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カテゴリ: 本の話
夜のニュースで、小学六年生で習う漢字を4割の生徒が正しく書けなかった、という調査結果を見ました。


さて、図書館で借りて来た「城の中」という本の著者。この人のお名前は、いりえすけまさ、と読みます。ご存知でしょうか?昭和天皇の侍従を約50年務め、侍従長となってからは随筆やインタビューで、皇室のスポークスマンとして活躍された方です。

私が中学生の時にお亡くなりになっているのですが、実はその「最期」がとても衝撃的で、私がこの方の人物像を強く記憶しているのはその印象があったからです。
というのも、「八十歳になるのを機に区切りをつける」と勇退宣言をされ、それが大きなニュースとして扱われていたわずか二日後に、心筋梗塞で突如お亡くなりになったのです。驚きの上塗り、という感じで大騒ぎになったのを覚えています。こんな人生の決着があるんだなぁと、子ども心に空恐ろしいような思いがしたものでした。

その名前を文庫本の棚で見つけて、気軽な気持ちで借りてきたこの随筆集は、発行されたのが昭和三十四年。内容は、身辺雑記に加え、太平洋戦争後に昭和天皇が日本全国を巡幸されたときの逸話やふだんの皇族の素顔などを描写した名エッセイの数々です。

中でも読み応えがあったのが、当時のビッグニュースだった、皇太子と美智子妃殿下のご成婚のエピソードの数々です。
民間からお妃を迎えるということが、どれだけその頃の日本人にとって、「新しい時代の到来」を実感させるものだったか。その決定に携わった人々が、“皇室はつねに大衆ともになければならない”と肝に銘じ、どれほどの使命感を持っていたか。
宮内庁の同僚がタクシーに乗って「坂下門」と行き先を告げたら、

と言われた、というような逸話が紹介されていて、改めて実感することが出来ました。

現在の天皇陛下が一歳になる直前から侍従になったという著者の、あふれる思いやりが文章からも伝わってきます。

『お二方の御生活は、まさにこれからである。日ごろ、夢にえがいているものと、ちがったことをなさったりすれば、おなじみ甲斐に、文句をいいに乗り込んでいこうと思う。
そのかわり、折角生き生きと、のびのびと、いとなまれようとする、若いお二人の御生活に、底意地のわるい批評や、無慈悲な掣肘が加えられるようなことがあれば、なんとかして、これから守ってもあげなければならない。』

去年の皇太子の「人格否定」発言以来、皇室を巡る世論は落ち着かないばかりですが、こんな一文を読むと、今の宮内庁に入江さんのような人がいたら??と、思わずにはいられませんでした。

ちなみに、この方の住んでいらした宮内庁の官舎は、かつての江戸城の「大奥」のあった辺りに建っていたということです。
こういう本との出会いがあるから、図書館通いはやみつきになります。
城の中 城の中 (著者・入江相政)

なお、入江侍従長の最期については、こちらの本(第三巻)にも詳しく書かれています。
人間臨終図巻(3) (著者・山田風太郎)





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最終更新日  2005.01.27 21:03:59
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