日本酒バー開店日記

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朱一

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2010.07.21
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何かと話題になっている





『ザ・コーブ』





を観に行ってきました。

話題の映画なので満席近くになってるのでは?

と思っていたのですが、

平日の昼間ということもあってか席は2~3割しか埋まってませんでした。









テレビや雑誌、新聞等でもたびたび取り上げられることの多い映画なので、

いろいろと事前に情報は入ってきていました。

それらの情報からすると、



観ないで批判することはできないので判断は保留。

で、今回観終わった感想ですが、

まあ予想以上にひどいもんだったというのが正直なところですね。

悪意の塊とはこういうことを言うんだなとも思いました。





各地で上映禁止を求める運動が起こっていましたが、

これは映画を一度観れば、

上映禁止にするまでもないという判断に至るんじゃないかなあ。

たぶん、まともにモノを考えられる人だったら、

太地町のイルカ漁について是が非でも中止すべきだという結論には至らないと思います。

感情に訴えかける点があるとすれば、

最後の入江のシーンで海が血で真っ赤に染まったところだけです。



大量の血が流れているシーンを見せれば、

それは感情的になるでしょう。

しかし、『いのちの食べかた』で食肉牛の血なまぐさい処理現場を観たからといって、

食用のために牛を殺すのをやめろ!

という風になるでしょうか?



『いのちの食べかた』ではBGMもそしてセリフすらなく、

淡々と食肉が処理されていく様が映し出されていました。

もちろん、血なまぐさい様子に嫌悪感を抱いて牛を殺すべきではないと思う人もいたかもしれませんが、

大半の方はそうは思わなかったはずです。

しかしもし、牛を殺すのは残酷だ残酷だという趣旨のナレーションと

ショッキングなBGM、

殺された牛の悲哀を表すようなBGMがついていれば、

食肉牛反対運動はきっと起こったでしょう。





『いのちの食べかた』を引き合いに出してみて思ったのですが、

この映画をドキュメンタリーと呼んでいいのか、

その点にもかなり疑問があります。

少なくともこれがアカデミー賞ドキュメンタリー部門を受賞したということは事実ではありますが、

何を思ってこれを選んだのかアカデミー賞の選考委員会にも疑問をつきつけたいですね。





この映画の製作者の意図は集約すると、



イルカの虐殺を世界に隠す太地町の悪の漁師たちの入り江に、

スパイ映画よろしく悪に立ち向かう命知らずの正義の撮影クルーが

深夜の入江に命がけ(かかってないけど)で隠しカメラを仕掛けに行き、

悪事をあばくことに成功した。



ということになると思います。

その様子を本当にスパイ映画のような演出と映像、音楽で盛り上げる。

なるほどこれは勧善懲悪の分かりやすいエンターテイメント映画かもしれないが、

ドキュメンタリーではないだろう、

と繰り返し繰り返し思いましたね。

時折画面で示される数値も出所がはっきりしない上に、

統計的な根拠がまったく示されていない。

つまり、信用に足る情報はなにひとつ提示されていないのです。

(いくつかの数値についてはエンドクレジット前に注意書きが示されていましたが、おそらくあれは日本版だけでしょう)

日本版ではカットされましたが、オリジナル版では劇中に出てくる水産庁の職員がうその証言をしたため、

後日解雇されたという趣旨の字幕がエンドクレジットで出ていたようです。

こうした事実関係はなかったため、日本版ではカットと相成ったわけですが、

自分たちの都合のいいように捏造までしてしまうのであれば、

もはやフィクションとして公開した方がいいのではないかとすら思います。



この映画の中で「わんぱくフリッパー」の元調教師で狂信的活動家の

リック・オバリーは繰り返しイルカの捕獲をやめさせるという主張を繰り返しています。

しかし、この映画全体のトーンとしてはそういう主張はかなり薄くなっていて、

あくまで主題は



我々正義の撮影班が太地町の妨害にも負けずに、

秘密の入江に隠しカメラを仕掛けてやったぜ!



となっているように思えて仕方ありませんでした。

ドキュメンタリーにもなってなければ、

プロバガンダにもなっていない。

それどころか、

この映画は自らの犯罪の記録を世に公開しているようなものです。





映像の切り貼りで自分たちに都合のいい主張だけを展開するこの映画のやり口は問題です。

(たとえば実際には何もない入江を見ながら涙ぐんで見せ、その映像と入江でイルカの死んでいく姿をつなげるといった映像)

一方的に悪と断じられた太地町の方達は本当に気の毒だと思います。

文化を西洋的な尺度で測り、悪と決め付ける。

これは非常に問題のあるやり方だと思います。

レヴィ・ストロースが生きていれば、

きっと何かの提言をしてくれたのではないでしょうか。

この映画へのカウンターとして、

日本のドキュメンタリー作家が太地町の人たちの言い分と、

なぜ映画の中であそこまで外国人撮影班に対して警戒していたのか、

その理由をきちんとドキュメンタリーの方式で撮ってほしいです。





上記の点に関しては、

シー・シェパードがイルカ漁の網を切ろうとした事件だけでなく、

何度も漁の妨害に外国人活動家がやって来たこと、

殺処分の衝撃的なスクープ映像、写真に1万ドルの懸賞金がかけられたことで、

世界中からジャーナリストや活動が太地町に殺到し、

無茶な取材を試み、

誤った報道がされたという苦い過去があったため、

外国人の活動家や撮影に対して相当の警戒心を抱くようになったのです。

映画では撮影を拒否する姿しか映されていませんが、

その前後にどういうやり取りがあったのか、それをきちんと映すのがドキュメンタリーなはずです。

太地町は何かを隠している。

映画の中で監督は何度もそう言っていますが、

それじゃ、あなたは何を隠しているんですか?

逆に問いたいですね。





イルカ、クジラ問題に関してはアメリカの軍事利用、

日本の調査捕鯨と癒着問題など描かれなかった部分も多くあります。

そうした問題に目を向けさせたという点では、この映画も評価されるべきかもしれません。

京都では京都シネマで終映日未定でやってますので、

興味のある方は一度足を運んでみられてはいかがでしょうか。












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Last updated  2010.07.21 14:00:21
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