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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年09月14日
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私は黒くつややかな毛並みで、魔狼と呼ばれいつも自由に森や戦場を駆けていた。
その中で、戦乙女の姿をしたあの娘にも出会った。私は娘を背に乗せて走った。首にしがみつき、目を閉じている彼女の感触があたたかい。
あるときは座っている私の大きな背中に、娘は頭をもたせかけていた。とくに何を話すわけでもない。それでもその時間は私にとって宝だった。

しかしあるとき、私は捕まった。
彼らは私を太い鎖で縛りつけようとしていた。
それを警戒した私は、おとなしくしてやる代わりに誰かの利き腕をこの口の中に入れろと言った。

真っ赤な口に鋭い牙。皆尻込みしていやがる。馬鹿どもめ。
すると、一人の男が進み出て自分の右腕を私の口に差し入れた。
何度も共に戦場に立ったことのある、長い銀髪の男だった。

この男、私が怖くないのだろうか。
自分の腕が食われるかもしれぬというのに、惜しくはないのだろうか。
すると男は、深い青い瞳で私に微笑みかけた。
鍛え抜かれた身体に強い武器を持ち、軍神のようであるのになぜか優しげな顔をしていた。

彼らは私を強靭な鎖で縛り上げた。
怒り狂った私は、悔し紛れに英雄の右腕を食いちぎった。
男は怒りはしなかった。
声も上げず私を責めることもなく、ただわずかに顔をしかめただけだった。

私はその腕を丸呑みしてやった。



彼らは私に喰いこむ鎧の罰を与えた。
狼の姿に戻れないよう、脳髄に刺さり続ける刃のついた兜。
羽飾りのついた兜をかぶり、私は黒いワルキューレのような姿になった。

私は罪人。

永遠に続く拷問。楔のごとく深く身体に食い込み、けして外れない鎧。
何度も最前線に送られ、隻腕の戦士や戦乙女と戦場に立った。犯罪者ゆえの前線送りであっても、彼らと共にいるならばそれもよかった。
彼らが死んでも待てばいい。そんな思いが私の中にはあった。


私は罪人。

何が私の罪なのだ。闇のもとに生まれたということか。
原初の混沌が分かたれるとき、下から上にのぼるものを選んだということがそれほどの罪なのか。
それでは抵抗しても意味がない。

私は罪人。

……ちがうよ、と誰かがささやく。

私の中で、銀髪の男の声がする。
丸呑みしてやった腕は、すでに私の一部に溶けている。

ちがうよ、お前は悪くない。

私の一部が私にささやく。
闇であることは悪いことなんかじゃない。
お前はただ、その役割をひきうけた魂。
誰かがやらなければならなかったことを、その身にひきうけた勇敢な魂。


痛みを呼ぶためだけの拷問が続く。存在自体をひたすらに否定され続ける。
誇りも自己も打ち砕かれ、意識が遠く虚無に溶けていきそうになる。

(私は罪人)
(私はその役割をひきうけた)
(私は悪いものじゃない)
(あの赤い髪の娘)
(あの娘に……伝えなければ)

粉々にばらけようとする意識の中で、かすかな光が私を支える。
弱り果てながらも、私は死ぬことを許されない。

闇。それは受け入れる母性。
元々の闇に植えつけられた母性が、私の芯をからめとるように拘束してゆく。


愛している。愛している。
私の子はどこだ。
私のあの娘はどこだ。



……至福の時間はその後にやってきた。
私はまたあの娘に出会ったのだ。それも、血は繋がらなくとも親子として。

私の存在を濾過し、すくいとった上澄みが異端の天使として彼女の母親役を務めることになった。父親役はあの銀髪の男だった。

なんという幸せだろう。

胸のうちから湧きあがる歓喜。日々を満たす至福。
それがたとえ植えつけられた母性によって誘導された結果であっても、かまいはしなかった。
ただあの娘がそこにいてくれる、それだけでよかった。

しかし、娘はやがて取りあげられた。


私は待った。ひたすらに待った。
待つことには慣れている。
虚無を抱いて生きていたころに比べれば、私の中にはたくさんの光るものが溜められていた。宝物のようにそれを味わいながら、私は待った。

どんなに姿が変わっても、私にはあの娘がわかるのだ。
銀髪の男が娘を追って転生を続けていったように、私も生と死を繰り返していった。


そしてはるかな時が過ぎてゆき、私達はもう一度、出会った。
彼女は私の存在を認め、私の上澄みである天使のことを思い出した。

小さな彼女は天使をママと呼び、私をフェンリルと呼んでなついてくれた。
なんという可愛らしさ。なんという愛らしさ。
もう一度やってきた幸せな時間。
彼女が種々の傷を解消してゆくさまを、私は嬉しく見守っていた。
一緒に釣りに行く約束もした。


けれど、その約束は果たされることはなかった。
統合し解放する流れになった闇は、私の身の内に集約され、三次元の本体に負担をかけ始めたのだ。
原初の混沌の下半分から生まれた私の闇は、あまりにも濃く深く、通常の人間には支えきれない重さになってしまっていた。

食事もほとんどとれない、一日数時間しか起きていられない本体を見て、私はこのエネルギーを捨てることを決意した。

上世界で、誰かに施術をしてもらおうと思う。
前例はないが引き受けてはくれるだろう。この際、自分で実験台にされるモルモット、ということでもかまわない。どうせ厄介な存在と思われているのだ、ちょうど良かろう。

「その代わり君にも色々影響が及ぶかもしれないが」

そう本体に言うと、きっぱりと彼女は返した。

「二人でやろうと決めたことだから、いいよ。限界がきて肉体が消滅したら、それはそれでいいと思う」

私は彼女を見返した。

優しい子だ……そしてやはり、もう限界なのだ。
























*************

>>【銀の月のものがたり】  目次1  ・  目次 2

>> 登場人物紹介(随時更新)




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最終更新日  2009年09月14日 13時07分34秒
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