さしの部屋

さしの部屋

南仏ピレネー

友人がJuan Les Pinsというカンヌの近くある所に
別荘を借りたので誘われており、それにしても、
水着で世間様に出るには夏前のダイエットが少々足りないし、
海しかない街でぼんやり過ごすなんてあまりに性に会わない。
という事で、そこを基点に、行ってきました。

ピレネー。

アクセスの悪い所ばかりで、ガイドなんてないまま、
しかも、ヴァカンスのピーク時に南仏。

インターネットで下調べくらいすればよかったけれど、
出発前は忙しかった事と、あと、何となくそんな気分にもなれず
(実際出発を最終的に決めたのは、前日でしたし)
本当にぶっつけ、という感じの旅行でした。

宿の情報があるところは最低前日には
片っ端から電話したのですが、
ひどい時は20件ほど(複数の街に)かけても空き部屋がなく、
そんな訳で、宿がありそうな街を選んで
行かなくてはいけないことなどもあり、
(教会へのアクセス情報があまりになく、
行程を先に決めることが出来なかったのです)
厳しい状況でもありましたが、7泊、毎晩欠かさず、
前菜&メイン&デザート&ワインの食事をしていて、
ある意味ではとても優雅な旅行でした。

さてさて、前置きが長くなりましたが、
訪れた場所は街で言うと、
Montpellier Narbonne Prades
Vernet Toulouse Pau Oloron

主なロマネスク教会及び修道院は

・St.Martin de Londres

Montpellierからバスで約1時間。
小さな街のへそのような存在の小さな教会。
ファッチャータすらも裏の民家に組み込まれていて、確認できず。
誰かの家の窓からは見ることが出来るのか、
それとももう本当に民家とくっ付いてしまっているのか。
特別な装飾は見当たらないものの石で出来た
トンネルのようなアーチを
くぐり抜けて現れるその存在自体が教会の美しさなのでしょう。
足を踏み入れた時、真っ暗の内部には
小さな子供を二人連れたお母さんが居て、
教会の中は赤ちゃんの、
けたたましい泣き声が響き渡っていました。
お母さんは申し訳なさそうに出口に向かい、私の為に、
電気をつけてくれ、去っていってしまいました。

・Abbaye de Frontfroide

ずばり、ノーコメント(後述・笑)

・St.Martin du Canigou

ふもとの町、Casteilからならば40分山道を登った所にある
修道院。カニグー山自体は険しい表情の山ですが、
整備された登山道があり、
現代の人はそんなに苦労せずとも登れます。
とは言え、Vernetという隣町に泊まった私は、
週末でバスの本数が少ないため、
Casteilまで歩いてから、
山道に挑んだので十分に筋肉痛を味わいました。
柱頭の彫刻が興味深いキオストロも去ることながら、
教会内部は修道院としての機能を取り戻しているため、
祈りをささげる修道士たちの器としての「塊」を強く感じました。
荒く彫られた文様のような柱頭レリーフ。
質素で強い意志的な空間。
我々がそこを立ち去る時、元のように再び照明が落とされ、
暗い中に、ただ座り祈りつづける彼らが、
修道院そのもののような
静けさの中に残されるのです。

・Abbaye St.Michel de Cuixa

Pradesという街から徒歩約40分。
周りにはカフェ一つありません。
途中林檎の木がある庭でくつろぐおじいさんに道を尋ねると
あと1kmだと言っていたけれど、
その時点から30分はかかりました。
前述のSt.Martin du Canigouと比べ、
広々とした印象のキオストロはすっきりしており、
柱頭レリーフも優雅な印象。獅子が多い事が気になりました。
教会自体も大きめで、印象的な鍵穴の形のアーチが見られます。
説明によると、ビザンチンの特徴という事で、
そういう目で見てみると、確かに柱頭上部に、
ラヴェンナのサン・ヴィターレなどで
見かけるさかさまにした台形の
部分があります。中にはロマネスクの通常の、上が丸いアーチに
その台形部分が飛び出すことによって、
鍵穴型が作られているように
感じられるところもありました。
この修道院には非常に変わったクリプタがあり、
というのも、円形の室内の中心に、一本の柱が立ち、
その柱の上部と天井が弧を描いてつながれている為、
一本の木か、はたまた、林檎のような形状を生み出しています。

