなかったために三国干渉に屈したという認識であり、「脱亜入欧」の考えに変りはありませんでした。
後に彼は「脱亜入欧」の考えを放棄しますが、これは日露戦争に日本が勝ち世界の一等国になった後の話です。
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