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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年03月31日
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「……うん、ありがとう、リン」

反対側の手がのびてきて、金茶色の髪を優しくなでる。
しばらくして手を離し、彼は冷めてきた紅茶で口を湿らせた。
自分は悪くないのだと、彼女が言ってくれるなら信じられる気がする。
……けれど。

何度も口をひらきかけては、どうしても声にできなくてため息に変わる。いっそ雨音に紛らせてしまおうかとも思ったが、この胸の痛みは彼女にも感知されてしまっているだろう。

「……あれは、事故、天災、ということで処理された」

ぽつり、投げ出すように言葉をつむぐ。

「ええ。規模のわりに犠牲者は少なかったって聞いたわ。……不幸中の幸い、かしら」


明るい黄緑の瞳で優しく見つめる。

「……あなたがそれを罪だと思いたいなら止めないわ。あなたの気が済むまで、わたしもずっとついてゆくだけ。でも、それは本当に天災のようなものではないの?」

彼女の心遣いにアルディアスはふと微笑んだ。

「ありがとう、だけど私は軍人だからね……殺人の罪なら、もう数え切れないくらい犯しているよ」

前線に立つ一兵士として、そして作戦司令官として。いったい何人の死に手を貸したか数えることもできない。

「そのくせにこんなことを言う権利はきっとないんだろう。
だけど……その少ない二人の犠牲者というのが、……私の母と、二歳になったばかりの妹だったんだ。この話は完全に伏せられたけどね」

息を呑むリフィアに、そしてそれまで反対していた父は、幼い息子を神殿に出すことを承諾したんだ、と彼は続けた。

父親はそして、二度と彼に会いにはこなかった。

「解放してごらん」

訓練所でそう言われたのだ。


皆が怖がるから、それまで意識的に全解放したことはなかった。
だから恐る恐る力を走らせた……しかしそれは急速にふくれあがり、途中で5歳児には手綱がとれなくなってしまった。訓練所の職員たちにも。
力は暴走し、文字通り爆発してから収束した。

そして気がついたら、世界をまるごと失っていた。
圧倒的な力を前にして、精神を明け渡したくなる誘惑はアルディアスにもある。それはおそらく、ほとんどの人にあるものではないだろうか。



……ありのままの自分ではいけない、自分をゆるめてはいけない。自分のすべてを解放してはいけない。
思えば、あの時そう縫い込まれたのだろう。

新しい傷ができたからといって、激しく呼び起こされたのは、そこに古傷があったからだ。
それはリフィアのせいではない。
抱え続けていたのは自分自身なのだから。

割れたカバーガラスを見たとき、そちらに気をとられているふりをしなければ……いや、意識的にそちらを見ていなければ、過去の亡霊に足をすくわれてしまいそうだった。

表情には出さずに済んでいたものの、身体の芯が震えてほんの少しの間でも彼女を直視することができなかったなどと、どうして言うことができただろう。

振り返ったらもういないのではないか、大切な人をまた喪ってしまったのではないか。
理由のない単なる不安だとわかっているのに、その恐ろしさを抑えることができなかった。

子供のころの傷は、自分で思っていたよりもずっとずっと深く刻まれていたものらしい。
だが、そのおかげで独りのときも「飛ばずに」自己を制御しきっていられたわけだから、ある意味手痛い授業料ともいえるのかもしれなかった、が。



パキン、という渇いた音とともに壊れた世界、喪われた人と日常。
それまで立っていた足場が一瞬にして崩れ、自分が誰かわからなくなった。はたして人なのかどうかさえ自信がない。

拠りどころを失ったまま、神殿ではさまざまな勉強や訓練が行われ、巫覡(ふげき)として鍛えられていった。
そして軍部に飛び込み、あげくに振り子のような生活が始まった。

生まれ持つ強いエネルギーは、神事なり戦いなりなにかしらで発散させていないと、自らを焼いてしまうと無意識に気づいていたのだろうか。

世界はあの日に壊れたまま、碇を下ろす場所のないまま。
忙しさだけが残る、寄るべなき危うい二重生活。

「……心が潰れそうになったとき、リフィアン、君に出会ったんだ」

あの冬の陽の中で、明るいペリドットの瞳をきらめかせ、いとも簡単にリフィアは言った。
私はあなたの正体を知っている、と。
それは私にとって衝撃だったんだよ、と言われて、彼女は誇らしげに微笑んだ。

「そうよ、アルディ、あなたの正体はわたしが知ってるわ」

それがどんなものかを説明しようとして、リフィアは口をつぐんだ。


……近いのか遠いのか掴めないところへ、透き通ったなにかが流れ落ちている。
全てに等しく注がれる色のない透明なものは、光も闇も等分に含んでいる。 

闇は穢れの全てではない。 
光は優しさばかりではない。

その白色の光を見つめて、光の滝の前にひとり佇む人影が見える。

霧越しに途切れ途切れでみえるような情景でも、そこに居るのは彼。
彼だとわかるのだけれど。


これをなんと伝えたら良いのか。リフィアは困ってしまった。

心話でと思っても、形に掴もうとするそばからそれは散じてしまう。
しかし意識しなければ自然とまとまって心に浮かぶ。
そこに確かにあると確信は持てるのに。

うまく言葉にできないものをしばらく追おうとしてから、あきらめて彼女は顔をあげた。
いつか透明な光が凝って雫になったなら、手のひらに包んで彼に贈ろう。

「私に見えるあなたは、そんな暗い眼になるようなものには見えないし、だからといって私が上っ面しか見てない訳じゃないと思うわ。迷子になっても私が見つけてあげるから、安心なさい」

「リフィアン……」

アルディアスは泣き笑いのような表情で、隣に座る細い身体を抱き寄せた。
温かな感触が腕に伝わる。

「アルディ、アル、言ってちょうだい、わたしに何をしてほしいか。一人で何でも背負うのはあなたの悪いクセよ」

身体をひねり、アルディアスの頬を両手で挟んで目を合わせる。
目を閉じこつんと額をあわせて、小さく彼は言った。

「……そばにいて……」

そばにいて、どうかここに。

君のぬくもりが私を支える。
私を人でいさせてくれる。


リフィア、私と世界とを繋いでくれる確かな碇。


















<Lifia - Fascinate … ->
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【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次



とりあえず一段落をつけたい気分だったので。
でも次の話はまだ書けてないんですけどね^^;


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最終更新日  2010年03月31日 11時10分05秒
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