倖和(サチナゴム)の妄想小説・・・

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2008年01月25日
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カテゴリ: 戦争ゲーム
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大国アメリカが没落した後の世界を想像しています……
その御伽噺第259話です。

「ある意味、キリスト教の進化論否定は正しい」
 と、天皇はいう。
「チンパンジーと人間の遺伝子情報は97パーセントまで同じだといわれている。だが、有史以来チンパンジーが何かの拍子で変異して人間になったことはないし、現在もその兆しすらない。最新の科学的知識をもって遺伝子操作をしてもチンパンジーを人間にすることはできないのです。生物というのはもっと人智を超えた神秘的な存在であり、遺伝子も一つの結果にすぎない。遺伝子が生物を作っているのではありません。遺伝子そのものは単なるタンパク質を合成するための情報の組み合わせにすぎないのです。命そのものは地球の分身なのです。地球から細胞分裂のように分かれてできあがったのです。神が土をもって自分と似た姿形のアダムを作り、アダムのあばら骨からイブを生んだと言う人類誕生のいきさつもあながち嘘ではない。つまり地球しか命を創造することはできないのです」

「では地球こそ神でしょう。なぜわれわれが神になるのか?」
 と、加藤がたずねた。

「“サトヤマ”システムは人間をいわば地球に返す役割があります。つまり炭素エネルギー文明に頼らなくても生きて行ける文化を築くわけです。それは自然の風水のエネルギー循環による文化です。加藤さんもご存知のように衣食住の糧を滞りなく得ることができるので、地球が生き続ける限り人類も存続することができる」

「だからなぜ私たちが神になるのです? 陛下はそれについてまだ答えておられない」


「このままだと地上の人々は数十年で言語をほとんど失います」
 と、いった。
「言語を失う?」
 加藤が驚いた。
「そのとおり」
 と、天皇がいった。
「“サトヤマ”システムによって人の生活は地球のエネルギー循環に完全に同化するために、言語能力を失ってしまうのです。衣食住に不自由しなくなるので喋らなくても十分生きて行けるからです。やがて言語的思考も必要なくなる。言語よりも直感的な行動の方が効果的なのです。腹が減れば食べるし、眠くなれば眠る、そして子どもが作りたくなったら作る、体のシグナルに忠実になるだけでいい。死の恐怖すらなくなります。あたかも前頭葉を失った無人格のような人間になります。そして地上の人の生活は全くの理想郷、天国になるのです。エデンの園といってもいい。だが、永遠ではない。生き続けている地球はやがて自己治癒の時代に入る、つまりふたたび炭素エネルギー放出の時代が来るのです。そのときに神が地上に降り立たないと、文明を効果的に復活出来ません。いわゆる地球の薬の役割は得られないのです」

「つまり、人類が言葉を失い文明を失い平和なエデンの園で暮らしているのを止めさせる役割が神だというのですね」
 と、加藤がいった。天皇はうなずいた。そのとき沈黙を保って部屋の入り口あたりでじっとしていた橘一郎が、前に進み出た。そして、

「旧約聖書や神話などの古代からの言い伝えや民話、神話、伝説の類いは、ほとんどは事実なのです。ただ、長い間の“サトヤマ”システムによる生活で人々は言葉を失っています。それを地上に降り立った神とのやり取りの中で思い出して行く。だから伝説はつたない言語で書かれていることが多いのです」
 と、いった。


 と、加藤がいった。
「遠い将来、再び石油や石炭を燃やす文明が必要な時のガイド役をわれわれがしようというわけだ。つまり炭素エネルギー文明のガイド役こそ神様というわけだな」

「そうです」
 と、橘がいった。
「どの文明も東からはじまり西で完成します。太陽を追いかけるからです。そして、その発祥の地は実は常に朝鮮半島付近なのです。もっとも地形は毎回違います。二つに別れていた島が合体して日本列島できたように、新しい文明が始まるたびに地殻変動が起きて新しい陸地の形になりますが」


 と、加藤が橘にきいた。
「そうです」
 と、橘が答えた。
「飛行石の結晶により、一つの都市が空中に浮き上がります。そこで炭素エネルギー時代と同じような生活を継承して行くのです。言語も継承されます。そして人口が増えれば都市は分裂しいくつかの都市は別の太陽系を目指して一部が地球を離れる。それはあたかも羽のついたタンポポの種が遠くを目指して旅をするがごとくです」

信じ難い荒唐無稽な話である。だが、さすがに同じような説明を何回か聞いて加藤は理解してきた。
「人類の文明は何回も繰り返されてきたのだね。そして、その知恵は飛行石の結晶によって空中都市に保たれ、時期がくれば再び類人猿と変わらない生活をしていた地上の人々に空から降りてまた繰り返し文明を築き、地球を治療するために温暖化を招くのだ」

「そのとおりです」
 と、橘がうなずいた。



続く。











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最終更新日  2008年01月28日 09時10分44秒
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