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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年01月19日
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「アルディ、その……狙われてるって……」

冷凍庫に入っていたピザで簡単な夕食をすませ、淹れてもらった紅茶を飲みながら、ようやくリフィアは尋ねた。気づけば夜はとっぷりと暮れている。

「なぜか、はまだ話せないんだ。君が目をつけられたのは、あの爆発事故のときだろうな。私と一緒にテレポートしているのを、何人もが目撃しているはずだから」

心配げな顔で見つめているリフィアに、彼はもう一度微笑んだ。

「大丈夫だよ。さっきも弾は当たらなかったろう? そう簡単には私は殺されない。心配なのは君のほうでね」
「私?」
「ああ。向こうもそろそろ、私を直接狙うより君を狙ったほうが効率がいいと気づくだろう。だけど、離れていては護りきれないからね」
「効率……」

呆けたようにリフィアは繰り返した。


ハウスクリーニングは週二回入っているのを知っているから、現実の匂いでないというのはわかる。

アルディアスの背後、なぜか向かって左側に、少し離れて黒々と口をあけている円形の陰りが見えていた。

虚無? と最初リフィアは思った。
しかし話を聞いていて、これは向けられた悪意なのか、と思い直す。埃っぽい匂いは、その陰りから微かに漂ってくるようだった。

その悪意は、銀髪の男には手を出せない。
理屈はわからないけれども、何かが確実にそれとアルディアスの間にあり、遠く遮っているのが感じられる。
その陰りで彼の命が脅かされることはない。

そういう確信があったから、不安というわけではなかった。
けれども、これはリフィアにとって経験のない緊迫状態であり、自分もその中にいるんだと思うと、どうしても固まってしまう。いつもの思考力はどこへやら、まったく発揮できなくなってしまうのだった。

そんな彼女を、アルディアスは優しい眼で見つめた。

「君にも絶対に手は出させないから、安心してていい。おそらく……そうだな、二週間もあれば焙りだせるだろう。彼らも焦りだすだろうからね。


怖い思いをさせてごめん、と銀髪の男は続けた。

「ううん、大丈夫」

リフィアは首を横に振った。事態はまだよく飲み込めていないけれど、彼が護ってくれるというのだから怖くはない。慣れない状態に思考は固まりっぱなしだったが、そういう意味での怖さも不安も、驚くほど彼女の中にはないのだった。

「軍部ではさすがに向こうも手を出せないからね。この家の中も。だから行き帰りと休日だけだが、解決するまではすべて合わせるようにする。リンが一人の時に狙われたらどうしようもないからね」
「一緒にいてくれるってこと?」


おどけてアルディアスは笑った。



夜更け、窓からさしこむ月の光を透かしてリフィアは言った。

「アルディアス、アルディーア、アルディ、アル……ずっと愛してる」

私、あなたみたいに何でもできる人じゃないし、誰かにやってあげられることもあまり無いから。

夢の中で歌うように続ける。
ありがとう、と頬にキスを落とすと、くすぐったそうに身を縮めた。

彼女は知らない。
何でもできるように見えることのすべてよりも、価値あるものがあるということを。
何もできないと思っている彼女のたったひとつが、彼が何より切望していたものだということを。

……彼女はまだ、知らない。



そして三日後。今度は朝だった。
前の晩、車の調子がおかしくなったために引き取りを手配してあり、今朝は歩いて出勤することになっていた。

早朝に白い息を吐きながら、一緒に並木道を歩く。
空は青く、空気はすがすがしく澄んでいた。ときおり散歩や通勤、ジョギングの人とすれちがう。
これが狙われているなんて理由でなければよかったのに、とリフィアが思ったときだった。

アルディアスが急に長身をひるがえし、リフィアの背後にまわった。
ざっと肌が粟立つ体感がある。

短く円を描いたアルディアスの腕が、次の瞬間にはジョギング姿の男を取り押さえていた。男の手には短刀が握られている。

「どちらを狙えと言われた?」

リフィアが今まで耳にしたことがないような、低く静かな質問の声が聞こえる。彼女の盾になっている広い背中を、氷晶のオーラがとりまいていた。
短刀を取り落とし、うめき声をあげた後、弱弱しく男は答えた。

「お、女だ。女を殺れば地位と金をやると言われた」
「ずいぶんと陳腐な誘いだな。誰に言われた?」
「そ、それは……い、痛てえっ、やめてくれよ」
「誰に言われた」
「……」

男の呟きは、リフィアには聞こえなかった。勢いをつけて男の身体を離すと、低い声でアルディアスは言った。

「では戻って伝えてもらおう。次は違わずに私を狙えと。今度彼女を狙ったら、組織ごと地獄に連れていってやる。わかったか?」
「お、おぼえてろよっ」

芸のない捨て台詞を吐いて男が駆け去っていくと、アルディアスはため息をついた。
物陰から駆け寄ってきたニールスに、足元の短刀を拾い上げて渡す。

「アルディアス様、吐きましたか」
「駄目だな、蜥蜴の尻尾だ。だがとりあえず追ってくれ」
「かしこまりました」

一礼したニールスが、携帯機器でなにごとか連絡を取る。その様子をぽかんと見ているリフィアに目をやり、ニールスがこちらを向いたときを見計らって銀髪の男は二人を紹介した。

「リン、彼が私の副官のニールスだよ。困ったときは彼も頼れるから、覚えておいて。ニールス、リフィア・ルーテウス伍長だ」

二言三言、お互い慌しく挨拶をしたのは状況として仕方がない。通常のブルーグリーンよりも強い色になっている瞳で改めて上司とその連れに一礼すると、鳴り出した携帯機器を耳に当ながら、ニールスは急ぎ足で去っていった。

アルディアスは心配そうにリフィアを振りむいた。

「大丈夫かい、リン?」
「あーええとー。うん」

機械人形のように彼女はうなずいた。緊迫状態になると、かえって思考の抑揚がなくなってしまうようだ。とりあえず取り乱さないように、とそれだけ必死になっているのがよくわかる。
アルディアスは苦笑し、ではいこうか、と細い背をそっと押した。

自分を暗殺しようとする勢力がある。
だいたいの見当もついているが、一網打尽にするにはもう少し証拠を掴まなくてはならない。
といって、自分だけ安全な場所に隠れている気は彼にはなかった。
リフィアを危険な目に遭わせたくはないのだが、やはりしばらくは囮を続ける必要がありそうだった。
























【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次



気がついたらけっこう日が空いてしまいました^^;
お待たせした甲斐はある・・・かなあ。 ←

ちなみに冷凍庫に入ってたピザは、誰かからの貰い物と思われます。
自分で買ってまで食べないだろうな、この人は 爆

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最終更新日  2010年01月19日 10時23分15秒
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