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―おむつ―



 5歳のときに従姉弟が生まれた。当時は当然布おむつである。たたむことなら実妹のでそれまで1年のキャリアがある。たぶん頼まれもしないのに、はりきってお手伝いを申し出たのだろう。ところが丁寧にたたんだものは、全部なおされてしまった。「ごめんね。男の子はたたみ方が違うの」ということだった。今はもう忘れてしまったのだが、構造上、男の子は前を厚く、女の子は後ろを厚くするたたみ方をしなければならなかったのだ。

 乳幼児用紙おむつは昭和30年代から存在はしていたのだそうだが、「もったいない」「なまけものだと思われる」と敬遠されていた。しかしハイポリマー技術のおかげで、昭和60年頃から急速に増え、いまや90%以上の普及率である。現代でも布だけを使うという保育者は、時間的にも心理的にも余裕があり、環境問題などに深い関心があって強い信念を持った人に限られるだろう。経済的な問題は「おしっこ3回分」などと考えると、紙のほうが安くつくかもしれないからだ。

 洗濯機の普及率が高まっても、布おむつは労働負担感は高かっただろう。我慢も1年が限界。大変だと思うから、おむつも無理やり外していたのだと思う。もっとも強制しても失敗も多かっただろうから、負担軽減の効果がどの程度だったかわからないが、当時は失敗を避けるための手段としては「その辺でしちゃいなさい」という逃げ道もあった時代である。その辺でしちゃう癖があるから、小学生になってもしちゃう子はしちゃうんである。
 時には大きい仕事だってやっちゃう子もいた。その昔は歩きながら、というのだって例は少ないながらもあったのだ。

   「♪みっちゃん、みちみち***垂れてぇ~、
     紙ぃがないから手でふいて~、
     勿体ないから・・ちゃった!」

 この歌はかなり古いはずだ。道々ということはパンツなんかはいていない着物の子が歌っていたのだから、みっちゃんが実在するなら、生きていれば90歳以上だ。これは子供の囃し歌。数少ない日本語の悪口の類である。
「みちこ」という名前の人たちは、昭和50年代の子供時代にも、これを歌われたことがあるとよく言っていた。私は「つる姫じゃー」で読んで知ったのだが。今も歌うんだろうか。

 この歌は現代では出だしからあり得ないことであるが、歌い始め当時の世界の解釈では、

   滅多にないこと < ごく稀にしかないこと < 通常あり得ないこと

という三段構成だ。たぶん何か基になる事実はあったのだろう。みっちゃんという弱者に接した健常児の冷たさがリアルな歌だ。


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