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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2010年07月24日
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眠りの淵を沈んだり上がったりしているデュークと、少しずつ色々な話をした。

司令官のリフレッシュ戦のこと、その場での<ダウンロード>のこと。

グラディウスの最期のこと。
長く組織のトップにいたシックスアイルズと呼ばれたチームが全滅したときに、ただひとり生き残って情報をデュークに伝えたのが彼だ。

しかし負傷の程度及び年齢(三十代となり耐用限界)から再戦は望めず、記憶を取り出した後は解剖実験体・標本室行きとなった。
その状態であったときも、うっすらと感覚が残っていたこと。
維持槽に入った死体を並べた奥津城で、デュークが彼を見つけたときのこと。
それをグラディウスは知っていたこと。

おそらくは何万年も経って今生、デセル達の手によってその種火が解放され、本体のもとへ戻ってきたこと。



昔から今へ、心から心へ、時を超えて波紋のようにゆらめき響きかわす種々の物語たち。



同じチームにいた黒髪の双子、アイレイとアランとも、本体を介してこのときはたくさん話をした。

チームにおいて、グラディウスは基本的に単独行動である。
姿を隠し遊撃の位置にいて、チームをフォローするのが役目だった。

できるだけ生還させたいという司令官の望みのもと、チームに何かあれば出来るかぎり助けにゆき、そして負傷した彼らを肩にかついで戻ることも多かった。

銀髪の長身に担がれたアランは、最初怒っているのかと思った。
荷物のようにどさっと落とされた、いいんだけど、などと言っていたからだ。

しかし、そんなに鬱憤が溜まっているなら相手をしようか、数発なら殴らせてやるぞと話していると、だんだんとそうではなかったことがわかってきた。

双子の兄弟は、グラディウスに父性を見ていたのだという。
無口な彼の広い背中に安心や信頼を感じ、気絶したり痛みに耐えつつ担がれていても、唯一安心できる瞬間としてその時間が好きだったのだと。
他に接触する術はなかったから。




「そうだったのか。
 確かにそれ以外、接触はなかったな…

 アラン、アイレイも。

 もしまだそう思っているのなら、今来るといい。
 今なら俺もデュークも、お前達を抱きしめてやれる。




それが言えたのは、まさに彼自身が癒されてきていることの証だったろう。
しかしアランは泣きながら首を横に振った。

戦災孤児として施設に来てからは特に、双子のアイレイのためだけに自分を律して生きてきた。
彼のためなら何でもできる。いつだって死ねる。命知らずにも、特Aクラスの戦闘員に逆らうことだって何でもないのだ。
そうしてぎりぎりまで頑張って生きた分、アランは自分の甘え方を知らなかった。


「わかんない、わかんない」


混乱した顔で嗚咽するばかり。隣で号泣し、手探りでアランを探しながらアイレイが言う。
二人の姿は、泣きながら少しずつ子供返りしているようだ。


「アラン、アラン。
 ごめんね、アラン。
 ずっと感情を押し籠めさせてきてしまったね…
 もういいんだよ、…僕が言えることじゃないんだけど…」


「アイレイ。
 わからないんだよ。どうしたらいいのか。
 だって…ありえないだろう、そんなこと。
 これは何かと引き換えなのだろうか?
 アイレイは理解できるのかい?

 その幸せを受け入れることの代償として、グラディウスとデュークがいなくなるとか、消えてしまうとか
 きっと不吉なことが起こるんだ。

 だったら、僕はいい。
 皆に会えたことで、もう充分幸せなんだ」


「アラン。
 わかるとか…わからないとか…あんまり考えられないんだよ、僕。
 ただ、出された手を取るか、取らないかだと思うんだ。
 自分の気持ちに素直になっていいんだと思うよ。
 だって、その方が幸せだし、ほっとするでしょ?
 今まで、アランはずっとずっと、僕よりも、いや僕の分まで頑張ってきた。
 もう、じゅうぶんだと思うんだ。
 代償が必要だっていうんなら、もうアランは先払いしてるんだよ。」


グラディウスは笑った。
手を差し伸べられれば逃げ出し、伸べられなければ不安に苛まれる。そんな臆病なうさぎが、彼の中にもいる。
甘えさせる覚悟があるならば、安堵を覚えるまで最初はこちらから強引にでも捕まえてしまうことだと、彼は自分の経験からわかっていた。


「では、子猫二匹まとめてこちらから捕まえよう。
 代償として消えたりはしないよ。
 大丈夫だ。」


本体たちの了解を得ると、グラディウスは眠るデュークに、子猫を捕まえて戻る、と言い置いて外に出た。
ほどなく黒髪の幼子二人を両腕に抱えてくる。
彼らは小さくてまるっこく、3歳のリデルとほぼ同年代か少し大きい位に姿が縮んでいるようだった。

グラディウスが戻ったとき、デュークもまた支払いを終え、この世界に戻れてベッドに起き上がっていた。
「子猫二匹捕獲したぞ」という声に、そうだな、と笑顔が返ってくる。

