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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年07月22日
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キラキラした装飾つきで、トールからももらったからもういらない、と最初は断ったのだが、いいから持っていけと押しつけられてしまったのだ。
リラが別名「天使の竪琴」と呼ばれていることを知ったのは、後になってからだった。

店先で弾けば客寄せになるかもしれない、と思って弾き始めたのだが、なんとなく気分がのらない。下の娘がよこしてくれたドラゴンと、なんともいえず気分の晴れない感じで彼女は過ごしていた。

そのうち、まっすぐに店にむかってくる人影に気がついた。すわお客かと笑顔を作って出迎えると、それがデセルであることがわかった。

(なーんだ、お客さんじゃないのか)

少しがっかりした表情の少女に、デセルは笑顔をむけた。

「こんにちは、緑さん。ちょっとオフィスに来てもらえませんか」

「……うん、いいけど」

少女は留守をドラゴンに頼み、デセルの横を歩き出した。
実は彼女は、しばらくトールとちょっと気まずくて顔をあわせられずに、避けている、というか戻りにくくなっていた。
それを知っていて、直接自分ではなくデセルを迎えによこしてくれたのか、それとも彼が自発的に来てくれたのかはわからない。
けれど、きっかけがあって戻りやすくなったのは事実だった。

とりとめもなく色々話しながらついてゆくと、すぐにオフィスに着いた。ずいぶんと人が増えている。
奥のつながった部屋のほうで、トールが気づいて顔をあげる。少女の姿を認めて微笑をうかべ、親友にうなずきかけると、またすぐに仕事に戻った。

少女は手前のスタッフルームで、少しだけ仕事を手伝った。他部署への書類の送り方などをデセルが教えてくれる。

「あて先は、元の書類のここから気をコピーしてこっちに貼ってください。それから、部屋のここの機械に入れてこのボタンを押すと、自動的に行き先別に送られますから」

「ん、わかった」

そんなことをやっているとすぐに、全部の仕事が終わって万歳、という瞬間がきた。二十四時間稼動している部署ではあるが、波の切れ目は当然あるし、なにより統括のデスクの上が平らになったのは初めてだ。

最後の書類を転送し、机の上に羽ペンを放り投げて椅子によりかかったトールに、スタッフから陽気な拍手が沸き起こる。

伸びをして息をついたトールは、彼らに笑って席を立った。

「ちょっと失礼するよ」

といったん皆に挨拶し、少女を連れて部屋を出る。
そして、瞑想部屋と呼ばれる場所のドアをあけた。

入ると真っ暗な中に星空が一面に映し出され、宇宙空間に浮いているような感じになる。
瞑想の邪魔をしないよう防音がきいていて、星のまたたきの音さえ聞こえそうな気分になった。

ここはエリアを統括するツインがともに瞑想に入るための部屋だ。
ツインというのは特殊な波動を持っており、うまく気持ちとエネルギーを交流し、共振させることで爆発的なエネルギーを発生させることができる。
それをエリア全体の結界システムと連動させることで、すべての不具合や波動調整などを一瞬にして直してしまう、それがこの職にはツインしか就けないという理由だった。

もっとも、トールと少女はまだまだそこまではいかない。うまくいけば書類の山は五割以下になる計算だったが、今のところは足でかせぐしかなさそうだった。
上もそれを承知の上で、仕事しながら慣れていくように言われている。

トールはそこへ少女を連れていくと、優しい表情で向き直った。

「今日はここで仕事はしないけれど、なんでもいい、今の気持ちを話してごらん。言いたくなかったらそれでいい。でも、言いたいことがあったら言ってね」

「……うん」

間をおいて少女はうなずいた。それからぽつりぽつりと話し出す。
週末にカイルとアエルのツインとして、会議に出席したこと。そこで調整をうけたこと。
むこうとのコードが強くなったら、今度はトールと繋がりにくくなってしまい、混乱して急に不安になったこと。
二人のツインを持つにあたって、自分の精神とキャパシティがキーポイントだと言われたこと。それはこのことかもしれないと思っていること。

