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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年05月20日
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作戦から帰還すると、アルディアスには山盛りの書類が待っていた。二週間軍務から遠ざかってしまうため、その間のことも今のうちに手配しておかねばならない。



潔斎も直前の、最後の訓練を終えた夜。
星空に三日月のかかる中、二人は守衛に挨拶をして南門を出た。

しいっ。

唇の前に指を立てて、いたずらっぽくアルディアスは片目を閉じてみせる。

(どこへゆくの?)
(いいものを見せてあげるよ。いいかい、そこの角を曲がったら飛ぶからね)

ひとつめの角を曲がり、善意から彼らを見送ってくれる守衛の視線が届かなくなると、アルディアスはリフィアを片腕に抱いてテレポートした。


よそとは違う、自分を包むしっとりと濃密な空気に、リフィアは目をしばたたいた。
ここはもしかして、奥院の禁域の森ではないだろうか?

(当たり。この時間には誰も入れないけど、声は出さないで)
(まあ、厳重な結界があるのじゃないの?)

びっくりしたリフィアに、アルディアスは笑った。

(そりゃ勿論あるけれど。ここの結界の主は誰だと思う?)
(……あなた)
(そういうこと。……ほら、あっちを見てごらん)

長い指が指すほうに目をやると、咲き乱れる青い花弁の睡蓮の池の上に、いくつもの小さな明かりがふわふわと飛びちがっていた。

はっきりした違いではないが、ほんのりとピンク傾向のもの、ブルーっぽいもの、イエロー風味のものなどがある。

(まあ、きれい……蛍? 蛍ってあんなに色の種類があったかしら?)


よく見ていてごらん、形がゆらめいて変わったりするよ。

アルディアスの言葉に目をこらすと、いくつかのほのかな光がゆらゆらと広がり、羽のある何かの形をとって動き出した。

(私が知る限りでは、ここまではっきりした形のとれるものは、セントラルではこの奥院にしかいない。こういう夏の盛りの夜が見るには一番いいんだけれど、潔斎に入ると外出できなくなってしまうからね)

(……懐かしいわね)

夜の闇にほんのりとした光の輪舞に見入って、リフィアは呟いた。

ずうっと昔別れた友達に、また会えたみたいだ。

リフィアはセントラルから他の街に引っ越したことも、どこかの寮に入ったこともないから、音信の途切れた友達というのはそれほどいない。
けれど三日月の薄い光に遊ぶあの光の珠は、懐かしい。

子どもの頃に、夏の強い日差しが造る、森の影が深いところに行くと似たような存在達が迎えてくれた気がする。
小さい頃……そう、あの熱射病の前、まだ子供であることを自他共に許されていたあのころに、あいまいな境界線のなか物語に浸かっていた真夏の記憶。

(もっとぼんやりした形のものは、外苑の森にもたくさんいるからね。子供なら見えただろう)
(どうして大人には見えないの?)

素朴な疑問に、アルディアスはちょっと困った顔で笑った。

(さあ……どうしてだろうね。日々生きるのに妖精は必要ないと思うのかもしれないし、忙しさに紛れてしまうのかもしれない。心を留めてさえいれば、彼らはいつでもそこにいるのだけれど)

夜空のような瞳で、彼は妖精たちを見やった。

生きるのに物語はいらないと、そう思えば彼らの姿は消える。昼間の星が見えなくなるように、人はあってもないものだと思い込む。

効率を問われる世の中で、心遊ばせることは無駄なのだと、時は金より貴重だと思うならばさらに。

(あなたは彼らと同じ世界にも生きているのね)

警戒を解いたのか、少しずつ近寄ってきた光にリフィアはそっと手を伸ばした。
アルディアスはきっと、成長してもずっとこれを見ていたのだ。

(子供の頃から、見えなくなったことはないけれど。同じ世界……というのとはちょっと違うかもしれないね)

光の珠を指先や銀髪にとまらせて彼は言った。

(じゃあ、はざま……ううん、両方の世界を繋ぐ人)

細い三日月を背にたたずむ彼の姿は、妖精のひとりだと言っても通りそうだった。
思わず伸ばした片手は、しっかりと温かい手に握り返されて彼が人間だと教えてくれたけれど。

神官というのは、殺伐とした現実とどこかとの狭間に生きる人たちなのかもしれない。
いや、両方を繋ぐだけではなくて、自らどちらにも行き来する。
大人が忘れてしまう物語の世界すら、ずっと当たり前に見ながら、そうしながら普通の言葉で世界をそれぞれに伝える役目。
そういう人のことを巫覡(ふげき)というのかもしれないな、とふとリフィアは思った。



蛍の話が出たのは、今日の訓練の合間のことだった。休憩時間には、だいたい奥にある睡蓮の池にゆく。
大きな四角い池には、ここ中央の大神殿にしかないという青い睡蓮が咲き乱れていて、それを石のベンチに座ったり、ゆっくり散歩しながら眺めるのが常だった。

あともう少しで大暑となる日々の陽射しは強い。池のまわりは木陰が多く、涼やかな風が吹いてはいたが、のんびり歩くだけでもうっすらと汗がにじむ。

縁から遊歩道に伸びるようにして咲いている花にリフィアが顔を近づけたとき、葉裏に隠れていた小さな虫がふいと飛んでいった。

「あれは蛍かしらね? アルディ、この池でも蛍が見られるの?」
「ああ、花と一緒に見られるよ。奥院のそばの小さい池にも同じ蓮が咲くが、そちらのほうが蛍は多いんだ」
「いいわね。それは綺麗でしょうね」

青い花弁に幽玄の光が留まるようすを想像して、リフィアは嘆息したのだった。
そのときはそれだけだったから、帰りに連れてこられたのには驚きだった。

奥院の池は、中庭の巨大なプールのようなものと比べるとずっと小さいが、それでも十分な広さがある。
池の中央に大人の腰ほどの高さの円柱があり、そこが湧き水の源泉なのだそうだ。元々この湧き水を慕って人が集まり、やがて神殿ができたと聞く。

うす青く月影に浮かび上がり、ところせましと咲き乱れる蓮の花。

それは一幅の絵のようで、まるで違う世界の風景のようだった。
木々の陰は深く太古の波動がなお息づいて、密度の濃い空気の中に精霊たちが遊ぶ。

青い睡蓮がぼうっと光っていると思ったら、中から仄かな光る珠が数個飛び立っていったりする。
花の中に精霊や蛍が入り込んでいるのだろう、花の形をした青い灯りがぼんやりといくつも点っていた。

それは夏の夜の夢のように、さやけに物語を囁く月影のように。


明後日から潔斎に入ったら、こちらの世界に繋がってゆくのだと思うと、リフィアは少しどきどきした。
























【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次



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最終更新日  2010年05月20日 15時07分07秒
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