ぷーたろ本舗

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大正ロマン薫る城崎温泉


静かに、志賀直哉の『城崎にて』を読みつつ行くのがいい・・・。
そして、時々、窓の外の雪景色をながめ、ふっとため息をついてみるのだ。

この、城崎温泉行きの電車は、JR以前の国鉄時代のものか?と思われるほど、照明も暗く、何となく古びている・・・。
だが、城崎という、大正ロマン溢れる町に向かうには、こんな古びた電車も、タイムスリップの第一段階という感じがして、楽しく思えてしまうから不思議である。

列車もいよいよ日本海に近づいたか?という頃、とてつもなく大きな川が目に飛び込んでくる。
これが、円山川(まるやまがわ)である。
円山川の領域は、まるで中国の桂林を思わせるような雄大な景色が広がっている。
幅が300メートルはあろうかという川幅には、豊かな水が絶え間なく流れ、その両脇を不思議な形をした小高い山が囲んでいるのだ。
冬の雪景色の時などは、もしかしたら、水墨画のように見えるのではなかろうか?

そして、列車は城崎温泉に到着する。
町全体が、こじんまりとした古い店が多いためか、落ち着いた雰囲気が漂っている。

城崎温泉が有名になったきっかけは、日露戦争の負傷兵が、傷の治療のために湯治に来て、その効能がとてもよかったと、それぞれ国に帰って言い広めた事から、日本全国に知れ渡ったとのこと・・・。

ここで、小説『城崎にて』を書き上げた志賀直哉も、その噂を聞きつけてやってきたらしい。

そのせいか、温泉街を流れる小さな川にたたずむ、しだれ柳の木といい、
町に10箇所あるという、外湯の建物と言い
また、古びた木造の旅館が立ち並ぶ様子や、小さな居酒屋など
城崎は未だに、大正ロマンを髣髴させる雰囲気が漂っている。

昼食をとる場所は、あまり多くない。鮮魚店が直営している大きな料理屋が何軒があるが、人が多く落ち着かない感じがするので、出来れば、小さな路地裏にある小料理屋などを探して行ってみるといいかもしれない・・・。

そして、泊まるのであれば、ぜひとも、志賀直哉が定宿としたことでも有名で、城崎で一番と言われる、和風の風情がたっぷりの「西村屋旅館」をお勧めしたい。(もちろん、お財布との相談の上・・・)
きっと、かにやブリなど、日本海の海の幸がふんだんに夕食に盛り込まれ、納得の一夜を過ごせる事だろう。

夜は、浴衣姿で外湯を廻りながら、小料理屋で一杯・・・なんて、ちょっと大人の気分を味わうのも粋である。

もちろん、城崎文学館も是非、訪れて欲しい。
城崎を訪れた数々の文学者を見ているうちに、ますます、大正ロマンの世界にどっぶりと浸れる事間違いない・・・。
(志賀直哉がなぜ怪我をしたのか?そこを突っ込んではいけない!断じて・・・)

そういえば、タバコが国の専売公社になったきっかけって、
「確か、日露戦争の資金稼ぎじゃなかったっけ・・・?
もう、日露戦争はとっくの昔に終わっているのに、どうして、まだ専売公社なんだろう?」と言うと、連れ合いが
「それは、まだ、日露戦争が終わってないからだよ・・・。」

もしかしたら、まだ、この温泉場のどこかで、日露戦争の負傷兵が傷を癒しているかもしれない・・・そんなふうに錯覚してしまうほど、この町は、大正ロマンに溢れている・・・。

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