心配させたな、とデュークは言った。

皆の療養のために、場所を癒しの波動に満ちるブルーヤロウに移すと、グラディウスはデュークのベッドの脇に寄りかかり、あぐらをかいて座った。

両膝に一人ずつの幼子を抱いて、双子の父とはこのようなものだろうか。
二人はしばらく逡巡したり泣いたりしていたが、そのうち広い胸に顔を埋めて寝入ってしまったようだった。

「とーさん、か?」
「……ああ、不思議なものだな」

ちいさい寝顔を覗き込んで微笑むデュークに囁き返す。家族というものを知らない、自分の親も見たことがない彼が、幼子に父と呼ばれる日がこようとは。

それはまったく不思議な感触だった。
腕の中のぬくもりは小さくてやわらかく、けれど、びっくりするほど暖かい。
膝に抱いてくれる主を信頼しきって眠るその無邪気な寝顔は、表情の少なかったグラディウスを自然と微笑ませた。

彼らはしがみつくその小さな手で、どうやらはるかに大柄な自分を抱いてくれているのらしい。

どんなに殺戮をしても、血に恍惚となることすらなかった自分。
ただ淡々と相手の動きを止めた、それだけだ。
罪科に殺人を加えても壊れる場所がないほど、たぶん最初から壊れていたのだろう。
相手の痛みも自分の痛みも、感じることのないほどに。

なのに子供達のぬくもりは、やわらかな場所の在り処を彼に教えてくれる。
罪ばかりを重ねてきたが、自分には誰かを護る価値がまだあるのだと、その寝顔が教えてくれる。

幼子を抱きしめるというのは、たぶんそういうことなのだと、グラディウスは思った。


翌日からは、元々ブルーヤロウに住んでいるリデルも混ざって幼児三人となった。
シルバーグリーンのクローバーが覆う広い草原を、団子のようにくっついたり離れたりして走り回る。
湖からは少し離れていて危険はないし、時々花が咲いていたりさまざまな草が生えて小さな妖精が隠れていたり、子供の遊びには事欠かない。

きゃははは、という楽しそうな笑い声がこだまして、草原をわたる風さえかすかに微笑んでいるようだ。

思いっきり駆け回って息をきらした三人は、近くで見守ってくれていた銀髪の男のところに、はあはあ言いながら戻ってきた。

「とーさん!」

身を屈めるように座っている長身に、三人同時にむぎゅっと抱きつく。順番に頭を撫でてくれる大きな手が嬉しい。

「とーさん、肩車して」
「あ、いいなあアラン。ぼくも」
「りでるも!」
「……三人か」

グラディウスは目をしばたたき、しばらく考えてから両腕に双子を抱えた。
そのままひょいとそれぞれの肩に乗せて立ち上がると、賑やかな歓声があがる。
リデルが指をくわえて見上げているが、さすがに重量はともかく危険で乗せられないなと参っていると、ゆっくりと近くに来た長身が彼女を抱え上げた。

「では、リデルは私が肩車しよう」

もう一人の「とうさん」の、黄緑の瞳が優しく笑っている。そうして彼らは、ひとまずブルーヤロウの家を目指した。

家ではうさぎがおやつにとクッキーを焼いていた。
三分の一は大人用に生地をとりわけ、ジンジャーをぴりっときかせる。

デセルに内緒で作って驚かせたいからと、わざわざ同じ本体のマリアに習って作っていたのだが、ブルーヤロウのキッチンを使っている段階でリフィアには筒抜けだ。
しかしリフィアは傍らのアルディアスに微笑みかけ、しらんふりをしてお茶の声がかかるのを待っていた。

窓の外では、家近くに来て肩車から降りた子供達がはしゃいでいる。
アイレイがデュークに抱っこをせがんで抱き上げてもらったのを見つけ、アランが走り寄った。

「ねえ、次はぼくの番だからね」
「ああ」

若草の瞳が微笑み、大きな手がくしゃりと黒髪を撫でる。くすぐったそうに頭を押さえて照れた笑顔を浮かべると、アランはまたすぐ走っていった。
それを見たアイレイが、自分ももう降りて同胞の背を追いかける。

慌しいながらも元気なことだ。時々港に寄ってはまた航海にゆく、彼らはちいさな冒険船のようだった。


小さな双子が「父さんたち」に甘えて遊んで癒されることは、好んで彼らに向かうデュークとグラディウスをも癒してくれる。
そうして一面が癒されることは、本体を同じくする他の人格達を安定させ、そして総体を幸せにむかわせる。

すべては繋がり、重なり合っている。

花びらの一片が開けば他も開いてくるように、だから受け入れて歩くなら、癒しの課程は加速度をつけてやってくる。

そしていつか、花は大きく咲き誇るのだろう。
それぞれの胸のうちに、けして枯れることなく。










・奥津城でデュークがグラディウスを見つけたときのこと
<デューク  - living dead ->

・デセル達によってグラディウスの身体が解放されたこと
<グラディウスとデューク - record 3 ->

・解体されてゆくデュークの身体をリデルが集めていたこと
<インナーチャイルド>


<デューク  - Tint verl ->


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【銀の月のものがたり】 道案内


外伝 目次


外伝、これにてひとまず幕でございます。
次はヴェールへ戻る……予定(笑)


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最終更新日  2010年07月24日 15時29分16秒
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