初めての展示の準備
イタリアで初めて参加した展示の準備は
面倒くさいものであった。
その展示はアドリア海の近くの本当に小さな街
（街中に銀行のATMが一個しかないらしい）で行われた。
展示に推薦され、出品が決って、
資料と共に作品も現地に送りいれていたけれど、
厳密なデータは誰も知らなかった。
推薦してくれた人も、展示のある場所すら知らないし、
責任者の連絡先も｡｡｡
問題は私の作品はその場で組み立てなくてはいけない。
仕方ないから、色々聞きまわって、
やっとやっと、企画のキュレータのファックス番号をゲット。
これこれこういう作品なんですが、そちらで設置をお願いします、と、
細かい説明書を送る、、、と、そんなの出来ないから、来てって。
実はその時、母が日本からやってきている時期で、
指定された日にちは、フランス、スイスに旅立つ前日。
でも、ほおって置くわけにも行かないし、母に、
１人での過ごし方を、熱く伝授した後、
ミラノから電車で４～５時間のその場所へ旅立ったのでありました。
早朝駅に着く。実は現金が財布に残り少なく、
切符を買う前にお金を降ろさなくてはいけない。
（今は、カードでも、自販でも買えるようになったけど）
駅構内のいくつかのATMそういう日に限って、
全部動かないのです。もう～～どうしよう、、って
渋ったけれど、どうしようもないから、駅から出て、
お金を降ろしにいく。。。なんてしてたら、
電車、出てしまいました。次も電車あるんだけど、
そっちの方が時間かかるのよね｡｡｡
まあ、こうなったら仕方ない、次の電車にのって、
長い長い時間を試験勉強に費やしておりました。
向こうの駅についたら、企画者に電話して、
駅まで向かいにきてもらわなくてはいけません。
（というか、まだ、コミュニケーションも
スムーズじゃない時代だったのよね。言語的に。。ツラ）
とりあえず電話が通じると、ひとまずコーヒー飲んで、、
そしてお母さんに電話。お勧めしておいた近所の市場が
今日は閉まっていたとか言ってる。しまいには、
窓から見える家のおじさんが喧嘩していた話を
永遠と聞かされ、その頃、企画者が現れる。
「あ～、ちょっと、コーヒー引っ掛けてもいい？
良かったら、君もどう？」って
今飲んだもん｡｡｡
彼の車は永遠に続く海辺のパラソルの横をすり抜ける。
そして、週末にはバスもなくなるような
丘の上の小さい町へとたどり着く。
海辺の町ということを忘れてしまいそうなくらいシックな、
中世の雰囲気を残した素敵な褐色の町なんです。
もう、何百年前に建てられたのかも分からなそうな
町の中心のパラッツォ（宮）がメイン会場。
他にも野外や色々な場所に作品が展示され、
ほとんどこの展示でその町は覆い尽くされるらしい。
そのパラッツォはその時修復中で、
はっきり言って超ごちゃごちゃだったんだけど、
とにかく、彼の見守る中、設置が始まる。
こうやってこうするだけだったんですけどねぇ、、
なんて説明しながら設置準備に入ると、
やだん、、大事な、刷毛がないじゃん。
入れ忘れた。
でもね、その町には夏のその時期、
開いている画材屋さんがないって言うじゃない。
仕方ないから、他の方法を考え、何とかうまいこと設置しました。
彼も、私のコンセプトとかを聞きながら、
興味深く思ってくれてたみたい。そんなの、
初めてだったし、さし、ちょっといい気分。
企画者と、そのアシスタントが滞在する豪華目のホテルで
ちょっとドリンクした時、何で泊まれないんだい？
宿代なら、僕たちが出せたのに。って言われ、
うう、母ちゃんさえ居なければ、って思っちゃったのは
当たり前。
別れ際には、じゃあ、パリまで、良い旅行を！！って
爽やかに挨拶され、駅に戻り、長い帰途に着いたのでありました。
移動時間約１０時間。現地滞在約２時間。
翌日はTJVでパリまで｡｡｡
ミラノのアパートに戻って、母がご機嫌に
喧嘩話の続きや、１人で街に出た経験話聞いていると、
結局、話が弾んでなかなか眠れないけど、
でも、、自分が設置した時点で
どんな感じの展示になるかは想像できたし、悪いものでは
なかったし、なんか、ほほえましい気持ちになりました。
展示が終わった頃、案外ちゃんとしたカタログが届いて、
初めての展示にしては上出来だなって思ったのです。
でも、もし今度あの辺に行けるのなら、
ミラノからの日帰りなんて、嫌な事はせずに、
ドリンクしたあのホテルにでも泊まって、
アドリア海沿いで、ゆっくりくつろぎたいなぁって
思うのは確かです。
そう思うけど、その後、４～５年経っても、あの辺には
足を踏み入れていません。
たまには行ってみるべきかなぁ。思いでの場所。
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