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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年06月27日
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(ちょっ・・・なによこれ。アンタいったい何したのよ!?)

扉の陰にいるトールに、怒りの心話を叩きつける。

(羽がうまく出なくて、生え際の確認を。物理的に癒着していたら大変だから)
(それだけ?)
(それだけ。・・・・・・申し訳ない)

トールの声音に嘘はなく、辛そうなひびきがあった。

(わかった。・・・・・・ちょっと出てて)

長身が静かに部屋を出ていくと、フレデリカは目を閉じて一度息を吸い、それから振り向いて少女に優しい微笑をむけた。

「カワイコちゃん、どうしたの? 大丈夫よ」

ゆっくりと少しずつ近づき、細い肩に触れる。少女はびくりと身体を震わせた。言葉も話せないような状態で、見開いた大きな目に涙と怯えがあふれている。

「大丈夫・・・・・・だいじょうぶよ」

子守唄のように唱えながら、フレデリカは少女を抱き寄せた。華奢な体はまだ硬いものの、嫌がりはしない。
部屋は薔薇の花のように幾重もの結界でつつまれていたが、今は少し広すぎ、明るすぎるようにフレデリカには感じられた。

そこで自分の力で小さなテントのようなものを作り出し、その中でベッドに座って膝に少女を抱く。
温かい手で赤茶色の髪をやさしく撫でながら、しばらくよしよし、と少女を慰めていた。

少女の震えがおさまったところで、そっと抱きかかえるように、背中に出たままの羽の手入れをはじめる。

「嫌だけど、これはあなたが乗り越えないといけないことなの。誰も代わることができないから、慣れるしかないのよ」

呆然としたままの少女に、ひたすら歌を歌うかのようにやさしく話しかけた。

少女がどれだけ羽を怖がっていたか、フレデリカは知っている。
本当は、少女に嫌なものを我慢させたりするのは不本意だった。だがこればかりはそうもいかないため、熱を出したわが子を心配して看るように、 ただ叱咤激励するしかないのが辛かった。

(かわいそうに。代わってあげられればいいのに)

ずっと泣いている少女に、「もういいの。やめましょう」と言えたらどんなにいいか。
フレデリカ自身も涙をこらえて、ただ愛娘を抱いていた。

やがて少女が泣きつかれて眠ってしまうと、フレデリカはそっと彼女をベッドに横たえ、あたたかな布団をかけて部屋を後にした。

音を立てないよう、細心の注意を払って扉を閉めると、その脇に銀髪の男が壁にもたれて立っていた。じっとここで待っていたのだろう。暗い廊下、窓からの月明かりに照らされた銀髪の中に、憔悴の色が見てとれた。

(あなたにはかなわないな)

(役割分担が違うだけよ)

きつく言い捨てる。あの、もうやめていいのよと言いたいけれど言えない辛さ、愛する子に嫌なことを強いなければならない辛さを、彼も感じていたに違いない。
けれども、いやだからこそ、フレデリカの腹には怒りが燃えた。

(次はルースがあんな風になる前に私を呼びなさい。
あんたは欲張りすぎ。ルースのケアをすべて自分でやろうとする気持ちは愛情ゆえなのはわかるわよ。でもね、なんでもかんでもっていうのは、無理よ。
・・・・・・だからあんたは坊やなのよ)

最後のひとことは聞かせるつもりがあったのかわからないが、トールの耳には痛烈に響いた。

(・・・・・・申し訳ない)

頭を下げることしかできない。言い訳はしたくなかった。

余裕がなくなり、ぎりぎりになればなるほど、他人の手を忘れてしまう。
それが自分の悪弊であることに、彼は気づいていた。
余裕があれば頼れる、頼ることを思い出すことができるのだが。
頼りたくないのではなく、ほんとうに気がつかなくなる。視野が狭くなってしまうのだろう。
それは間違っていると、今ならば言うことができるけれども。

フレデリカが去った後、しばらく彼は彫像のように闇の中に立ち尽くしていた。




翌日、少女はマリアとルキアの庭にいた。明るい陽光が木々の緑を際立たせる。
マリアは少女にいろいろと優しく話しかけていた。彼女はトールの分身だが、そういえば、二人だけできちんと話をするのは初めてかもしれない。