・St.Sernin (Toulouse)

3年前、一度訪れた事のある教会です。
今回訪れた他の教会と比べ、都市に位置する為か
威厳と優雅さが違います。もう一度ちゃんと見ておきたいと思い、
訪れてみて、そこにはちゃんとサン・セルナンがありました。
うまく表現できません。

・St.Croix (Oloron)

オロロンという街に一歩入ると、明るい日差しの中、
不思議な屋根の色に
目が止まります。日本の瓦のような暗い灰色で多分、
私が以前版画に使ったardesia(イタリア語ですみません)という
石なのでしょう。それが古い家にも新しい家にも、
うろこのように重ね合わせ使われています。
急な丘を上がった所にあるこの教会にも
この印象的な屋根石は使われていました。屋根はいくつかの帽子を
組み合わせたようで、滑稽なものに見えました。
アプシデの円柱や柱頭は彩色(が再現?)されており、
東洋の香を感じました。思えば、周辺の街で見た、他の
もっと新しい教会でもこの様なアプシデの彩色は、なされていて、
特徴的なことなのかもしれません。
柱頭のレリーフも比較的説明的で分かり易く、
一つ、二人の男が四角いお風呂に入っているようなものがあり
何かと思ったら、キリストの洗礼でした。
ヨハネまで、つかる事はないのではないかしら。
クーポラの内側のところ形が、以前パレルモで見た
どこかの教会のつくりと似ているように思いました。八角形。

St.Marie (Oloron)

ここは明らかにゴシックに改築されているため、ロマネスク教会と
言ってしまうのはどうかと思いますが、
美しいロマネスクのポルターレ(正面門)があり、
内部にも各所に可愛らしい彫刻が残っています。
サンティアゴ・デ・コンポステッラへの巡礼道の実感も増し
(実際チェックポイントコーナーがある)
スペイン巡礼道で多く見た
ゴシック教会を思い出しました。但しここは、重心が下にある
ずっしりしたもので、美しいポルターレとの
違和感も感じませんでした。
鮭や猪などとても民族的なレリーフがオーカーの色の素材
(彩色ではない)で表されていました。
そう言えばこの教会の玄関部分には太い柱が立っていてその上に
屋根があるのですが、Montpellierのカテドラルにあったものと
共通するものがあるように思われます。


ところで、Abbaye de Frontfroideは、
インフォメーションの人から
車がないなら行けないわよ、の一言を受け、
わざわざタクシーで行ったものの、
朝で、他に訪問者が居ないため、
その時間のガイドツアーがキャンセルされ、
運転手さんとの約束時間があり、
やむなく周りをお散歩するだけという
切ない思いをしました。
帰り、フランス語しか分からない運転手さんが
どうだった?ちゃんと見れたかい?と聞いてきて、
一人だったから入れなくて
丘の散歩道を歩いただけだと、
さし風フランス語調イタリア語で言うと
切なそうな顔をして、無言になり、
タクシー代を少しオマケしてくれました。

fontfroide

これが中に入れなかった修道院の内部です。。。切ない。

行きたかったモワサックにも
日程上無理が生じ断念せずを得なくなり、
本当は心残りもいっぱいの旅行でした。
あと、セラボンヌ修道院にも行きたかったんだった。。。

炎天下の中、何十分も歩き、ヒッチハイクしてしまおうかと
思った事も度々。もし、大き目の白い紙と、
太目のペンを持っていたら
やっていたかもしれません(親指だけだと不安だし)。

最後に一言。
この辺って、教会めぐりに来る所ではなくって、
自然を謳歌しつつ、アウトドアスポーツでも楽しむ所。
オロロンの中心地(!)でフライフィッシングを
やっている姿を見たら、
なんだか少し、切ないような気がしました。




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