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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年05月28日
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作戦帰還後すぐ、オーディンはアルディアスの呼び出しを受けていた。

「ニールスから聞いていると思うけれど、今度の大祭の神殿警備、うちで今手の空いている隊員に頼みたいんだよ。
私の部隊から警備の応援を出した方が、指示も行きわたりやすいだろうしね。心当たりに声をかけてもらえるかい」
「了解」

オーディンはニヤッと笑う。この人は、こんなところでも命令せず、頼んでくる。はるか階級が下の軍曹に対しても。

まったくこれだから面白いと、気分よく退室しかけた男の背に、後ろからアルディアスの声がかかった。
振り向くと、少しはにかむような笑顔を見せる。

「今度の大祭でね。私の婚約者を伴侶役として迎えるんだ」

オーディンはブルースピネルの瞳を思わず見開いた。婚約者?

と同時に、この上司にも普通の幸せが訪れたことに、喜びを禁じえなかった。

「そうか…、そうか」

破顔して何度もうなずき、動揺を抑えるために、大祭警備の細かいことを少し再確認しておく。詳細はニールスに伝えてあるということだ。
少し落ち着いて退室する前、ドアを閉める直前に、彼は一言だけ言った。

「じゅ、いや……アルディアス、どの。おめでとう」

准将でもなく、大神官でもなく。
一人の人間として、オーディンはお祝いが言いたかったのだ。
名前を呼ぶのはなぜか恥ずかしくて、普段は決してしないのだが。
銀髪の上司は莞爾として「ありがとう」と穏やかに言った。

上司には、大祭後まで会わなかった。

オーディンは部隊の皆にその嬉しい知らせを伝えた後、何か贈り物をしないか、という総員の提案を受け、以前からたまに立ち寄る銀細工師の店へ行った。

目当てのものは、銀のロケットだった。流麗なアラベスク模様に細い金の線が埋め込んである。
これならば軍服の下につけられるし、戦場でも愛する人の肖像を入れておけるだろう。

「お前、こういう店どうして知ってるんだ?」

不思議そうにニールスが聞くのへ、

「俺、こういう細工とか、職人仕事って好きなんだ。この店は高いかも知れんが、腕は確かだぞ。この指輪だってここで買ったんだ」


小指ほどの幅の、ぱっと見はシンプルだが、よく見れば指が当たるところも痛くないように丁寧に作りこんである作品。

「繊細なものも作れるし、こんなふうにごつい感じのもできる」

帰り道、ニールスは足元の小石を蹴りながら同僚を見た。

「オーリイ、お前、ツインとか考えたことがあるか?」
「…ツイン? ……わからん。……生きてるうちに会えるかどうかも、わからん。そういうお前はどうなんだ、さっきあの店で女物の指輪にやたら熱心だったじゃないか?」
「ああ…いや…」

ニールスは赤面し、ははん、とオーディンは腕を組んだ。



面会の呼び出しがあったのは、大祭を直前に控えたリフィアが仕事の割り振りにあたふたしている頃だった。
オーディン・ガーフェルという名前は聞いたことがあるような気もするが、仕事柄毎日たくさんの軍人の名前を相手にするので、どんな内容だったかは覚えていない。

仕事に切りがつくまでラウンジで待っていてもらうことにして、彼女は内心不思議に思った。
顔も名前も知らないし、いったい何の用だろうかと、少し不安というか謎というか。

十分ほどしてからラウンジに行き、どなたかしら、とリフィアは周囲を見渡した。
広い空間にガラスの丸テーブルと焦げ茶色の円筒形のソファ、大きめの観葉植物の鉢が点在し、人々が思い思いに新聞を読んだりテーブルを囲んで話したりしている。

きょろきょろしていると、一人の男がソファから立ち上がってやってきた。長めの黒い髪に、夜影のような濃い青の瞳。

「おい、ちょっとあんた」

ぶっきらぼうな呼びかけに目を向けた彼女の姿を上から下まで眺めて、納得したようににかっと破顔する。

「お、あんただな? リフィアさんっていうのは。そうか、あんたがそうか……」

男は日に焼けた顔に満面の笑みを浮かべて話しかけてきた。

「あの……?」

戸惑ったリフィアが首をかしげると、自分が急に声をかけたことが明らかに変だったことに気がついたらしい。男は慌てて自己紹介をした。

「あ、お、俺の名前はオーディン・ガーフェルだ。フェロウ准将の部隊にいる。准将には長年、世話になってるんでな」

がしがしと片手で頭をかき、こちらこそお世話になっておりますとリフィアが頭を下げる間もなく続ける。

「今度あの人の伴侶が見つかったっていうんで、部隊のみんな、えらい喜びようなんだ。みんな、自分のことよりも喜んでるんだぞ、うん」

リフィアはあっけにとられていたが、彼のほうはだんだん調子が出てきたらしい。また白い歯を見せて、オーディンは子供のようににっこりと笑った。
その満面の笑みに、思わずつられてリフィアも笑う。

「ありがとうございます」
「俺も、うれしくてな。どんな人なんだろうと思ってな。あんたを探してきちまった。おめでとうって言いたくてなあ。そうかあ、あんたかあ。よかった」