「羽を見せてごらんなさい」

柔らかな声に言われて、少女はわりと素直に自分の羽を引きだした。けれどもまだとても怖い。
少女は緑の目をつぶって必死に我慢しつつ、ほんの少しだけ自分の羽を正視した。

今までは寝ている間にラファエルが基本の手入れだけしてくれていたとかで、機能的には損傷はなさそうだが、ひどく汚れてぼろぼろだ。
マリアが水とシャンプーのようなものを持ってきて洗ってくれたが、とても完全にきれいにはならない。

「でもだいぶ綺麗になったわ。よかったら、毎日ここにいる間だけでもいらっしゃいね。できたらしまわないで、そのままいてね」

マリアの言葉に、少女はおずおずとうなずいた。天使系の羽はドラゴンと比べて異様に大きいと聞いてはいたが、自分の背に大きな翼があるなんて、ものすごく違和感がある。

「さあ、頑張ったごほうびに美味しいものを作ってあげるわ。なにを食べたい?」

「・・・・・・フルーツが入ったサラダたべたい」

「いいわ。ちょうど採りたての野菜があるのよ。お見舞いのお客様も来ているの、通しましょうね」

マリアは微笑んだ。
その笑顔はやっぱりトールと似ているな、と少女は思った。

銀髪の女性に呼ばれて庭にやってきたのは、ジョゼとサバトだった。彼らは先日のアースデーにここを出て、クリロズの居室に戻っている。緑の少女が回復してきたらお見舞いに来ると約束していたのだった。

「こんにちは・・・・・・緑さん、天使だったの?」

「トール先生だって羽があるんだから、おかしくないだろ。それよりほら、あれ出せよ」

ぽかんとするジョゼを、サバトが肘でつつく。彼は少女が微妙な表情をしていることに気づいているようだった。
マリアが食事を作りに席を外すと、ジョゼがおずおずとリボンをかけた平らな白い包みを差し出した。

「あの・・・・・・これ、師匠の真似をして作ってみたんですけど、アップルパイ」

「アップルパイ? わあ、ありがとう」

一瞬羽のことを忘れて、彼女は包みを受け取り、リボンをほどいて中を覗きこんだ。とたんに噴きだす。
そのアップルパイは、きれいな緑の色をしていた。

「あの、その、頑張ったんですけど、緑さんにあげようと思ったら緑色になっちゃって・・・・・・」

「一応、クリロズのトール先生に見てもらって試食してもらいました。それでまた作り直しましたが、やっぱり緑色にしかならなくて」

しどろもどろのジョゼの隣で、サバトが言葉を添える。
クリロズのトールが笑いながら試食しているさまが目に浮かぶようだ。味はよかったよ、と言ってくれたので持ってきたということだった。

「さあ、お茶にしましょ」

そこへマリアが、美味しそうなフルーツたっぷりのサラダや皿をのせた大きな盆を持って帰ってきた。白い指がテーブルの上を踊ると、陶製のティーセットが出現する。マリアはあざやかな手並みで紅茶を入れた。彼女は料理などの手仕事をするのが好きなのだ。

テーブルに出された緑色のアップルパイを、もちろん彼女はトールごしに知っていたのだろう。驚きもせずに、「元気な色ね」と笑った。

アップルパイを切り分ける。少女はじーっとその断面(断面も素敵に緑色だ)を見て、おもむろにフォークで一口分取ると口に入れた。

「ん、おいしい。ほんと味はいいよ。ありがと、ジョゼ、サバト」

少女の声に、二人の少年が安堵のため息をもらす。その様子をにこにことマリアが見ていた。

しばらくジョゼの機械の話やクリロズの話をして、二人は帰っていった。













*************

>>【銀の月のものがたり】  目次1  ・  目次 2

>> 登場人物紹介(随時更新)



昨日本編再開してから、なんかいろんな方に、「次からの緑ちゃんの暴れっぷりが楽しみです!」って言われたんですけど・・・
ごめん、あんまり暴れてないかも。むしろシリアスかも^^;

ちなみにトールとフレデリカさん、ものすご~く古い親しい知り合いのようで。
ルシオラ誕生以前?にも会ってそうな雰囲気です。



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最終更新日  2009年06月28日 14時51分18秒
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