さしの部屋

さしの部屋

当時20歳ほやほや


長い泊り込みアルバイトをしました。
毎日、寮の部屋では、みんなが持ち合ったお酒での
宴会が行われたり、誰かと誰かが付き合いだしたり、
そんな場所でした。

私は、同室の女の子たちと仲良くなれず、
友達がたくさんいる(男部屋)でほとんどの時間を過ごしていました。
(思えば昔から男友達が多いかも。)
そのグループとは、今でも続いている、
濃い仲間であります(その後、女の子も仲間に加わるのよ)。

他の部屋の、他の配属の男の子に、
私より年下の、中卒ながら上京して、ビルの窓磨きなんかをしている
男の子が居た。18歳の子だったと思う。その子は、他の同郷の友達と来ていて、
ある時はその友達と取っ組み合いの喧嘩をしていて、
中高女の子の環境で過ごした私にはかなりショックな出来事だったし、
新しい人種、、と出合った感じがしていた。

その子は、普段は人当たりのいい、優しい感じの子で
常々、私に、美術の大学ってどんな感じなの?
どんな事をしているの?って色々聞いてきていた。

その日の夜は、ある人の誕生日。みんなが寮のどこかの部屋に集まり、
大騒ぎの準備は出来上がる。
誕生日の本人はその男の子とも仲が良かったこともあって、
男の子はラムを(今でも忘れない、マイヤーズ)ボトルで買って来ていた。
プレゼントとして。

いつもの習慣では、買い集めたビールかなんかをみんなで飲んで、
後は、そこいらにあるお酒を適当に飲んで盛り上がるというノリだったのだけど、
その日、ビールがなくなった後、ずっと置いたままになっている
彼のボトルを、つい酔っ払ったついでに、ついつい、
「これ開けないの??」とか言って、開けてしまった私なのである。

瞬間、その子は切れ、吸っていたタバコを、私に投げつける。。
もちろん、火がついたままである。
私(半分酔っぱらい)は、びびリ、固まる。

お前、偉そうに言ってて(大学の事とか聞かれた時、たいしたもんじゃないとか
話していたんだと思う)、むかつくんだよ。と、
周りの人たちも目を見張る勢いでその部屋から飛びだす。

もちろん、その場はとても気まずい。
私も、即座に後悔して、立ち上がり、彼のお部屋に謝りにいく。
彼は、ベットでふてくされた感じで寝転がっている。

言葉自体は覚えていない。多分、いつものノリで
その場にあるボトルの蓋を開けてしまった、、、
誕生日プレゼントだって事を忘れちゃっていたの。みたいな事を言ったんだと思う。

彼が、なにを言ったのかも覚えていない。
ただ、その場で立ち上がって、彼の手が、私の首に伸びて、
しっかりと首をしめられたのであった。
掌は首にしっかりついているし、男の子の力は
決して弱くはない。でも頭では、人に首を閉められるという事の意味が
理解できず、多分、ほんの3秒後(もっと長くは感じてたけど)
その部屋に居た人に助けられる。手を引っ張って私の首から引き離す。

首をしめられたら、死んでしまうのかもなんて
頭を回す余裕はないし、私は、押さえつけられる彼に、
「謝りたかっただけなんだから。。」って確か号泣。
周りの人に、良いから部屋を出ろって言われ、とにかく部屋を出る。

人生で初めて、自分と違う尺度を持っている人間と出会った
瞬間だと思った。あの頃はあんまり実感することがなっかった。
違う人間と、違う尺度の人間は微妙に違う。
それにしても、ネタはお酒かい。



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