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―国語(3)―


[記憶に残るフレーズ] ヘリコプターがせん回 ふくらんだ 「学校の先生になりたい」 人気のない通りを
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 気分が晴れない主人公が自宅で焚き火をしていると、庭にしぼんだ赤い風船を発見する。風船には手紙がついていて「学校の先生になりたい」と少女の清清しい元気な字が書かれていて、なんとなく晴れやかな気分になる。書かれた住所の少女の家を探してみるが、町の夕餉の匂いや人恋しい湯垢のニオイやらを感じつつ、家を訪ねることまではせず、暗くなった人気のない道を引き返す、という大学の教員のエッセイ。(鬱から晴れ晴れという変化が、なんとなく『檸檬』っぽい。)

 なんともわかりにくかった授業だった。「ニュースでも報道される「大学の上空を旋回するヘリコプター」がなんなのか」という質問があり、当時不正入試が問題化されていたのでそれかと数名が答えると、学園紛争はついこの間のことだというのにそれすら知らないのか、いう教師の感慨を聞かされる。

 生まれていないのだから物理的にどうしたって記憶を共有できるわけがないということなのだが、それなりの年齢になっておきながら社会的関心が低いということは良くないことだとも思っていたので、なんとなく申し訳ない気持ちを感じてしまっていた。

 焚き火にかざしていた手で風船に触れたら急に膨らんだ、というくだりがあった。なぜかという質問を投げかけられ「温められた空気は膨張するから」などという3年生で習った理科の知識を使った正解で答えるのだが、「そこまで急速に変化するものだろうか」といぶかしむ。「なんで細かい注釈が必要な本筋と関係ない話題までを書いているのか、複雑な文章だなぁ」と思う。それも含めて心情を描写し、リアリティを伝えるということなのだろうが、いちいち立ち止まって解釈するので、生き生きとした現実感を感じなくなる。

 主人公の職業は何だ、という質問が与えられる。文中に主人公が大学の教師だとは書いていないが、そんなこともわからないのなら、著者略歴を見ろとあきれられる。著者外山滋比古が学者であるということも、著者が主人公となるエッセイというジャンルがあることがわかっていなかった。ものすごーく高度なスキーマを要求されるものであった。

 今思い出すと、自分本位な感想を交え過ぎているし、マニュアル本を使っていながら質問のタイミングは悪いし、教授法に関する勉強が不足している教師だったなぁと思うのだが、当時は「大人の文章は昔のことやいろいろな知識を常識として知らないと読めないのだな」と素直に反省してしまっていた。

 そんな大人な年齢ならば、しらけてくるのが普通であるのに、精神がまだ発達していない私は、「誰か読む人」といわれたので、まっすぐ挙手をした。指されて音読したのに、「人気」を「にんき」と読んだら、「それは“ひとけ”だ」とだけ言えばいい指摘を、「自分でできると思っているやつほどこういうミスをするもんだ」と付け足され、それを聞いた周囲の男子からも調子に乗っていい気になるなと喜ばれた。

 ほんの揚げ足とりで、それ程までに言われなくてはならん鼻持ちならないヤツだったのだろうか?私は。

 クラス替えが2年おきで、担任もちあがりだったせいもあって、3・4年生の記憶と、5・6年生の記憶はこんがらがっている。


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