のんびり、やさしく。

のんびり、やさしく。

PR

プロフィール

さつきのひかり

さつきのひかり

カレンダー

コメント新着

かずみ@ Re:☆ゲリラ開催☆ 1/10~1/15 はじまりのひかり&ロシレムヒーリング(01/10) かなりお久しぶりになります。 当時は、お…
悪女6814 @ Re:ブログお引越しのお知らせ(01/14) 「お気に入り登録」させていただきました…
ユウリ@ Re:【銀月物語 28】 消えない十字架(04/22) 私も。 必要であれば自分自身を斬れます。…
確かに。@ Re:【銀月物語 26】 哨戒空域(04/18) 必要ではない、というかその時ではないと…
Ving@ Re:天使夜話 ~暁の星~ 1(03/10) さつきのひかりさんへ 今日から天使夜話…
くまたろう@ Re:☆ゲリラ開催☆ 1/10~1/15 はじまりのひかり&ロシレムヒーリング(01/10) いつもありがとうございます。 どうぞよ…

お気に入りブログ

アシスタント吉田の… ヒーリングセミナー bulan・batuさん
天使と住む楽園 楽園に住む私♪さん
ぷち・すぴ ぴ子さん
なにが見えてる? umisora1897さん
おだやかに。 aki-☆さん
ミカエルブレイズ たんたん4531さん
虹をつかもう 双光 持元さん
神社☆エール!頑張れ… 瑚☆月さん

サイド自由欄

nmcard_128128.gif
トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2009年10月19日
XML


にべもなくトールは言った。ここではっきり言っておかなければ、何をさせられるかわかったものではない。

「なんだって私達がそんな演出に使われなければならないんです。あなたがやればいいでしょう、アシュタール」
「まあ、そう言うな。式典なんじゃから、ある程度の演出がなければつまらんじゃろうが」
「だから目立つところは全部お譲りしますよ。それでなくても、私は人為グリッドの開始で忙しいんですから、他を当たってください」

天使やマスターたちのお祭り好きにも困ったものだと思いながら、トールは座っていたソファから腰を浮かしかけた。当初一緒に部屋に呼ばれていた緑の少女の姿はとうにない。
こんな話になっていたと知れば激しく抵抗しただろうし、彼女が抵抗してくれれば向こうも納得するかもしれなかったのだが。

「だからじゃ。グリッドを立ち上げるのに歌が必要じゃろう? その流れを監督調整するには、ここのタワーの上が一番やりやすいじゃろう。会場もすべて見渡せるしな」
「わかっていますよ。そこで歌うのが嫌なんじゃなく、その後の演出です、私が言ってるのは。誰ですかこれ考えたのは」
「まあまあまあ。わしらの総意と言っておこうかの。せっかくの日蝕式典、それも記念すべき流れの区切りじゃ。少々仰々しい演出だって必要じゃよ。たくさんの星系からお客様もいらっしゃるし、何もなしというわけにはいかんじゃろう」
「だからって……」
「この日に発動する人為グリッド計画の責任者にして、大戦の傷の象徴。これほどの適任者がほかにおるか? 諦めるんじゃな」

にやりとアシュタールは笑った。


「……と、いうわけだ、エル・フィン。当日の警備は君に頼む」

げんなりした口調でトールは金髪の青年に伝えた。

「演出はご愁傷様ですが。まあ、統括が会場にいるのは当然でしょう。……しかし、私に会場全体の警備責任者なんて務まるのでしょうか」

珍しく言いよどんだ部下に、トールは微笑んだ。

「大丈夫、君なら務まるよ。私達天使エリアのチームが計画責任者だから、会場警備もうちの者が担当しないとね。セラフィトにも話は通してある。式典中は共有エリアの警備員と、臨時警備員が君の下につくことになるようだ。忙しいだろうが、任せるからうまくさばいてくれ」

会場の下見をしていた際、同じことをセラフィトにも言われたことを思い出す。
努力します、とエル・フィンは答えた。

金髪の青年は、まだ分身できない。そろそろできても良い頃だし、エネルギー的にもいけるはずとトールは見ているが、きっかけがないのだろう。
会場警備責任者は重責だが、それがきっかけになればいいとも思う。

基幹グリッドの発動については、トールはデセルとも何度も確認を行っていた。
デセルのほうは、本体はいまいち把握していないが三人に分身できるということだ。
当日には会場にひとり、そしてスタッフルームと、グリッドラインの坑道にいるつもりだと彼は言った。
会場ではマリアがポイントを押さえる。

緑の少女とトールの先導による歌を、希望者からなる周囲の歌唱隊へ、そして会場参加者全体に広げてゆき、共振させる。
スタートポイントとして膨大なエネルギーが発生するだろうそれをぶれないように支え、グリッドラインに繋げてゆくのがマリアの役目だ。

支えたエネルギーがあふれ出して暴走することがないよう、会場面でのチェックおよび調整を行うのが、技術部の会場班と会場警備の面々。
さらにそのエネルギーを間違いなくラインへ流し、地球規模の流れそのものを監督するのがデセルはじめ技術部グリッド班ということになる。

前日夜は途中破壊工作のために抜けつつも、光のグリッドラインの描かれた地球儀を前に、トールとデセルは遅くまで話し込んでいた。



そして式典当日。
朝早くから、緑の少女はフレデリカの知り合いの美容院で羽の手入れをしてもらっていた。
フレデリカが狼のシュヴァンツを呼び出して道案内させた、はずれのほうの知らないエリアにある店だ。

