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―国語(2)―


「大造じいさん」という、どういうわけだか何十年もの間、全国どこの教科書会社も採択していたため、日本国内ではミリオンセラー以上に読まれている話である。
 今にして思えば、大造という名の雁を獲るじいさんと、残雪とかいう名の獲るのが難しい雁との「美しき男の友情」的なものがテーマであるということがわかるが、これが当時9歳の私の頭に全然入ってこない内容だった。
一行目から躓いた。著者は「椋鳩十」しかもタイトルは「がん」である。鳥の名前だらけ、と教師が余計な情報を加えたせいもある。「ハトはわかる、ムクドリは知らん、ガンもよくわからない」と考えているうちに、狩猟生活やら雪国やら、日常から遠い現実世界を説明しながら授業は進んでいってしまった。メルヘンならまだわかるのだが、なじみのない現実的な地名や固有名詞がふんだんに盛り込まれてあるところに理解の難しさがある。
 しかもテーマを理解しなかったため、「いつ残雪にとどめをさすんだろう」と考えていて、最後の「来年また戦おう」というところで不可解な気分になった。それでも授業で説明されたとおり、雁の精神の気高さ、それに圧倒されるじじいの気持ちなどが読み取りのポイントだということを頭では理解しようとし、近い話では「キャンディキャンディ」でステアが戦闘機に乗って、友人を殺した張本人である敵と対立しながら、機器が故障しているからと攻撃しなかったのがあったなぁ。でもステア、次の瞬間別の敵に殺されちゃうんだよなぁ、とむなしさを感じ、残雪以外の雁は殺されちゃってるんだろうなぁと思うと、当時は単語そのものずばりは知らなかったが、「偽善的なじじいだなぁ」と嫌な感じを持っていた。
 おまけにこの単元、難しい漢字が異様に多い。それまで漢字というものは、意味はわかっている既知の単語に文字として覚えるという手順であったのに、
★「率いる」:言葉も初めて知ったのに漢字も初めて。しかも画数がやたら多い。
しかも漢字練習帳ではついでに「自給率」という単語で「りつ」まで覚えさせようとする。じきゅうりつって何だ???
習ってないが「卒」とも違うよな。え、でも「いんそつ」は「引率」だぁ?
音読みがいくつあるんだぁ???
★「残雪」:固有名詞で「残る」という文字を覚えさせる。椋も鳩も覚えるべきか。大造の造は創造の造だぁ???作るじゃなくて造る???
★「戦う」:「戦争」は知っているのに、「争う」と同時教えることはしないためなのか。漢字1つに3文字もふりがなをつける単語???
たぶんテストは散々であったんじゃないかと思う。
現在もこの「大造じいさんとがん」を採択し続けている教科書があるらしい。
「4年生くらいから国語が苦手になった」という話を時々聞くが、元凶の一つであると思うこの教材は外したほうがいい。

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