Cafe  Worldillia

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手をつなごう

手をつなごう


7777番を踏んでいただいた臆病羊さんに、「ラビュー・ラビュー」のリクエストを頂きました。
出来が悪くて本当に申し訳ないですが、頑張って書いたので許して下さい。
もしよろしければ管理人まで感想・苦情・批判どしどしお願いします。
苦情、批判については私書箱にこっそり投げ入れてください。ちゃんと読みますので。

暖かい日差しが君の姿をいつもよりもっと優しく見せてくれる。

僕と君の間のテーブルには、コーヒーとミントティーが一つずつ。
木洩れ日が、白いテーブルをまだらに照らしている。

さっきから楽しそうに話をする君は、さっきの映画がだいぶ気に入ったらしい。

憂いを抱いた儚く美しきヒロイン。
「あんな女の人、憧れちゃう」なんて、君は瞳を輝かせている。



スクリーンに映されていた彼女はきっとこんな笑顔見せないだろ、なんて思いながら
僕は新しい緑が芽吹き始める街に思いを馳せる。


今日は本当に、晴れてよかったと思う。


君には、青空がよく似合う。





「映画は静かに見るもの」という持論を持つ僕からすれば、映画館は正直遠慮したいところだった。

ましてや彼女が見たがっているのは、今話題のあの映画。絶対混んでるに決まってる。

渋る僕を無理矢理連れ出して、映画館まで並んで歩く。

歩道側にいる彼女は、僕の右手にそっと触れる。

前に怒られたことを思い出して、ポケットに入れようとした自分の手を、あえてそのままにしておく。

暖かい彼女の手が、僕の手を包んでくれた。





少し前。まだ、付き合って間も無い頃。

一緒に歩いていた彼女の手が、ふっと僕の手に触れた。

僕は思わず、両手をポケットの中へと突っ込んだ。

人前で手を繋ぐなんて、僕には恥ずかしくて仕方なかったから。

すると彼女は急に、怒ったような、泣き出しそうな複雑な顔をして近くのカフェに僕を引っ張っていく。



「な、何だよ、どうしたの」

「…なんで…」

「え?何?」

「なんで…なんで手、引っ込めちゃったの?」

「え?」

「私と手繋ぐの、嫌なの?」

「そんな事無いよ、ただ…」

「ただ?ただ、何?」

「あんな人前で手繋ぐなんて、恥ずかしいだろ?もし知り合いとか居たら…」

「私と手繋ぐのって、そんなに恥ずかしい事?知り合いにばれちゃいけないの?」

「いや、そんなこと無いんだけどさぁ…」


彼女の機嫌を直すまで、延々10分。


「手を繋ぐ」っていう、僕にとっては些細な行為のそれは、
彼女の人生の中ではまるで命の次に大切なものなんじゃないか、って思うくらい熱く説教されてしまった。



君はいつもまっすぐ僕を見つめてくれるね。




僕がちょっとした仕事の愚痴を洩らすと、君は自分が人生の窮地に立たされているような顔をしてた。

僕の話を聞く君は、僕より何倍も辛いことを目の前にしてるみたいだ。


そんな顔されたら、僕がへこんでる暇がないじゃないか。



君はいつもまっすぐ僕の心を見てくれるね。











いつも、どんな時も精一杯で、一生懸命で。

前を向いて、歩んでいて。

前しか見ていないから、時には思いっきりこけたりもして。

僕が引っ張ってやらなかったら、彼女はひざを擦りむいて、歩けなくなるんじゃないか、なんて思ったりもする。



危なっかしくて、頼りない彼女の腕。

僕がしっかり掴んで、共に歩んで行けたら。


そうしたら、僕の屈折した心も、彼女の心に沿って真っ直ぐになっていくんじゃないかって気がしてる。












いつもありのままを見せてくれる君が、本当に愛しくて、離せなくて。




あの映画みたいな甘い台詞 僕には言えないけど











これからも、手をつなごう。


―END―





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