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サイド自由欄

nmcard_128128.gif
トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年08月05日
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壁際の結界処理を確認して、ふうん、これならね、とデセルは呟いた。


そもそもの発端は、先日デセルが羽を見てもらうために専門のクリニックに行ったときのこと。
経絡図を見て説明を受けたり、三次元の駐機場のように羽を広げてケアしてもらったりしているのを見た本体が、その気持ちよさそうな様子にエステと思って「トールさんに鍛えてもらえ」と言ったことだ。ただしダウンロードは禁止、と。

デューク時代、グラディウスの戦闘記憶を仕事として共有していたデセルは、短時間ならばその戦闘能力をリロード、あるいはダウンロードすることができた。

リロード(再生)は、グラディウスが経験したほぼそのままの状況にしか対応できない。とはいえ彼の実戦経験はかなり豊富だから、これで足りないことはあまりなかった。
ダウンロードは未知数の状況にも対応できるが、後で本体にかなり負荷がかかることがわかっている。

もっともトールは、いかにグラディウスの記憶を探っても、デセル(デューク)のように完全に戦闘員のコピーができる人間を他に見たことがなかった。
たいていの戦略部員は、記憶を共有した戦闘員の能力をコピーしようとして戸惑い、逆に動きが固まってしまう場合がほとんどであったから、かなり珍しいケースであることは間違いない。

練習場に足を踏み入れたトールは、親友を見つけると嬉しげに微笑んだ。
気づいたデセルが軽く片手をあげる。

「お疲れさま、こないだは学校で総がかり戦だって?」

「そうなんだ。もっとかわしてくれるといいんだけど、とついエル・フィンに呟いたら、生徒に無理を言うなと怒られてしまった」

嘆息する。デセルはぷっと噴きだした。

「そりゃそうだ。普通はかわせないよ」

「なら君は普通じゃないってことだ」

ベニトアイトの瞳がにこにこと親友を見る。そんなことはない、と言いかけて、……いややっぱり変わっているかな、とデセルは頭をかいた。



「じゃあ、本気でゆくから」

距離をとって向かい合い、トールはすっと眼を伏せた。
デセルも、サードアイのあたりからカチリと音が聞こえそうな切り替わりを見せる。

銀髪の友人が眼を開くと同時に、デセルは三十歩分ほども遠く後方へ飛び退った。

開かれた友人の瞳が、いつもの穏やかな青灰色ではなく、深紅のルビーに染まっている。
戦闘時のグラディウスの色。オーラも同じ色に濃く燃え上がるようだ。
どんと重い闘気が大きく解き放たれる。空間がびりびりと振動し、学校にいるようなひよこ達だったら、これだけで気絶してしまうと思われた。エル・フィンならば気絶はしないだろうが、それでもしばらくは動けないだろう。

燃える炎のような闘気が、さきほどデセルが立っていた位置を疾風のごとく舐めつくす。

トールが音もなく床面を蹴る。風圧までともないそうな闘気が追いつく直前に、デセルは魔法陣から衝撃波を繰り出して横に跳んだ。

迫りくる強烈な波を片手で払いのけ、トールが相手の進行方向に攻撃をしかける。学校での授業はもちろん、エル・フィン相手の剣術指南とも比較にならないほどのスピードと攻撃力だった。

金茶の髪の男は、それも紙一重できれいに避けた。いくら本気を出されても、攻撃はすべて避けることができる。

かつて戦闘記憶を共有し、グラディウスの癖も、攻撃の前駆波動もすべて知り尽くしているデセルだけができる神業と言ってよかった。
彼は重い攻撃を受け止めようとはしなかったし、トールもそれを望んではいない。それはむしろ危ないからだ。
同じように強くとも、他人とはできない理由がここにあった。攻撃を受けて反撃したくなるタイプとやるのは危険すぎる。

つまり、ゲームはいわゆる追いかけっこだった。

デセルは次々に繰り出されてくる光弾も衝撃波もすべて避け、逆に攻撃もしかけていた。だが相手を倒そうというよりは、どちらかというと防御のためだ。
自分の攻撃で、専門戦闘員の経験のある彼が倒せるはずがないとわかっている。
それよりむしろ、かわして逃げることに全力を注いだほうがいい。

デセルにしても、こうまで本気になることはあまりない。自分の攻撃が彼を傷つけることはないとわかっているから、こちらも手加減なしにできる。
かつての癖からか、グラディウスの赤い瞳に会うと、つい仕事仕事という気になってしまう彼だったが、この息抜きは楽しんでいた。

光弾、跳躍、衝撃波、回転、振動、そして走る。
さまざまな色の光と波動が、閉じられた空間に満ちて明滅した。

高い山の頂に吹くように、横面からぐわっと一陣の風が迫ってくる。対処の遅れた一瞬ののち、気づけば両手を首の位置で逆に組まれて封じられ、壁際に押さえつけられていた。その衝撃のわりに実際のダメージは全くない。

ゲームオーバー。

赤い瞳の親友がにやりと笑う。
封じられた手の力が抜かれると同時に、銀髪の彼のオーラが燃えあがる深紅からアメジストの紫に変わり、そしていつもの海の色に戻った。
なんとまあ色彩鮮やかなことだ。

「やっぱり君は強いな、デセル」

トールが微笑んだ。

「そうかな?」

「ああ。最近エル・フィンに剣を教えているんだが、多分彼よりも」

それなら、とペリドットの瞳をいたずらっぽくきらめかせてデセルは言った。

「すぐに抜かれるよ。俺、そっち方面はがんばらな~い主義だもん。技師の黄金の手は、箸より重いものは持てません」

「よくいうよ」

二人は視線をかわして笑うと、とん、と拳をあわせた。
















<デューク - 鬼火 ->
http://blog.goo.ne.jp/hadaly2501/e/c65e439759c50d29391e5f3634b85780




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>>【銀の月のものがたり】  目次1  ・  目次 2

>> 登場人物紹介(随時更新)



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最終更新日  2009年08月05日 14時45分03秒
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