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―卒業式―



幼稚園は「卒園式」だ。
♪いつの日か思い出してごらん
 あんなことこんなことあったでしょ~
という歌の練習中、タイクツしていた友達にアホな顔をされて、笑ってしまったら、あとで一人だけ呼び出しをくらった。ハナという名前の先生が、「卒園式は泣くものであって、笑っていいものではない、笑う子が一人いるとその雰囲気がぶちこわしになるということがわかる?」と諭された。
ほー、からくりとして、そういう演出が必要であるものなのか、と(言葉はそのとおりでないが)思ったが、おかげで以来、「卒」の式と「涙」は結びつけることができなくなった。どうせ、会いたい人にはすぐ会えるのだし、人生が終わるわけではなし、次のスタートは目前に控えていてせわしないんだし、とあまり感傷的なもんにはならない。

小学校の卒業式の文句、いまでも出だしの部分ははっきりと覚えている。以下、一行1人が代表して言う。

春、3月20日
○○(小学校名)の野に立つ学び舎
鳥は歌い
木の芽もふくらみ
いま迎える喜びの朝 <唱和:喜びの朝>

力を蓄え、迎えた今日の日
ぼくたち
わたしたちの
<唱和:卒業式が始まる>

緞帳あがる。
壇上には日の丸が掲げられている。
舞台下手から、身長145cmだったおかげで、徴兵を免れたという定年間際の教務主任が、小声で「ごぶれいします」と何に対してだか断り、「ただいまより、○○小学校第○回卒業式をとりおこないます」と挨拶。「はじめに、校長先生より、ご祝辞がございます」とかなんとか。校長、下手より階段をあがり、壇上端で立ち止まり、まずは日の丸に向かって礼、そして机の前で礼、一同礼、教務主任「ご着席ください」。そして挨拶・・・

あの台詞というのは、全国区だったようで、30代のお笑い芸人たちがネタにしていたりするけど、あれっていまもやってるんだろうか。
クラス単位でわりあてがあって、学年の思い出、季節の思い出を順に言って行く。どのくらい長かったんだろう。
クラスでの練習、6年生だけで練習、在校生(4~5年)だけで練習、何回やったかわからん。
誰が言ったかは覚えているけど、順番や、つなぎことばが思い出せない。

○○○ホールいっぱいにこだました合唱
赤勝て白勝て、みんなで力をあわせて戦った運動会

そして最後の学芸会

健康の大切さ
協力の大切さ
私たちの限りない可能性を知りました

この台詞、もちろん教師が考えるのだけど、毎年同じものを使いまわさないところに、教師の根性というか意地を感じる。2学年上の人たちは、文節切れも使用しながら、全員が1回は台詞をいうので、ものすごく長かったが、その中で
「おもえば、両親たちにはぐくまれ」
という単語の、「育む」がわからず、
「おもえば、両親たちにはげこまれ」
と聞こえてしまい、はげこむとは何だ、励ますのようなものかと考え込んでしまった。

小中高の卒業式で歌う歌は、「国歌斉唱」と「蛍の光(在学生)」と「仰げば尊し(卒業生)」「校歌」であった。
いずれも、唯一神以外のものをたたえる歌であるためと、立ち上がって口パクで歌うまねだけをする某教会信者が必ずいた。

左翼勢力の薄い地域であったが、高校のとき、ようやく
「国歌じゃない、君が代だ」
という声が教員かPTAかどっちかであがったらしく、「国歌斉唱」は「君が代斉唱」に変わったが、歌うものは同じものだった。壇上には、超巨大な日の丸が掲げられていた。

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