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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2011年03月29日
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ニールスとオーディンは、それぞれグリッド司令部に所属し忙しく立ち働いていた。


「ニールス、お前顔色悪いぞ」
「ああ、うん…」

ニールスの返事は煮え切らない。
司令部のシフトはきちんとしているが、突発的事態があれば対処せざるを得ないため、二人は休日返上で忙殺されていた。
ましてニールスの能力ならばそれをこなせてしまう。なまじ有能なだけにやりすぎてしまうタイプが、どうして自分の周りには多いのだろう。

僚友を医務室まで連れてゆき、処置を受けているのを見ながらオーディンは椅子にもたれて座りつつそんなことを考えていた。
頭の後ろで腕を組み、片足をもう片方の膝に乗せてぼんやりと窓を見る。



やわらかな花の香り、明るくゆらめく優しい木漏れ日。足元には淡い色でとりどりに咲き乱れる花達。
隣を見るとニールスもそこに立っていて、どうやら図らずも二人で時空を超えてしまったらしい。

(花園か……ここは、変わらないな)
(そうだな)

樹の陰から遠目に懐かしい景色を見やり、二人はふっと顔を合わせて笑いあった。
彼らにとってもまた、花園は遠い故郷なのだ。

かつてルシフェルの神殿にはそもそも、時間の概念がなかった。一方向に流れる時間を持つ棒の隣に、丸いボールをひとつ置いてあるようなものだろうか。
ボールには時間がなく、棒のどこへも基本的にアクセスできる。

神殿に所属していたマリアの花園も、時間の流れはあるようなないようなだった。
生まれたばかりの赤子から学齢前まで、常に十人から二十人ほどの子供たちが育てられ、成長する彼らの上にはゆっくりとした時間があった。けれど面倒を見ているマリアやルシフェルの姿は変わらず、そしてそれは彼らにとって、しごく当たり前のことだったのだ。

シエルやサラが育てられたそのずっとずっと昔に、ニールス達もやはりここで生まれ、マリアをママと呼んでいた。


淡いきれいな色合いの花園に、大きな安心感を醸すルシフェルの存在、銀髪のマリアと幼子たち。
子供たちが幸せそうなことと、自分たちの懐かしい場所が変わらずにそこにあることがわかって、なんだかとても楽な気持ちになる。

「お前も、どんなに時が経っても、いつまでも私達の大切な宝物なのだよ」

ルカに向けられたルシフェルの言葉とマリアの微笑みは、ニールス達にもきちんと届いていた。

(行こうか)


額縁に入れておきたいような優しい懐かしい景色に心やすらぎ、二人はうなずきあってそっと花園を後にし、忙しい世界へと戻った。
とくに挨拶はしなかったが、この花園の主たちが自分達の訪問をわかっていることも、今も常に繋がっていることも、彼らにはわかっていた。


「かあさん、僕たち、そろそろあちらへ出かけます」

その言葉とともに彼らがここを離れて、もうどれほどの時が過ぎたろう。
陽だまりに座ってシエルとサラがじゃれあっているのに目を細めながら、マリアは遠ざかる懐かしい気配を感じていた。

かつて遠い日の花園で、外見年齢にして十代後半くらいの青年が二人、神妙な顔つきでマリアのもと訪れた。
一人は蜂蜜色の金髪、一人は黒髪。

学齢に達した頃、保育園のような花園そのものからは離れたが、ずっと同じ時空で勉強を続けてきた。
それも終わって、彼らはこれから人界への転生に向かう。

魂の生まれる場所から見えた、命の大河。
ほんのりと金砂を帯びた朱鷺色の輝きは、それはそれは美しく儚い命の連なりだ。
花園の時間から見れば一瞬のようなその生には、辛いことも幸せなことも、たくさんに詰まっている。

トールという半身を自らも大河に放っているマリアは、それがどれほど濃くあるかも、どれほどに愛しいものかもよくわかっていた。
そして、二人がそれを承知して出かけるということも。

「そう…。でも忘れないでね、いつでもあなたたちは私にとって大事な宝物なのよ。…いってらっしゃい」

言葉少なにマリアは言い、二人を順番に抱きしめたのだった。

いつかまた、会える。
時の大河の只中で、彼らとはゆきつもどりつ何度も出会い、何度も共に歩むだろうことを、彼女は知っている。

この神殿も今はたくさんの子供たちのいる花園も、やがてその役割を終える。
時間の定かでない花園にあっても、ニールスとオーディンが生まれたのは最初のほうだ。
それからたくさんの時が流れ、ルカ、そしてシエルとサラ。彼らが生まれたのは最後のほうになり、すでに皆卒業はしていたものの、花園の終焉と時期が重なっていた。

