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サイド自由欄

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トールも製作に関わったオラクルカードです♪
2011年04月05日
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王蛇。蛇を喰う蛇。

グラディウスが暗殺部から転籍して七年ほど経った頃。
新しいチームに配属され、戦略執務室の扉を開けた彼の前に現れたのは、琥珀の髪に黄緑の瞳をした若い司令官だった。

年の頃はおそらく彼よりも少し上の二十代前半、デスクの向こうに座っているから背丈はわからないが、肩幅から見て体格は長身の彼とほぼ似たようなものだろうか。制帽の下から覗く整った顔立ちに抑制のきいた眼差し、そして王蛇の二つ名は、切れ者であることをうかがわせる。

(? ……こいつ、どこかで…)

記憶の片隅に何かがひっかかった気がして、グラディウスは無言のままかすかに目をすがめた。
ほどなく、もう五、六年も前、狭い路地で襲われていた彼を成り行きで助けたことを思い出す。

あのときの男か。

事件というにはここでは日常的すぎるリンチがあった時、自分はまだ少年と言ってもいい年齢だった。暗殺部から転籍してすぐ、背ばかり伸びて華奢だった身体に筋肉がつき始めた頃だ。


「……私の顔に何かついているか?」
「いや」

短く銀髪の男は答えた。
司令官殿は何も覚えていないようだ。彼が通りかかった頃には意識もほとんどないような状態だったのだから、当然といえば当然といえる。
しかしそれは、グラディウスの抱える疑問に答えが出ないことも意味していた。

あのとき。

助けた後のグラディウスを見て、彼は微笑んだのだ。
薄れる意識の中で何を見たのか、柔らかく、懐かしげに。

生後数日でこの施設に捨てられ、<毛布を巻いた母ザル>に育てられたグラディウスは、自分に向けられる本当の微笑など見たことがない。
上流階級専門の暗殺者だった時代に、幾度か社交界とやらにも出席させられたが、そこにある微笑みはすべて打算と計算の産物だった。

あれは何だったのか。


今でも時折かすかに思う疑問であったが、本人の記憶に残っていないのではどうしようもない。
グラディウスは思考を切り上げることにした。

「作戦の概要を説明する」

飴色のデスクの上に、デュークはばさりと資料を置いた。
司令官になって三年。指揮下に貰う人間のことは、候補のうちに同伴者の再現記憶も含めて解析するので、グラディウスに対しても初対面という印象はすでにない。


しかし既知といって変わるものもここにはない。淡々と話を進めることにする。

思えばこの銀髪の男は、施設選り抜きの五名から十名のリストの中に、常に名前が入っていた。
しかしもっと入れ替わりの激しい人気者がいたから、最初特別に印象深かったわけではない。

強いということは、人というよりも兵器であるということ。

段々に壊れて「人」としては扱いにくくなる。ゆえに、生還してもハイリスクな作戦に投入され続け、司令官側から見れば最大限使い倒して捨てるだけの存在になってゆくのだった。

リスクの高い作戦に惜しみなく投入できる駒があるのはありがたいことだから、人気者は司令官にもてる。だからデュークの元まで回ってきたことはなかった。

そしてリストから消えれば、拮抗していた者がそこに入る。残っていても戦闘員に何ら得があるわけでもない、単なる選別側の都合。
書類の上で名前が回転して流れてゆく、それだけのことだった。

しかし二年目の頃、ふと目にしたリストに変わらぬ名が載っていることに気づいた。

(こいつまだリストに残っているな。グラディウス? ふぅん…、戦績の割に扱いにくいとあるな。へぇ…)

それが記憶にある第一印象と言えば言えるかもしれない。

扱いやすいというのは、組ませやすい人材のことだ。人付き合いの良し悪しではなく、ペアとして動くときの相方の型が普遍的であること。

グラディウスの場合、今まで特に動けなかった相手はおらず戦績も良いのだが、彼の戦闘能力から予測される結果まで結びついていない。
こうした結果から、その時々のペア相手とは彼の方が意識して合わせているのだろうと思われた。

戦歴はかなり長いが、リストに載り続けているということはまだ「使える」ことを示している。
命令を消化し、相当の高率で遂行し、帰還する能力を備え続けている。

(つまり、よく斬れる剣をまだ誰も使いこなせていない、ということか……。
stand-alone、単独であたらせたほうが余すところ無く能力を発揮しそうだな)

