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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年07月08日
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このままステーションへ帰るべきか、どうするか。

曇りのない大きな鏡の中には、白い服で白い羽の少女がいる。色が薄くなり金色に近くなった髪も羽もふわふわで、緑色なのはその瞳だけだ。その姿をしばらく睨んだあと、彼女はふくれた。

「これじゃあたしどこも緑じゃないじゃん。着がえる」

横で見ていたトールがくっくっと笑う。なんで笑うんだよ、とさらにふくれると、彼は少女の後ろに回って細い首にペンダントをかけた。

「これでいいだろう?」

彼女の胸元に輝いたのは、大きなエメラルドのペンダントだった。退院祝いだよ、とトールが微笑む。

チョーカーのような弛みのない金の鎖と台座。一見シンプルなつくりだが、とても深い色のエメラルドで彼女の瞳によく映える。
よく見ると繊細な細工がされていて、放浪癖のある少女のためにGPSでもつけられているのじゃないか、と本体が笑った。

「……ありがと」

照れくさそうに少女はしばらくペンダントの鎖をもてあそび、それから意を決したように部屋を後にした。




ステーションのカレー屋に行った少女の本体の娘は、少女を見て目をみはった。

(へえ、かわいいじゃん)

以前の風呂にも入らない野生児とはえらい違いだ。
しかし見ている間に、なにがあったのか緑の少女が突然泣き出した。

なんだかわからないが、とりあえず慰めようと声をかけてハグすると、ドラゴンのエネルギーが強い娘にはぐらんと衝撃がきた。

(うわ。・・・・・・中身、おもいきしずれた・・・・・・)

よく見れば、緑の少女はオペの成果であろうか、外見のみならずエネルギー的にも大きく変化して、そのあたりで守護天使をしているような普通の天使より、よっぽどパワーが強くてオーラが大きくなっている。
ザドキエルに直接エネルギーを流されて天使系エネルギーに慣れるよう特訓されてはいるが、ドラゴン系の彼女にはまだハグすることすらできないらしい。

そのうちにトールが迎えにきて娘に挨拶し、少女をなにごとか慰めて店を出た。


二人はステーションのアシュタールのところに向かっていた。

「学校で顔を会わせるたびに、『あの子はどうなった、元気になったのか、会わせろ』と言われていてね。どうやらあなたに仕事を斡旋してくれるつもりらしい」

上層の幹部エリアを歩きながら、閉口したようにトールが言う。

「仕事?」

「そう。まあ詳しくは彼に直接聞いてみよう」

扉の認証セキュリティを通過して、広い部屋に入る。
アシュタールは大きな机についていたが、二人を見ると相好を崩して立ち上がった。

「おお、おお。よく来てくれたな。待っとったぞ」

「おひさしぶり、ですかね?」

意味深げにトールが笑う。魔法学校の教師としては数日前にも会っているが、天使時代からその人格を統合しての今と数えれば、じつに何億年もが経過している。

「ひさしぶりだとも・・・・・・二人とも、おかえり。やっとこっちに帰ってきてくれたんじゃの」

アシュタールは涙を拭った。年をとると涙もろくなっていかんのう、と言いながら。
盛大に洟をかんでから紳士は少女に向き直って微笑んだ。

「頼みたい仕事とは、これじゃよ。
べつに決まったときに出勤せんでいい。天使系エリアをぐるぐる回って、遊んでるときでもかまわんから、なにか問題がありそうな箇所をみつけたら自分でできることなら修復しておいてくれてもいいし、報告だけしてくれてもいい。クリロズの増改築やメンテと同じじゃろ?」

「ふーん・・・・・・うん」

ちらりと隣のトールを見上げて少女はうなずいた。
これまでステーションでは、共通エリアと下の娘のいるドラゴンエリア、倉庫などのあるエリア、それにアシュタールやサナンダのいる幹部エリアくらいしか 覚えている箇所はない。
ドラゴン系の下の娘は天使エリアはまったく見たことがないし、少なくとも本体は個別の大天使の部屋など以外、意識して入ったことはないから、どこなんだろな、と彼女は思った。

「おお、よかった。無理にとは言わんがの。どこにも帰属しないでいたずら三昧もいいが、たまには仕事してみるのもいいもんじゃぞ」

うん、と少女は言った。決まった時間に出勤しろなどと言われたら完全に無理だが、そういうことなら少しやってみてもいい。

まあ、だいたい緑みたいな波動の天使系のやつにこそ、仕事してないでフラフラしてる率が多いんだ、というのは下の娘がいつも言うことだ。人助けなどを一生懸命してるのは、天使系は天使系だけどまた別の部類だ、と。

そういえば緑の少女は昔、ステーションにヒーリングセンターを作ったことがある。
しばらくやって飽きたら、今の責任者の老人に押しつけてしまったのだが。
ただ、ほぼ全権を放り出したとはいえ、今でも自分のところだから何をやっても無料だ。下の娘あたりには、「そのために作ったんじゃないの」と言われているくらいで、今は黒い女性の分身がロシアンルーレットにはまってたまに担ぎこまれているらしい。

わりあいに自分は好き放題を許されているよな、と考えて、ふと少女は気づいてしまった。

これは三次元の世界で、戦場に出るため洗脳された兵士達がもどってきたときの処遇と同じだ。
ドラッグ漬けにしたり、ゲームのようなもので洗脳したり、兵士として「使える」ようにすればするほど、戦場以外の普通の世界に帰ってきたときに人間として使い物にならなくなる。
彼らがホームレスや犯罪者になるのは職がないからではなく、単に人間として壊れてしまっているから。社会に適応できないのだ。

自分はそれと同じ。
だから、以前廃ステーションをひとつ壊してしまったときも、責任をとらされることがなかったのだ・・・・・・。

落ちかけた少女の思考を察してさえぎるように、暖かな手が肩に置かれた。
見上げると、青灰色の瞳が優しく彼女を見つめている。その瞳はすべてを知った上で、大丈夫、と彼女をまるごと認めてくれていた。
エメラルドの瞳に信頼をこめて、彼女はうなずき返した。



トールと別れた後、少女はさっそく天使エリアをまわってみた。
最近下の娘にスパルタをしてくれているザドキエルに、とりあえず挨拶しにいこうかと思いつく。

「えー、御用聞きでーす。なんかありませんかー」

白いワンピースに白い羽の少女が入っていくと、ザドキエルは扉まで駆け寄ってきた。
二歩ほど手前で急停止して、上から下まで少女を見つめる。その目にみるみる間に涙があふれていき、ザドキエルはがばっと少女を抱きしめた。

「あ・・・あの・・・・・・?」

あっけにとられている少女をよそに、ザドキエルはおいおいと泣いた。

帰ってきた。ようやく帰ってきてくれた。私達の愛する天使の子。

言葉にならないそんな想いが、直接ハートに流れ込んでくる。
しばらく泣いた後、ようやく少女を解放して、「ちゃんとカマエルのところにも行くのだぞ」とザドキエルは念を押した。

「えー。・・・なんか苦手なんだけどなあのひと」
「だめだ。必ず行くのだぞ」

御用聞きってこれかよ、アシュタールに騙された、と思いながら少女はザドキエルの部屋を後にした。
















*************

>>【銀の月のものがたり】  目次1  ・  目次 2

>> 登場人物紹介(随時更新)


緑ちゃん、ステーションでおしごとはじめるの巻。
これにトールも巻き込まれて?いくんですけどね 笑
それはまたお楽しみに~♪



コメントやメールにて、ご感想どうもありがとうございます!
おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。

続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪


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最終更新日  2009年07月08日 09時14分03秒
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