終わりそして始まる時に、彼らは何を見て何を祈っただろう。

変わることがないと思っていた世界は変遷し、不動と信じていた大地さえもが揺れる。
子供達にとって安息としあわせの象徴だった花園は閉じられ、巫女達はいなくなり、神殿自体がその役割を変えてゆく。

……それでも。
彼らは飛び込んでゆく。新しい世界へ。
時がめぐり世界がどれほど姿を変えても、人の心はしなやかに生き続ける。
宝物のような記憶を胸に抱いて、新しいさまざまな宝石をその上にまた溜めてゆく。

どんなに多くのものを喪い、どんなに打ちひしがれて泥に這いつくばっても、瞑目し、信じ、祈り……やがて彼らは立ち上がる。
失ったときこそ互いに手を伸ばしあい取りあって、何度でも、何度でも。

その輝きこそが、すべての魂の持つ奇跡。

マリアは、人の姿でもそうでなくても、すべての魂が勇者であると思っていた。
世界という広大な海に生まれることを望み、ちいさな飛沫となって飛び込んでゆく。
彼ら一人一人は小さいが、その想いが集まって雫になり、せせらぎになり、大河になり、やがて世界そのものを創りだしてゆく。

どんなに小さくても、彼らの祈りが世界を創るのだ。

(彼らにたくさんの幸せがあるように……)

マリアもまた祈っている。昔も、そして今も、祈りの言葉は変わらない。

幸せであるように。
彼らが、皆が、幸せであるように……。



シエルはわくわくした気持ちで、あたらしい服に袖を通した。
白いチュニック風になっていて、腰の部分を紐で縛るつくりになっている。簡素なものだが、これは彼が「はじめて冒険に出るときの勇者みたいな服」が欲しいとマリアにねだって作ってもらったものだった。

それならはじまりの勇者の服ねと笑った彼女は、注文通りのチュニックの胸元に、金糸で小さな刺繍を入れた。

「願いが叶うように、祝福のおまじないよ」

照れた顔のシエルに微笑む。甘えることを知って安心した幼子たちは花園で少しずつ年齢を行き来し始め、今のシエルは七、八歳の子供に見えた。
冒険や木剣遊びなど、ちょっと背伸びしたいときは子供の姿、ルシフェルやマリアに甘えたいときは幼子の姿。そのとき現したい気持ちにより素直になれる姿をとって、彼らはのびのびと過ごしてゆく。

ほんの少し成長したシエルは、ルカと木剣ごっこをしたり樹の上に秘密基地を作ったりしはじめた。
しかし段々、年齢がさらに少年期と行き来するようになってくると、木の剣では物足りなくなってきた。
どうすればいいかとしばらく考えた末、意を決した顔でルシフェルの前にゆく。

「父さま、僕、木剣じゃなくて父さまのような剣が欲しい!」
「ほう? ……そうか」

ルシフェルは慈愛に満ちた眼差しで目の前の少年を見やった。まっすぐに夢を追う、きらめく茶色の瞳。
闇色の天使は微笑み、背に手を伸ばすと長大な剣を取り出した。
ちょっと大きすぎるとさすがに尻込みするシエルの前で、その剣はみるみる小さくなってゆく。
ちょうどいいサイズになったところで、ルシフェルはそれを少年に渡した。

「成長したら、剣もお前に合わせて大きくなるだろう」
「ありがとうございます!」

立派な剣にシエルの顔が上気する。

剣はそもそも、何かを護り同時に誰かを傷つけるための道具だ。
その鋭い刃の上に、自分の命も相手の命も、等分に乗せていることを知らなければ使うことはできない。
勇者は倒した相手の命を引き受ける覚悟がなければならない。

けれど、過去生の彼がそうして夢を追い続け、大切な人を護り続けてきたことをルシフェルは知っている。

時に痛みを引き受け、時に鎖を断ち切り、時に土を掘り木の枝を切る道具として。
花園から旅立った勇者たちは、綺麗事では済まない世界をそうして生き抜いてきた。

剣を抱えて走ってゆく細い後姿を見やるルシフェルの瞳に、遠い戦いの影がよぎる。
誰かを護り、誰かを喪って。
血まみれの掌に慟哭し、もう戻れないのだと何度も涙していた愛しい子供達。

それでも立ち上がり、歩いてゆく彼らのなんと愛おしく頼もしいことだろう。
勇者たちが何を背負おうとも、それは立派な勲章だ。花園は彼らの前に閉ざされることはない。

(幸せで、あるように……)

それがどんな経験であろうとも。
彼らにたくさんの祝福があるようにと、ルシフェルは祈った。


















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祈りが、とどきますように。



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最終更新日  2011年03月29日 14時59分13秒
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