感極まったように少し言葉に詰まり、ひとしきりうんうんと一人うなずく。年齢はアルディアスよりも少し上くらいだろうが、笑う目尻に寄った皺が優しい。
ブルースピネルの瞳をあげてリフィアを見ると、彼は続けた。

「あんたは知ってると思うが、准将は、優しい人だ。それに、強い人だ。……それだけじゃない……、あの人はとてつもなく大きなものを背負ってる。俺には思いもつかないような深さで、あの人はいろんなことを思ってる……」

その言葉は、ぶっきらぼうなだけに真摯だった。
あんまりアルディアスを褒められるので、リフィアのほうはだんだんくすぐったいような気分になってくる。

少し相手を観察する余裕がでてきた彼女は、エル・フィンさんとはずいぶん違うわね、と考えた。まっすぐであけすけで、でも感じはとてもいいけれど……印象的な方だ。
アルディアスとも以前紹介されたニールスさんとも、まったくの別方向のよう。もしかして夫になる人の率いているのは、ものすごくユニークな部隊なのかしら。

しかしそんなリフィアの内心を知らず、オーディンはしごく真面目な表情で言った。

「あんた、あの人を一人にしないでやってくれ。あんたならできると俺は思うんだ」

彼の脳裏に、先日の作戦の記憶がよみがえる。
あの時まさに鬼神のような戦いを見せたアルディアスは、その夜喪われた命にむかって頭を垂れ、祈りをささげていた。

そんなに優しくてなんで軍人なんかやってるんだ、そう問うた彼に、上司は黙っていたけれど。
私は優しくなんかないさ、皆同じだよ、と言っていたけれど。

上司の祈りは贖罪ではない。
かすかに耳に聞こえたのは、ただひたすらに魂の安寧を願う祈りだった。
敵を殺した罪も罰も真正面から引き受け、そこからけして逃げようとはしない。それは共に戦場を走ったオーディンにはよくわかっていた。

自らを化け物と呼んでなお、世界のすべてを愛する人。
軍隊生活ももう長いが、あんなふうに毎晩祈る人を、ほかに彼は知らない。

「軍人が大神官を兼ねるなんて世も末だ」、世間にそういう風評があることを、彼は知っている。
アルディアスに直接ぶつけたことはないが、おそらく上司は否定もせずただ静かに微笑むのだろう。
確かにそうだね、と。

その穏やかな微笑の裏にどれだけの葛藤と哀しみを抱えているか、うすうすとオーディンは気づいていた。

相反する両極からのしかかる責任を、それぞれ完璧に果たしてしまうから。
だからこそあの人は逆に追い詰められてゆく。

もっと無能だったら、もっと人の想いや命に鈍感だったら、もっと無責任な人であったら。
きっと、ずっと楽に生きられたであろうに。

深いところをじっと見つめて、准将は一人でどこへ行ってしまうのだろう、と見ていて不安になるのだ。
何かできるだろうかといつも思うけれど、結局何もできずに歯がゆいばかりで。

だから彼は彼の立つ戦場で、少しでも上司の意がよく反映されるように、精一杯のことをする。
ニールスもエル・フィンも、おそらくは同じだろう。
彼らは戦場でしか役に立つことができない、けれど。

「変なことを言っちまって、悪かったな」

ほっとしたようにオーディンは笑って手を振った。
軽く頭を下げ、小さく手を振り返すリフィアの笑顔に満足して帰途につく。
うん、いい笑顔だ。

この人なら。
この娘さんなら、きっと准将の心のもっとも寒い場所まで、その手を伸ばすことができるだろう。
太陽のように、凍えたあの人の心を溶かすだろう。

ああ、よかった。准将も心を分かち合える人がいて。
あの人は、もう一人で哀しみを背負っていかなくてもいいんだ。

オーディンは考え、と同時に上司が軍人であることも思い出した。

(……無いことと思いたいが、思わぬ別れもあるかもしれないな…)

一人帰り道で心に呟き、ちらりと切ない気持ちになった彼は、あわてて頭を振った。
そんなことがあるはずがない。いくら軍人でもあの人にかぎって、最愛の人を置いてゆくなどということが。

頭にこびりついた黒いもやを払うべく、金茶の髪にふちどられた幸せそうな笑顔を思い出す。
彼女の笑顔は上司の深い哀しみにともる光であり、戦いばかりの世界で、希望の光でもあるようにオーディンには思えた。
















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【銀の月のものがたり】 道案内

【第二部 陽の雫】 目次



実はこの話、もうちょっと後の予定だったんですが、どうにも書きかけのが進まなくて。
うだうだ悩んでたら、順番入れ変えたほうがいいんじゃない?ってことに気づき。
いくつか入れ替えて調整したら、こうなりましたw

どうやら、ウエサクの日にアップしろというお達しらしいです。笑


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☆ゲリラ開催☆ 5/27~5/30 満ちるウエサクの光 ~一斉ヒーリング







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最終更新日  2010年05月31日 21時39分16秒
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