デュークはそう感じ、自分のチームに引き取ったときから誰かと組ませることは除外していた。
彼は作戦の概要を説明すると、チームの損失を最小限にするよう命じ、後は勝手に調べろとデスクの資料を指した。

「…必ず帰還せよ」

締めくくりの言葉を発したとき、相手がなんだか変な顔をした気がする。しかし彼のチームに配された戦闘員にはよく目にする表情だったから、デュークはあまり気に留めなかった。

しかしグラディウスはそこで一礼して去るという形式を守らず、まっすぐに新しい司令官を見やった。
紅い瞳が座る相手をじっと見下ろしている。

「それは至上命令か?」

長身から発される、深く静かな声。
他の司令官達はそこで、身命を賭して必ず勝利せよ、と言う。最初から帰って来いと言われたことはない。
ぎりぎりの時には勝利よりも帰還を優先しろということだろうか。

強い視線が直線で交わる。蛍光を帯びた黄緑の瞳が、さらに強くきらめいたように見えた。

「…そうだ。絶対の指令である」

厳かにゆっくりとデュークは答える。

自分は司令だ。
役割を負った以上、果たすべき義務が己にはある。

それを果たす為の道具として戦闘員達を行使している。
道具として行使する以上、彼らの持つ能力はどんなものなのか、どう使えばいいのかを、最強の状態を把握すべきは使う側の礼儀だと思う。

自分が間違っていなければ、彼らは任務を完遂して帰ってくる。
間違っていても、彼らが帰ってくれば質す猶予を得ることはできる。

だから、帰還せよ。
これも絶対の指令だ。

ほんの少しだけ先の戦闘員達の明日さえ、自分に掴めなくなる日は来る。必ず。
今出来る限り大きく掴む為に、デュークは全力で手を伸ばさずにはいられなかった。

言葉に濾されぬ彼の想いは、その黄緑の光に滲んでいる。
受け止める紅い瞳が、ほんのかすかに和らいだように見えたのは気のせいだろうか。

「…承知した。その命令を遂行する」

グラディウスは踵を返した。
そしてその約束どおり、耐用限界で廃棄処分に回されるまでの十年間、彼はどんな戦場からも必ず帰還を果たしたのだった。


戦場の誰もが生き残るための判断をする。しかし全員が戻れるわけではない。

「生還できたなら、帰った奴だけで十分」

デュークは言う。その状況を分析し作戦の穴が何だったか、判断し抽出するのが己の役割だと。
しかしその瞳は言葉を裏切り、頬を流れ落ちる透明な何かであふれている。

帰った奴だけで十分。

戦闘員の誰も、<泣き虫>のその言葉を信じはしなかった。
だからこそ誰もが彼の元に帰ろうとした。

そしてその行為はまた、「複数の他人の記憶をトレースし抽出し分析する」という過酷な業務によって戦闘員並みに寿命の短い司令官達の中で、デュークの発狂を抑え続けていた。

彼らがいるから。
帰ってくるのならば、その前に自分が狂ってしまうわけにはいかないのだから。

帰還の至上命令。
戦場から必ず戻ってくる命。

そのやりとりは、戦闘員達の明日もデュークの明日も、いつも同時に引き寄せていた。




















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【銀の月のものがたり】 道案内

【外伝 目次】


グラディウスの時代の物語です。
便宜上彼の名前をタイトルに混ぜてたんですが、ずいぶん増えてきましたので
いいかげん当時のチーム名【THE SIX ISLES】をつけることにしました。
重要な登場人物は彼だけじゃないですしねw


物語の更新、こんな話ですし、ちょっと悩んでいたのですけれど。
宮城は石巻で被災したマイミクさんから、娯楽がない! 読みたい! と強いご要望をいただきましたので
少しずつアップしていこうかなと思います。

ほんのわずかな時間であっても、息抜きに他の世界を楽しんでいただけたら幸いです♪


今日の夕方から、実家泊まりでお墓参りに行くことになりまして、帰宅は木曜になります。
金曜は入学式でこれまたバタバタしますので、メール等のお返事は週末か週明けになってしまうかと思いますが
どうぞお許しくださいませ m(_ _)m



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最終更新日  2011年04月05日 14時54分59秒
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