それから……ほんとうに彼女の足をとどめていたのは、今言ったことだけじゃない、きちんと言葉にならない、できないような、複雑な気持ちなんだということ。

雨だれのような彼女の言葉を、トールはだまって聞いていた。

言葉にならない、本当にそうだ。

伝えたい思いも聞いてほしい思いも、どちらも単語選びのなんと難しいことか。
テレパシーですべて通じたらいいのにと思うこともあるが、言葉を選ぶその過程そのものが、そして考えて考えて、やっぱり言葉にならないんだと伝えることそのものが、きっと気持ちを伝えるための抜けない飛び石なのだろうと思う。

言葉ほど、簡単で難しい魔法を彼は知らない。

伝えたくても言えないこと。
伝えてしまって後悔した、けれどもどこかに出さずにはいられなかったこと。

傷ついて傷つけあって、それでも届けたいのは、おそらくたったひとつの気持ちなのに。

なぜ人はすれちがうのだろう。
それすらも、愛の境地を知るために?

トールの中にも、言葉にならない思いはいくつも眠っている。
ましてトールという人格からはみだした部分ももつ本体はなおさらだ。それは緑の少女も、いや生きるすべての人が同じことだろう。

言葉はむずかしい。
人はむずかしい。

それでもなお、愛さずにはいられないものたち。


言葉にならないんだ、という少女の台詞を、微笑んでトールは受け入れた。

あふれ流れる奔流のような心に対して、選べる単語はあまりにも少ない。
言えなければそのままでいい。
言葉にならないからといって、気持ちがないわけではない。
だから、そこに言葉にならないなにかがあるのだと、それさえわかっていればいい。

大事なのは表層の矢印ではなく、それが指し示す奥底の形なきたゆたいなのだから。
忘れることなく抱きしめていれば、いつか凝って結晶になることもあろう。
それが美しかろうともそうでなかろうとも、泥濘の奥から現れた宝であることに違いはない。


満天の星空を背に、穏やかな声でトールは言った。

「もうあらかた仕事も終わったから、これから一緒にルキアに帰ろう」

「うん、わかった」

少女もすっきりした気持ちで答える。


二人がオフィスに戻ると、和気藹々とした雰囲気でスタッフ達が待っていた。
いやあ、仲直りできてよかったよかった、普通にしているつもりでも、統括がやっぱりどこか無理しているのがわかるし、そうなると我々もやりにくいからねえ、と笑ってちゃかされる。

ぱっと赤くなった少女をいたずらっぽい目で見やると、トールはひょいとその華奢な身体を子供のように縦に抱き上げた。彼と少女は50センチほどの身長差があるため、彼女と一緒にいるときは、トールは少しだけ猫背になる。

「ぎゃー、はずかしーから降ろしてー!」

叫び声を無視して、皆に「お疲れ、お先に失礼するよ」と笑顔で挨拶する。

「はいはい、どうぞどうぞ」
「これで後は二人だけにしとけばいいですから、安心安心」

上の人、特に天使系というのは愛情表現がおおらかだと言われるが、それぞれ羽を持ったスタッフ達もまったく動じることなくにこにこと答えた。ひとり無表情で淡々としていそうなエル・フィンは、今日この場にはいない。

すぐに別の分身をよこしてシフトを交代するからね、今夜の技術部懇親会は楽しんでください。そう言って、トールは少女を抱いたまま扉から姿を消した。















*************

>>【銀の月のものがたり】  目次1  ・  目次 2

>> 登場人物紹介(随時更新)



今日は皆既日食!
残念ながらこちらは雨がちの曇りですが、上は色々といそがしそーです。
トールもマリアも正装してなんかやってます(爆
緑ちゃんもかわいー白いおよふくがとってもお似合い。
いずれ物語に書きますので、しばしお待ちあれ~



おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。
どれも大切に嬉しく拝見しております♪
続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪


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最終更新日  2009年07月22日 10時57分18秒
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