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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2011年01月30日
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組織にはリフレッシュ戦というものもあった。


当然、鈍っていれば戦死となる。
そのために専門戦闘員たちがフォローに回るわけだが、傲岸で兵士に嫌われているような司令官は、生きて基地へ帰ってくることはほとんどなかった。

特に味方から傷つけられるわけではない。ただ適切なフォローのあるなしが、過酷な戦場では紙一重の生死を分けていた。


グラディウスがデュークについてリフレッシュ戦に出たのは、彼らが組んで一年ほど経ったころだった。

グラディウスは他を圧する長身である。その長い銀髪と紅い瞳が目を惹き、敵味方から「死神」と恐れられている。
デュークも一回り細いくらいで、体格はほぼ変わらない。

黄緑の瞳を光らせ、血刀を振るうデュークをグラディウスは黙って見やっていた。


やはり<泣き虫>なのだな、と彼の渾名をおもしろく思う。

目前の敵兵を危なげなく片付けた後、蛍光色の燐光を放つような瞳でデュークが相方を見た。

「これは気楽でいいな。お前には足手まといで申し訳ないが」
「いや」

短く答える。
これは嘘ではなく、実戦に出たての新兵どもより、デュークの腕前ははるかにましだった。

コンクリートに囲まれた侵入経路。左手の広い通路から敵兵の一団が駆けてくるのを認めて、グラディウスはそちらへ踏み出した。

剣気なのだろうか、重く大きな空気の塊が動いた気がして、思わずデュークが足に力を入れる。
高速で重装甲車両が脇を通り抜けていく時に似た、ぶわりと煽られそうなほどの空気の流れ。

そして次の瞬間にはグラディウスの手には血のしたたる長剣があり、敵の半分近くはすでに倒れていた。

デュークはグラディウスの担当として、彼の戦闘は「蒐集家の小部屋」ですべて追体験している。戦略部員一人で2人の戦闘員の記憶を担当するから、グラディウスと共に戦った人間の記憶も追ったことがあった。



(これは、隣に立つ者は怖がるだろうな)

グラディウスの戦いをじかに自分の感覚で捉えてみて、デュークは一人ごちた。

銀髪の長身が踏み出したとき、一瞬遅れたり身を引いたりする視点の揺れ。至近距離から飛び出した戦車を無意識に避けようとするようなものだろう。
そしてあっという間に積みあがってゆく屍の山、返り血を浴びて赤く染まった長躯。
それらの恐怖から「死神」の呼び名が味方にも広がっているのだと思われた。


デューク自身は、怖いとは思わなかったが。

そんなことを考えていたのは、時間にすればほんの何秒かであったろう。
もちろんその間警戒を怠っていたつもりはないのだが。

「動くな!」

突然響いた怒鳴り声にデュークが呼吸と動きをぴたりと止めた刹那、圧倒的な質量が彼の正面に迫った。
赤をまとった銀色の筋が、顔のすぐ横を豪速ですり抜ける。

思わず見開いた黄緑色の眼に、デュークの背後を見ている紅い瞳が間近で映った。

数瞬ののち、無言で剣をひきながらグラディウスが一歩下がると、いまさらに背後からあがる呻き声。振り返った視界に入ったのは、眉間を貫かれて崩れ落ちる敵兵の姿だ。

「……すまん」

呼気とともにデュークが言う。グラディウスは油断なく周囲に眼をくばりながら、わずかに片方の肩をすくめただけだった。

いくら警戒を怠らずとも、相手の力量が上ならば知らぬ間に忍び寄られることはある。仕方のないことだ。
その横顔はそう語っているようで、気にもしていないふうではあったが、デュークの身体に冷たい汗が吹き出た。

実戦に参加すると、自分のミスが戦闘員ではなく、自分自身に跳ね返ってくるのがいい。
だがそのフォローにグラディウスが入るのでは意味がない。

(適当にしてはいられないな)

デュークは改めて身をひきしめた。

(このままでは自分が遅い。足手まといになる)

短く目を閉じて息を吸い込み、ぐっと自らのギアを引き上げる。開かれた瞳は黄緑の燐光がひときわ増え、ゆらめく鬼火のように見えた。

デュークの様子が変わったことを察知したグラディウスが、無言で司令官を見やる。
立ち姿から違っている。

(<再生>か?)

司令官は、戦闘員達の戦闘記憶そのままを追体験している。深度催眠によって自分のことのように体験したそれらは、当然記憶として司令官の中にも蓄積されている。

そのため、実際の戦場でそれらを<再生>して同じように戦おうとする司令官が多かった。
いや、自分の記憶として蓄積されるようなものだから、(自分はできる)と思い込んでしまうのかもしれない。

だが実際は、人間が違うのだからそのパワーもスピードも技術も、もっと言えば体格やリーチ、攻撃のタイミングや衝撃度がいちいち違ってくる。
それらを飲み込んで消化できていない司令官の<再生>は、まるで幼児のお遊戯のようだった。
やらないほうがまだまし、というレベルだ。

デュークが再生をかけようとしているのは、横にいる自分だろうか。グラディウスは元は右利きだが、幼少時からの訓練でほぼ両利きに剣を扱えるから、彼が左利きでも問題はなかろう。

さてどうなるか、と見ていた矢先のことだった。

威嚇の叫び声とともに、ばらばらと敵兵が通路の曲がり角から走り出て来る。
それに向って、グラディウスの隣から鉄の塊のような質量を伴って風が走った。

その風は黄緑の燐光を散らしつつ、左腕の剣を振るう。剣筋はさらに無駄も隙もなく、なにより先ほどよりも数段早い。

追って走ったグラディウスは、デュークの右に立って縦横に剣を薙いだ。しぜん二人の長身が半背中合わせになる。
司令官殿の通った後にちらりと視線を投げると、自分が通った箇所とほぼ変わらない死屍累々の様子。その致死傷の場所や倒れ方から見ても、自分の剣筋とかなり似ている。

(これは……)

面白そうにグラディウスは唇の端を上げた。
わざと半歩遅れて付き従い、デュークの剣技をじっくりと見る。
見れば見るほど、それは技もスピードも自分の動きと同じだった。

さらに敵に囲まれ、互いに背を預ける形になっても何も心配がないというのは珍しいことだ。その分前方の敵に集中できる。

いくら<再生>をかけても、こうしたグラディウス自身が体験しづらい状況まで同じく真似できるわけがない。
とすると、デュークのやっていることはリロードよりもむしろダウンロード、あえて言うなら相手を憑依させるようなものか?

(面白いな)

珍しく心躍らせて、高揚する気分のままにグラディウスは戦った。

今まで何人もの司令官のリフレッシュ戦につきあったが、たいていはろくな<再生>すらできはしない。
なのに一足飛びにそれを超えて<憑依>だって?

(デューク、と言ったかな。面白い奴)

普段人の名前など覚えようともしない彼が、前を走る背を興味深げに見つめる。
戦場には血なまぐさい風が吹いていた。


















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【銀の月のものがたり】 道案内

【外伝 目次】



数日前にボイスとついったで呟いた、グラディウスの外伝です。
埋もれていたので出してみましたw

<憑依>をかけるとグラディウス二人と同じになるので、あんなのが二人並んで戦ってたらそりゃ怖かろう 爆

そしてあともうひとつ、狼さんの話があるのを思い出したんだけどw
おーい、どうします~? (ここで聞くな


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最終更新日  2011年01月30日 21時56分41秒
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