「まあ、可愛い子ね。着る服の色は? フレデリカが作ったのでしょ」

とても感じのいい、少しふっくらした感じの女性が、にこにこと話しかけながら手入れをしてくれる。フレデリカはジョフィエルだと言っていた。

「うん、ママが白に金糸の縫い取りがあるのを作ってくれて」
「いいわねえ。今日は日蝕で、太陽と月の結婚っていう日だから……羽のコーティングの色は、あなただったらお日様の七色の光ね」

ジョフィエルは鏡にうつる少女に微笑みかけながら、そっと上の羽をめくってみた。
下の羽を見た彼女の顔が、満面の笑みに変わる。

「あらあら、まあまあ。なんて可愛いこと!」

少女の生えてきたばかりの二段目と三段目の羽が、そこにはあった。

新しい羽は、生えてきた見た目よりもだいぶ長くなっていたのに、まだ柔らかすぎて固まっていたらしい。
女性が優しく丁寧に一枚一枚先のほうまでほぐしてゆくと、四枚ともかなりの長さになった。もう前からでも見えるくらいだ。
照れくさくなった少女の顔が赤くなる。

ジョフィエルは楽しそうに笑いながら、すばらしくきれいなコーティングを少女の羽にほどこした。

それが終わると、少女はほかの人間と組んで各地からの招待客を迎えに行った。あらかじめアシュタールから頼まれていたものだ。
色々な星系の重鎮なのだろうか、三次元の映画のような、さまざまな格好の人々が到着するところに行っては、丁重に恭しくお迎えにあがる。
失敗すれば天使エリアだけでなく、ステーション全体、ひいても地球そのものの評価まで左右しかねないため、少女もそれなりに緊張して失礼のないようふるまっていた。


その頃トールは、同じくフレデリカが作ってくれた金糸の縁取りのついた白い礼装に着替えていた。帯剣しているし、詰襟で軍礼装のような雰囲気だ。
過去世で着ていた軍の礼装が、まさに似ている。

戦いが本当にすべて終わっているならば、もう必要ないはずの剣と軍装。
やはりまだ過渡期なのだ。
大戦の終わりを告げるというよりは、終わることを決意する式典、希望としての式典。
大きな流れが変わっても、人の心にそれが染みとおるまでには時間がかかる。そして、さらにそれぞれが自分の意思の元に歩き出す、そのための式典なのかもしれない、と彼は思う。

グリッドラインを活性化させ、起動を成功させるためには、今日は責任者として波動もエネルギーも最高値を保っていなくてはならない。

トールはばさりと背中の羽をひろげ、普段はステーションにあわせている波動を高めに調整しなおした。
懐かしい感覚があり、周囲に白い光が満ちる。
そのまま少女の本体にアクセスをとって、波動の調整を手伝った。

賓客の対応をひととおり終え、フレデリカの店に戻って化粧とヘアメイクを直してもらっている少女を迎えに行く。
普段とは違うトールの姿を見た少女が、エメラルドの目をまるくする。

一緒に店を出てモールの通路を歩いていても、周囲にトールの白い光が広がっていて、すれ違う人から見られているようだ。
それに、彼は普通に話しているのだろうが、彼女には丁寧な口調に聞こえたりして面白い。訳を問うと、波動が高いからそうなるのだろう、ということだった。

緑の少女は驚きつつも、服も羽もふわふわで楽しくスキップしたり回ったり、いつもの調子で歩いていたが、ちょっと待って、とトールにその場で立ち止まらされた。

「それじゃだめだ。背筋をのばして」

眼をつぶらされ、何度か深呼吸をする。
根源からエネルギーを貰い、身体の隅々まで回して、羽を広げ、その羽の先までエネルギーがいきわたるように。

「そう……もっと……よし」

ワークが終わったときには、少女の気分も仕事モード、になっていた。
自分も光っているのがわかり、廊下を歩いていても、挨拶にアシュタールの部屋に行っても、自分ではないようにちゃんとしていて、とても変な気がする。

「おお……おお。昔のルシオラもそうじゃったよ。戦場でもそこだけ光り輝いておってのう」

アシュタールはまた懐かしげな目して少女を見た。

「……だから、自信をもってしゃんとしていなさい。
驕り高ぶることもなく、卑下することもなく、上や下や前や後ろを見て、あれこれ思いを分散させたり、迷ったり悩んだりせずにな」

今の自分は、ここの次元のこの役割であると、きちっと意識をあわせて、すべきことをまっとうすること。
ここの自分の意識を持ち帰り、三次元で人に伝える。上でどんなことが行われているのか、ある程度三次元の人々も知ることができるように。

「そういう役割を下の意識ではしているのだということを、もっと落ち着いて当たり前のこととしてしっかり受け入れなさい」

愛する孫を見るような、柔らかな瞳で白髭の紳士は言う。
緑の少女は神妙な顔でこくんとうなずいた。






















*************

>>【銀の月のものがたり】  目次 1  ・  目次 2  ・  目次 3

>> 登場人物紹介(随時更新)


ようやく、日蝕式典にたどりつくことができました… orz
お待たせして申し訳ございませぬ。。
今回の新月を待ってましたか?っていうタイミングで書きあがったので、
新月の効果があるうちに準備編をアップしておきますw



おひとりずつにお返事できず、本当に申し訳ございません。
どれも大切に嬉しく拝見しております♪
続きを書く原動力になるので、ぜひぜひよろしくお願いいたします♪


拍手がわりに→ ブログランキング
webコンテンツ・ファンタジー小説部門に登録してみました♪→



10/20 サファイア・ヒーリング








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2009年10月19日 18時09分56秒
コメント(4) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: